ブックタイトルSincere No.11 2019.1

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概要

Sincere No.11 2019.1

Sincere|No.11-2019 07れば、ずば抜けたスピードと精度だといえよう。新川・山岸両氏の腕の確かさと繊細な技は、もはや芸術的といっても過言ではない。◆アメリカで10年以上手術の腕を磨く2018年4月に女子医大心臓血管外科の准教授に就任した新川氏は、アメリカで10年以上にわたって小児心臓血管外科医として腕を磨いてきた人物である。1996年に京都府立医科大学を卒業した彼は、「いろいろな種類の手術ができる」との理由から、同大学の小児心臓血管外科でトレーニングを積んだ。このときの指導者が山岸氏である。アメリカへ渡ったのは2006年。ミシガン大学小児心臓血管外科が最初だった。その後、2008年にフィラデルフィアこども病院胸部外科、2009年にカリフォルニア大学サンフランシスコ校小児心臓血管外科を経て、2011年から7年間、アーカンソーこども病院小児/先天性心臓血管外科に勤務した。この間、約3,000例におよぶ手術を経験。このうち執刀数は優に1,000例を超え、心臓移植の執刀も42例の実績を残している。一方、山岸氏は小児心臓血管外科医として内外に知られる名医である。1983年に京都府立医科大学を卒業後、心臓外科医をめざして当時世界的な名声を誇っていた女子医大附属日本心臓血圧研究所(心研)に入局。「高度な技術が求められる先天性心疾患手術への興味がわいた」ことから、小児心臓血管外科を専門とする道を歩んだ。心研に約8年間在籍した彼はその後、東京慈恵会医科大学、埼玉県立小児医療センターを経て1997年に母校の京都府立医科大学に転じ、2006年に教授となって現在に至っている。旧知の仲である女子医大心臓血管外科の新浪博士教授(女子医大病院副病院長)とは心研時代に知り合い、「妙にウマが合った」という。当時、女子医大は先天性心疾患治療で圧倒的な実績を誇っていた。その復活を期して新浪教授から小児心臓血管外科のテコ入れを要請された山岸氏は、経験豊富な新川氏に白羽の矢を立て、アメリカから呼び戻したのである。いわば“三顧の礼”をもって女子医大に招いたわけだ。それだけに新浪教授の期待は大きく、新川氏も「アメリカの良さと日本の優れている部分をミックスさせながら、女子医大に新風を吹き込んでいきたい」と抱負を語る。◆成人先天性心疾患治療でもリード新川氏は現在、週2例のペースで先天性心疾患の手術を行っている。年間では約100例となる計算だ。これらの中には、小児期に手術を受けた患者さんが大人になり、再手術を受けるという成人先天性心疾患も含まれている。「小さい頃に植え込んだ弁が損傷し、修復せざるをえないといったケースがけっこうあります。そうした成人先天性心疾患の手術の割合が約4割を占めています」とのことだ。小児心臓血管外科医が成人先天性心疾患まで診るという発想はもともとなかったという。しかし今日では、「先天性心疾患に精通した医師が、大人を対象とした病院で手術を行うべきというのが定説となっています。これに該当するのが大学病院であり、女子医大では僕が成人先天性心疾患の手術も担当しています。他の施設で手術を受けた人が、そこでは再手術に対応できないため女子医大に来られるという場合も少なくありません」と新川氏はいう。このように、成小児心臓血管外科を専門とする山岸正明客員教授(左)と新川武史准教授。