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がんの薬物療法、なぜ「腫瘍内科」の受診が必要なのでしょうか?
がんの治療といえば、「手術」や「放射線治療」を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、近年では抗がん剤治療であるがん薬物療法の進歩が目覚ましく、多くのがん治療で欠かせないものとなっています。
その「がん薬物療法」を専門的に担当する診療科が、「腫瘍内科(しゅようないか)」です。
腫瘍内科とは?
腫瘍内科は、がんに対する薬物療法を専門に行う診療科です。使用する薬は抗がん剤だけでなく、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、ホルモン療法など多岐にわたります。腫瘍内科医は、どの薬を、どのタイミングで、どのように組み合わせて使うかを科学的根拠にもとづいて判断し、患者さん一人ひとりに合った治療を提案します。
なぜ腫瘍内科を受診する必要があるの?
がんの薬物療法は、がんの種類や進行度、遺伝子変異の有無、患者さんの体調や希望などを総合的に判断して、最適な治療を選択する必要があります。また、副作用への対応も重要です。
腫瘍内科を受診することで、
- 最新の治療(治験や新薬)へのアクセス
- 副作用を軽減しながら治療を続ける工夫
- 生活の質(QOL)を重視した治療の選択 など、よりきめ細やかなサポートを受けることができます。
腫瘍内科医による薬物療法の有効性を示す研究成果
腫瘍内科医の専門性を示す研究として、がん患者を対象とした研究があります。この研究では、外科医が処方した薬物療法と腫瘍内科医が処方した化学療法の治療成績を比較しました。その結果、腫瘍内科医が行うことが、治療の一貫性や副作用の管理において優れており、患者の予後にも良い影響を与える可能性が示唆されました。
このような研究成果は、腫瘍内科医が専門的な知識と経験を活かして、患者一人ひとりに最適な薬物療法を提供していることを示しています。
チームで支えるがん治療
腫瘍内科は、外科、放射線科、病理診断科、看護師、薬剤師、栄養士、緩和ケアチームなどと連携し、多職種チームでがん治療にあたるのも特徴です。特に、手術や放射線だけでは治療が完結しないケースや、再発・転移したがんに対しては、薬物療法の果たす役割が非常に大きくなります。
最後に
がんと診断されたとき、「薬物療法は自分には関係ない」「副作用がつらそう」と感じる方もいるかもしれません。しかし、今の薬物療法は日進月歩で進化しており、がんと共に生きる選択肢として、希望をもたらす治療になっています。
がんの薬物療法について、少しでも不安や疑問があれば、ぜひ東京女子医科大学病院の腫瘍内科にご相談ください。
引用文献
- Silber JH, Rosenbaum PR, Polsky D, et al. Does Ovarian Cancer Treatment and Survival Differ by the Specialty Providing Chemotherapy? Journal of Clinical Oncology. 2007;25(10):1169-1175. doi:10.1200/JCO.2006.08.2933ASC Publications
- Lin Y, Lin Y, Lin C, et al. Differences in the outcomes of adjuvant chemotherapy for colon cancer prescribed by physicians in different disciplines: a population-based study in Taiwan. BMC Cancer. 2018;18:114. doi:10.1186/s12885-018-4050-3