活動報告

マンスリーセミナー

マンスリーセミナーVol.10 イベントレポート

「医療におけるAI技術の活用事例」

【開催報告】 未来医学研究会 幹事 関谷佐智子

2020年10月22日、昨年は「即位礼正殿の儀」で休日だったが、今年は平日、もう10回目を迎えるマンスリーセミナーはBMCの先輩が行う「第9回おしえてセンパイ」シリーズでもあり、参加人数が過去最高となった。TWInsイノベーション会議室なら3密になりそうな危険な人数である。今回はオンライン開催なので特に気にもしてなかったが、実際対面セミナーだと会場が大変だった。このコロナ禍での唯一良かった点は、オンライン環境が普及したことだなとつくづく思う。そして、今回のセミナーの事前参加登録された方々の内訳はBMC2,10,18,21,25,26,28,29,30,32,33,36,37,38,41,43,45,46,48,49,50,51期と現役BMC受講生の参加および賛助会員の皆様であった。

今回の講師となった黎(り)先生はBMC48期の修了生でもあり、その当時に実習等でお会いしてとても熱心だったと印象に残っている。今回は講師として“Inspired next, HITACHI”の背景を背負っての講演、未来からの伝道師のようで異次元的な、未来医学にふさわしい雰囲気だった。実際には「医療におけるAI技術の活用」ということで多くの事例をご紹介頂き、AIが主に活用されるのは画像診断、治療において効率化や支援を行っていることを教えて頂いた。医師の負担軽減や病気の早期発見・効率的治療を目的として、deep learningにて劣化MRI画像を高画質化したり、心エコーにおいては3次元化エコー画像から断面抽出を自動で行い、技師などの人的バイアスを低減するなど診断画像の質の向上に活用されているらしい。また肺がん診断において、医師が2人で大量の画像をもって診断する負担を減らすため、computer aided diagnosis(CADe)を利用した診断に対し、予め機械学習により結節や血管構造を学習させ、血管を結節と間違えて誤診しない診断支援にも応用可能であるという。さらには肝がんの経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)のエコーナビゲーションをCTによる信頼度の高い位置情報を機械学習で照合し、誤差5mm以下、10秒以内のアプローチを可能とする治療支援技術など、そんなところでもAIが!と大変興味深かった。「異種特徴量変換学習技術」というなんだか凄そうなネーミングの技術は、病変かと疑わしいCT画像結果と病理画像との特徴を学ばせて関連付けることでBiopsyまで進まなくても診断の確定ができる、患者負担を軽減にも役立てるという。AIは人では難しい、多くの引き出しからの情報のラインナップが瞬時にできる優秀なコンシェルジュというところだろうか。最後に生体センシングとAIの話ではウェアラブルデバイスと併用したサンプリングでスポーツでの怪我の頻度の推定などに用いる研究が紹介されていた。歩き方や座り方で腰痛や膝関節の障害が将来起こりやすいなど自動診断してもらえると嬉しい。

 

質疑応答の際には、特許化や事業化、薬事承認など実用化とのハードルも多いことが議論されていた。しかし、今苦労していることが一つでも減れば、もっと高度なことに打ち込める”ヒト”の時間が増えて、AIはやはりSDGsに必要な技術ではないかと感じた。これまでの10回のマンスリーセミナーを眺めると、個人情報、医療データの取扱、また医療機器開発の課題など議論され、ぼんやりとではあるが、現在の課題は、技術や知識ではなく、”制度“や”考え方“なのではなかろうかという節が感じられた。今後は未来医学研究会理事の先生方が未来を語る回も予定され(https://www.twmu.ac.jp/ABMES/SFM/report/20201106-2/)、ご出席された皆様、まだ出席されてない皆様も奮っての参加、今後共よろしくお願い致します。

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