ブックタイトルSincere No.11 2019.1

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概要

Sincere No.11 2019.1

22 Sincere|No.11-2019応しなければなりません。それが難しくて、コミュニケーション能力の低さをつくづく感じました」と反省する。■母性看護の守備範囲の広さを理解病院での7日間の実習を終えた学生たちは、その翌日、学内で「女性のライフステージを通した健康支援における母性看護の役割」をテーマにカンファレンスを行った。活発な意見が交わされたが、その中のいくつかを紹介しよう。「望まない妊娠を避けるための情報提供や、不妊治療を受けている人への精神的なサポートも母性看護の役割」、「家族の支援がなければ安定した育児環境は保てないと思いますが、私が受け持ったお母さんのダンナさんは仕事で海外へ行ってしまいました。そういうケースでのサポートはどうしたらよいかを考えさせられました」、「子どもを育てるには経済的な負担もかかってきますから、その覚悟と家族計画が大切です」、「外来で付き添った妊婦さんは自営業で、出産したらすぐに社会復帰したいといっていましたが、どんな仕事をしているのか、その内容まで把握するべきでした」さらに、「至誠会第二病院には、退院後も継続して母子を看護する“すくすく外来”というのがあり、母性看護の役割を担っていることを知りました」、「高齢出産のリスクなどを説明するのも看護師の役割ですね」、「子どもの虐待が起きたときの対応やその予防的ケアも母性看護と関わってくると思います」といった意見が聞かれた。学生たちを指導した竹内道子講師は、「実習を通してきちんと計画を立てながらケアしようという態度や責任感が養われるとともに、褥婦さんへの倫理的な配慮や尊厳の意識も培われ、わずか1週間で学生たちはグンと成長しました。また、出産に立ち会った学生から『母親の偉大さと生命の尊さに感動しました』といった言葉も聞かれ、自分の親子関係を振り返るチャンスにもなったようです」と総括してくれた。病院での実習終了後、学内でカンファレンスを行い、活発な意見を交わす。こんなところが女子医大母性看護の現場には、「おめでとう!」と祝福する言葉が飛び交います。それが母性看護学実習の大きな特徴といえます。また、お母さんと赤ちゃんの複数を看護の対象とし、両者の看護計画を立案する必要があるのも母性看護ならではです。さらに、母子の看護だけにとどまらず、女性の生涯を通じた健康支援や家族全体への看護に重点が置かれているのも、母性看護の役割として見逃せない点です。今の学生たちは、生命の誕生や新生児の養育に関わることがほとんどありません。実習前に新生児人形で技術演習を行いますが、ぬくもりや泣き声、動き、匂いなどは分かりません。しかし、実習では個々の新生児の違いも分かるようになり、受け持った赤ちゃんに愛着がわいてきます。そして、お母さんが赤ちゃんとどう関わるのかを目の当たりにします。そうした実習を通して、学生たちは新生児の日々の変化と、母親としての役割を身につけていくお母さんの様子を観察し、母性看護を有意義なものにしていきます。母性看護学実習は、出産数が減少している“少子化時代”だからこそ、学生たちにとっては貴重な経験となり、自分の将来設計を考えるきっかけにもなります。毎年、卒業生の約1割が助産師をめざしますが、それも母性看護学実習がもたらす効果といえるかもしれません。実習効果で助産師をめざす人も少なくありません東京女子医科大学母性看護学教授小川久貴子