ブックタイトルSincere No.11 2019.1

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概要

Sincere No.11 2019.1

Sincere|No.11-2019 051974年3月東京女子医科大学卒業。同年4月東京医科歯科大学医学部眼科学教室に入局。81年4月同大学医学部講師、82年7月同大学医学博士。83年1月茨城県厚生連取手協同病院(現・JAとりで総合医療センター)眼科医長に就任。84年4月烏山眼科医院を開業し院長に就任。日本女医会理事、日本眼科医会副会長、東京都眼科医会副会長を歴任。2018年6月から東京都眼科医会会長。現在、日本失明予防協会評議員、東京女子医科大学評議員、至誠会理事を務める。福下 公子(ふくした きみこ)■ 外科にこだわって眼科医をめざすもともと内科医になるつもりでしたが、大学で学ぶうちに外科にも興味がわいてきました。でも、外科は女性をすんなり受け入れてくれる時代ではありませんでした。そこで注目したのが、内科的・外科的の両面からアプローチできる眼科です。眼科の手術といえばそれまで肉眼的手術でしたが、顕微鏡手術が世界的に広まりつつある時代で、「それを担うのが自分の使命なのではないか」と思うようになりました。5学年のときです。とはいえ、その頃の女子医大の眼科はまだ内科的で、自分の思っているイメージではありませんでした。そこで卒業後、父のアドバイスもあって東京医科歯科大学(以下、医科歯科大)の眼科学教室に入局することにしました。医科歯科大は国立で、皆が切磋琢磨していましたので、女性だけの居心地の良い環境で学んできた私は、ついていくのが大変でした。のんびりした性格の私が、医師として務まるようになっていったのは、医科歯科大で揉まれたからだと思っています。約9年間、医科歯科大で過ごしたあと、1983年に取手協同病院(現・JAとりで総合医療センター)から「総合病院にふさわしい基礎づくりをしてほしい」との要請を受け、同病院の眼科医長に就任しました。その頃、私は小田急線祖師ヶ谷大蔵駅近くに住んでいて、2歳になる子どもがいました。朝6時に家を出て、仕事から離れていた母親に子どもを預け、8時過ぎに取手の病院に着いて手術などの診療をこなし、夜8時頃帰途につくという毎日。正直、きつかったですね。■ 勤務医から開業医に転じ地域に貢献そういう生活を1年3か月続けて取手協同病院を辞し、1984年4月、京王線千歳烏山駅近くに烏山眼科医院を開業しました。両親がほど近い調布に住んでいたため子どもを預けるのに便利だったことが、この地に開業した理由です。住まいも医院の近くに移転しました。千歳烏山駅は急行の停車駅でもあり、駅前商店街は賑やかで老若男女が行き交い、気軽に挨拶を交わし合う地域性豊かな街です。ここで開業医として再スタートを切ったわけですが、それまで勤務医として手術をたくさんこなしてきただけに、一人ではそれができなくなったことが残念でした。でも、当院での診療をはじめ、校医を務めたり屈折矯正や臨床遺伝専門医としてカウンセリングを行ったりすることを通じて、地域医療に携わっているという意識を強く感じるようになりました。ここ10年ほどは、特にロービジョン(視機能が低下した視覚障がい)患者さんのケアに力を入れています。月1回、ロービジョン患者さんにお集まりいただき、私が医学的な話をしたり、ボランティアが朗読をしたりするなど、情報交換をしながら患者さんをケアするという活動を行っています。この間、患者さんのご家族はケアから解放されることはいうまでもありません。■自立した女性を輩出する女子医大2018年6月、東京都眼科医会会長の大役を仰せつかりました。東京都眼科医会は100年以上前の1912年に設立された長い歴史を有し、私は24代目の会長ということになります。会員は現在2,300人強。このうち開業医が約4割、勤務医が約6割を占めており、両者が手を携えながら都民の目の健康と福祉の向上に努めています。会員の男女比はほぼ半々の構成となっていますが、女性が会長になったのは私が3人目で、現在常任理事を務めている女性は1人だけという状況です。これは、社会活動に積極的ではない女性が多いということの裏返しともいえます。ですから、女性がもっと活動しやすい眼科医会にしていかなければなりません。幸い、女性の私が会長になったことにより、眼科医会だけでなく他の分野からも女性活躍への期待が寄せられていることは心強い限りです。前述したロービジョンの人たちは、いわゆる社会的弱者といえます。恵まれた環境にある人たちは、そうした弱者に手をさしのべて共生社会を形成していくべきではないでしょうか。その一環として、東京都眼科医会ではロービジョン者を支援する「東京都ロービジョンケアネットワーク」を構築し、2018年から運用を開始しています。この取り組みをもっと浸透させて地域に広めていきたいと考えています。私が社会的にも経済的にも自立していられるのは、医師になったからだと思います。その原点は女子医大にほかなりません。自立した女性を育成するために、女子医大の果たす役割はこれからも大きいといえるでしょう。烏山眼科医院での診察風景。