医療関係者の皆さまへ

緩和ケア医になるには

将来、緩和ケア医になりたい人へ、当科での研修を中心に道筋を示してみたいと思います。

緩和ケア医の働く場所

まずは、将来自分がどこでどのように緩和ケア医として活躍しているのか、どのような仕事をしたいのか想像してみてください。緩和ケア医が活躍している場所として、大学病院、総合病院・一般病院、ホスピス/緩和ケア病棟、在宅医療などが挙げられます。それぞれの場所でそれぞれの疾患・症例の特徴や緩和ケア医の役割がありますが、活動の場所を知り目標地点をしっかりと定めて、そこまでに必要な研修をより早い段階で受けられるようにプランを立てていきましょう。まだ「緩和ケアをやりたい」までの漠然としたイメージしかない先生、いつでも当科へご相談ください。キャリアプランについて、いつでも話し合い、相談にのります。

緩和医療専門医までの道筋

より専門性の高い緩和医療、緩和ケアについて勉強をしていく中で、一つの目標となるのが日本緩和医療学会で規定されている「緩和医療専門医」の取得です。 2021年5月現在、まだ新専門医制度のサブスペシャリティ領域の専門医には入っていませんが、以前緩和医療学会の中枢の先生にお聞きした際には、近い将来認定されるよう進めている、とのことでした。※2022年6月30日の日付で日本緩和医療学会学会より専門医制度改定についてのお知らせが出ています。専門医制度改定について
今後も変更があるかもしれませんので学会ホームページをご確認ください。

専門医を取得するまでの当科での研修例について記載してみます。

医師国家試験合格後、初期研修医として働き始めます。各研修施設でいろいろな研修制度が作られており、さまざまな診療科を経験して医師の基本を学びます。緩和ケアを目指す先生は、可能な限り多くの診療科を回って広く実地医療を経験して欲しいです。可能であれば、緩和ケア科や緩和ケアチームの診療に少しでも触れる機会があるとより良いですね。

後期研修医となって、新専門医制度の基本領域の専門医の取得を目指します。緩和ケア医を目指す先生へのお勧めはやはり総合内科や総合診療科で、緩和ケアに必要な疾患の知識や治療方法、検査など基本を幅広く学べるのではないかと思います。緩和ケア医はすべてのがん患者に対応しますので、できれば臓器別でない診療科に所属することがお勧めですが、患者数の多い消化器系、呼吸器系の診療科が次のお勧めになるかと思います。
また、外科専門医を入口として研修することもお勧めの一つとなります。外科ならではの技術の応用は緩和ケアでも大きな武器になるものと思われますし、多くのがん患者さんが何らかの外科治療を受けていることが多いので、手術のイメージが出来ていること、臓器や腫瘍に直接触れる経験は緩和ケア医としても大きなアドバンテージとなります。ただし、日本外科学会で規定されている外科専門医は一定の手術件数が更新の条件となっているので、緩和ケア医になって手術数が確保できない場合は、日本外科学会の認定登録医となります。もちろんこれを持っていればサブスペシャリティの専門医受験資格を得ることができますので緩和ケア医になるためには十分です。

当科における研修

当科には後期研修医になったところで入局が可能です。
基本領域の専門医を取得するまでは、入局後も当院他科へのローテーションなどが必要となることもありますが、より早く専門性の高い研修が始められるよう、本人と研修方法・時期についてよーく相談の上で決めています。基本領域専門医を取得後、5年間で多くの緩和ケア症例を経験してもらい、専門医取得のお手伝いをしています。

当科の緩和ケア研修の特徴を以下に列挙してみます。

  • 当科で担当するほぼすべての患者さんががん患者であり症例が豊富です。
  • 専門医受験に必要なすべての症例を経験できます。
  • 臓器別でないため、特定の臓器のがんだけでなく様々ながん種を経験できます。それぞれの疾患の違い、特性を経験できます。
  • 放射線腫瘍科との連携による緩和照射、ペインクリニックとの連携による神経ブロック症例の経験、知識が得られます。
  • 心疾患、透析患者など、各種合併症を有するやや難しい症例への対応もしています。各科との連携を密にとって対応しています。
  • 緩和ケア専門医受験には教育経験が必要です。当科は大学で緩和ケアの講義を担当していますので資格取得条件を得られます。
  • 専門医受験に必要な学会発表や論文作成について一からお手伝いします。
  • 日本スピリチュアルケア学会認定の臨床スピリチュアルケア師が在籍しています。

まだ化学療法を受けている患者さんから関わります。

  • 治療中の患者さんへ、より早期からの緩和ケアを実施していきます。治療を受けている頃から関わっている患者さんの病状や症状が進行した際に、緩和ケア医の本領発揮の場となります。治療開始から最期の場面まで寄り添うケアを目指しています。
  • 緩和ケアで扱う患者さんの多くは化学療法での治療を経験しています。化学療法をはじめとしたがん治療の経験、副作用対策や支持療法の治療法を経験することで、終末期の患者さんへの症状対応の幅が広がります。また、患者さんの経験されてきた治療の苦労、経験について共有、共感できるようになります。積極的治療を諦められない患者さんへの緩和ケア医としての治療説明に厚みや信頼をもたらします。
  • 緩和ケア医が知っておくべき化学療法の有害事象について学ぶことができます。
  • 化学療法による治療で腫瘍縮小させて症状緩和をさせるスキル、その適応の可否の判断が出来るようになります。

一緒に研鑽を積みましょう

緩和ケア医として、大学病院、総合病院・一般病院、ホスピス/緩和ケア病棟、在宅医療、将来どこの場所で緩和ケアを行うにしても、当科での経験が若い先生たちの力になることを願っていますし、成長への最大限のお手伝いができればと思っています。

当科への入局希望の方、まずは話を聞いてみたいという方、いつでもお気軽に相談にいらしてください。