ブックタイトルSincere No.11 2019.1

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Sincere No.11 2019.1

10 Sincere|No.11-2019療用手袋で、それを円状にカットして細胞シートに見立てているのである。12時前に澤教授が手術室に入室。いよいよ細胞シートの移植開始である。澤教授と市原医師の共同作業により、1枚ずつ丁寧にシートが貼り付けられていく。5枚目のシートの移植が終わったのは12時25分だった。「細胞シート移植は、重症心不全患者さんに対し心臓移植と補助人工心臓の植込み以外にも治療の選択肢を提供できるという点において、大いに意義があると思います。しかも手術は低侵襲で、患者さん自身の細胞を使いますから拒絶はなく、感染のリスクも低いという大きなメリットがあります。合併症があって心臓移植が難しいという患者さんにも期待していただける治療法ではないでしょうか」と市原医師はアピールする。女子医大病院には近々、「インペラ」という世界最小・最新のハートポンプが導入される予定だ。急性心不全に対し、開胸せず低侵襲で血流補助を迅速に行える装置である。市原医師は、「細胞シート移植を含めた重症心不全治療において、インペラを駆使した治療にも取り組み、さらに救命率や治療成績の向上を図っていきたいですね」と抱負を語ってくれた。◆心臓血管外科治療の最前線を訴求女子医大の心臓血管外科は、2017年7月から新浪教授が率いるようになって以来、徐々に往年の輝きを取り戻しつつある。それを象徴し、学内外に再び“心臓外科のメッカ”という名声を印象づけたのが、2018年9月29日に弥生記念講堂で開催されたシンポジウムだ。テーマは「ここまで来た!心臓血管外科治療の最前線」。新浪教授が座長を務め、5人の演者がそれぞれの専門分野における最前線の治療について熱く語った。具体的な演者とタイトルは別表のとおりである。また、2018年10月3日には総合外来センターの5階大会議室で、重症心不全治療をテーマにしたランチョンセミナーが行われ、心臓移植の権威者であるドイツのヤン・グンマー氏と、インペラの第一人者であるアメリカのジョン・コバシガワ氏が講演。50人を超える参加者が熱心に耳を傾けた。弥生記念講堂で開催された心臓血管外科のシンポジウム。医療最前線東南アジアへの医療支援活動を推進僕は毎年、タイやミャンマーを訪れ、人工心肺装置を使わないオフポンプでの冠動脈バイパス術の普及・支援活動を行っています。約8年前、オーストラリアへ留学中に一緒にトレーニングしたタイの女性医師から、「バンコクの病院でオフポンプバイパス術をやってほしい」との要請を受けたのが始まりでした。ミャンマーへは、ヤンゴンに赴任していた証券マンの友人に誘われて2013年に現地を訪れ、そのときにヤンゴン総合病院の心臓外科チームから支援要請されたのがきっかけとなって通うようになりました。以来、毎年5月と11月にミャンマーへ出向き、オフポンプ冠動脈バイパス術の普及に努めています。10回目となった昨年11月も、実質4日半の滞在中に8例の手術を行いました。タイからは留学生も受け入れており、昨年12月には僕が女子医大に来てから3人目となる留学生がトレーニングに励みました。ミャンマーからも留学生を受け入れる予定で、彼らを経済的に支援するための「メディカルニューウェイブ」というファンドも立ち上げています。医療は国の根幹であり、国民の病気はその国の人たちの力によって治すのが基本です。それをバックアップするのが日本の役割だと思います。これからもタイやミャンマーへの医療支援活動を続け、国際交流にも貢献していきたいと思っています。東京女子医科大学心臓血管外科教授(女子医大病院副病院長)新浪博士シンポジウムの講演者とタイトル■ 澤 芳樹(大阪大学大学院心臓血管外科教授)重症心不全のFuturability■ 山崎健二(北海道循環器病院先進医療研究所所長)植込型補助人工心臓治療の最前線■ 布田伸一(東京女子医科大学大学院重症心不全制御学分野教授)心臓移植の贈り物■ 鳥飼 慶(獨協医科大学埼玉医療センター心臓血管外科准教授)低侵襲カテーテル治療の最前線■ 下川智樹(帝京大学医学部心臓血管外科主任教授)ロボット支援心臓手術タイからの留学生を受け入れている新浪博士教授。