情報誘導手術・精密誘導治療システムの開発

 先端工学外科分野(Faculty of Advanced Techno-Surgery、通称FATS)は、2001年4月の大学院医学研究科先端生命医科学系専攻の開設とともに、髙倉公明教授、伊関洋教授によって創設された研究組織です。現在、村垣善浩教授、正宗賢教授を中心として、研究室メンバーは、医療従事者(医師、薬剤師等)や工学者(ロボット工学、情報工学)で医工融合をはかり、社会人大学院生を交えて産官学連携を実行しています。術中MRIを中心とするインテリジェント手術室をはじめ、スマート治療室、そしてリアルタイムナビゲーションシステムや手術ロボットの研究開発により、未来予測のできる情報誘導手術と精密誘導治療の実現を目指しています。

新規治療技術によるインテリジェント手術室

 浸潤性の悪性神経膠腫をターゲットとし、患者の生存率とQOLを向上させるための新規治療システムの開発を行っています。腫瘍の位置情報を特定する術中MRIやナビゲーションシステム、神経モニタリングシステムを臨床開発しました。2000例を超える臨床応用を行い、特にGrade IIの悪性脳腫瘍において術後5年生存率を93%(当院実績)にまで飛躍的に向上させました。これらの技術を始め、手術に必要な情報を高品位に可視化する術者の「新しい目」を提供する技術開発を行い、安全で精度の高い情報誘導手術を実現するシステムの研究を行っています。また、この術中MRI誘導下脳腫瘍外科システム「インテリジェント手術室」をベースとした「インテリジェント動物手術室」を新たに設置し、臨床・研究双方からの革新的医療システム開発を進めています。本研究開発は、(株)日立製作所、(旧)東芝メディカルシステムズ(株)、日本光電工業(株)との共同研究で実現しました。

スマート手術室(SCOT®:Smart Cyber Operating Theater)

 治療室における多くの危機がほとんどスタンドアロンとして機能しており、機器間のデータ連携はほとんどないのが現状です。その問題を解決するため「スマート治療室」プロジェクトがAMED事業として2014年に始まり、医療機器を接続する共通インタフェースOPeLiNK®が開発されました。2019年2月に東京女子医科大学第1病棟に設置されたのがフラッグシップ版の「Hyper SCOT」で、ロボティック手術台やAIとの連携も目指した世界でも最新の治療室です。各医療機器・設備からの情報をOPeLiNK®で集約、見える化し、執刀医の意思決定を支援します。2019年に第1回日本オープンイノベーション対象厚生労働大臣賞を受賞しました。今後は蓄積された臨床情報を高確率に利用する「AI Surgery」の現実を目指します。本研究開発は信州大学、広島大学、(株)デンソー、ミズホ(株)、日本光電工業(株)、パイオニア(株)、キヤノンメディカルシステムズ(株)、(株)日立製作所、東北大学、エア・ウォーター(株)、(株)セントラルユニ、鳥取大学、SOLIZE(株)他との共同研究で実施しました。

手術戦略デスクによる手術支援

 これからの外科治療は、手術過程を術前・術中・術後まで管理し、患者を含めた病態をイベントレコーダ・イベントシュミレータで管理する、一貫したシステム治療に移行していくと考えます。これは、手術過程の解析による手術の標準化であり、高品質の利用を保証するリスクアセスメント・マネージメントシステムの構築です。すなわち手術戦略システムの管理下で、術前・術中の情報収集システムの技術開発と「新しい頭脳」として現場のスタッフの戦略的作業支援を行う「手術戦略デスク」の研究開発を行っています。

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