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概要

シンシア10号

医療最前線胸部大動脈瘤の破裂を防ぐため血管内に挿入されるステントグラフト(人工血管)。脳につながる血管を塞がないよう、患者さんの血管形状に合わせた3つの穴が開けられている。まで実施件数が月1~2件だったが、「今では月7~8件、年間では100件前後のペースで実施しており、都内の病院でトップクラスに位置する実績を残しつつあります」と、道本医師は胸を張る。TAVIは現在、2種類の弁が保険適用となっているが、2017年3月から3つ目の弁が治験中であり、登録されている18例のうち13例が道本医師の手によるものである。道本医師はまさに、日本におけるTAVIのパイオニア的存在なのである。左心房と左心室の間にある僧帽弁の機能が悪化し、血液が逆流してしまうのが僧帽弁閉鎖不全症である。その治療法として期待されていたマイトラクリップというカテーテル治療が、2018年4月から12施設でスタートした。治験6施設の一つであった女子医大病院も、現在週1件ペースでこの治療を行っている。「マイトラクリップは低侵襲の治療法で、TAVIと同様、患者さんの体のダメージが少ないため、開胸手術が難しかった患者さんへの治療も可能となりました。循環器内科とハートチームを組みながら、患者さんの治療に当たっています」(道本医師)とのことだ。世界最高水準の大動脈瘤治療ステントグラフト内挿術去る5月8日、女子医大病院心臓血管外科の東隆・横井良彦両医師は、八千代医療センターで胸部大動脈瘤の破裂を防ぐためのステントグラフト内挿術という治療に臨んだ。ステントグラフトとは、バネ状の金属を取り付けた人工血管のこと。これをカテーテルで動脈瘤の部分まで挿入し、血管内で広げて動脈瘤の内国産のステントグラフト「ナユタ」の開発を主導した横井良彦医師。約2時間かけて患者さんにぴったりフィットするステントグラフトに仕上げていく。日本におけるステントグラフト内挿術の先駆者である東隆医師。スイス・チューリッヒ医科大学で腕を磨き、年間250件以上の治療を行っている。側に固定させる。これによって瘤に流れる血液を遮断し、破裂を防ぐ。体を大きく切る必要のない低侵襲の治療法である。女子医大病院は、2007年にこのステントグラフト治療の認定施設第1号となった。東医師はその先駆者、横井医師は唯一の国産ステントグラフト「Najuta(ナユタ)」の開発主導者として名を馳せている。そして2人は、女子医大病院だけでなく八千代医療センターや東医療センターをはじめとする多くの関連施設でステントグラフト治療を行い、その普及に努めている。胸部大動脈瘤用のステントグラフトにはいくつか種類があるが、国産の「ナユタ」は患者さんの血管形状や脳につながる3本の血管、瘤の位置などに合わせてきめ細かく調整できるカスタムメイド方式を採用している。このため、患者さん一人ひとりにぴったりフィットするステントグラフトを提供することができる。横井医師は手術当日、約2時間かけてその準備を行う。「それによって患者さんのQOL(生活の質)が向上すると思えば、全然苦になりません」とさらり。職人技ともいえるその高度な技術は、海外から“ジャパニーズ・マジック”と評されているほどだ。ステントグラフトの指導医でもある東医師は、「ナユタによるステントグラフト内挿術は、世界最高水準の治療だと自負しています」と強調。そして、「僕はナユタを含めて年間250件以上のステントグラフト治療を行ってきましたが、今年度は過去最高の300件を突破するかもしれません」と締めくくってくれた。Sincere|No.10-2018 09