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概要

シンシア10号

大動脈弁狭窄症の患者さんに経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)を行う道本智医師。ラリアに留学し、メルボルンのアルフレッド病院とシドニーのロイヤルノースショア病院で臨床経験を積んだ。ロイヤルノースショア病院では、2年間に執刀医として200件あまりの心臓手術を手がけた。その約8割が冠動脈バイパス術だったという。このときの経験が、心臓外科医としての大きな自信につながっていったのはいうまでもない。1998年に帰国して心研に戻った彼は、ほどなく女子医大附属第二病院(現・東医療センター)に転じ、オフポンプでの冠動脈バイパス術に取り組むようになった。そして2004年、大きな転機が訪れる。順天堂大学の天野篤氏(現・順天堂大学医学部心臓血管外科教授、同附属順天堂医院院長)から、「僕の隣の手術室を提供するから一緒にやらないか」と声をかけられたのである。天野氏はのちの2012年2月、今上天皇にオフポンプ冠動脈バイパス術を行い、“天皇陛下の執刀医”として一躍、時の人となったのは周知のとおり。その天野氏のもとで3年間、腕を磨くこととなった。「天野先生は、プラスアルファーの処置にチャレンジすることの大切さを強調されていました。そうしないとトップにはなれないと。いかに患者さんに付加価値をつけてあげられるかを考えながら手術をするようになりました」と、新浪教授は述懐する。その後、彼は2007年に埼玉医科大学国際医療センター・心臓病センター心臓血管外科教授に就任。2010年に心臓移植実施施設としての認可を取得し、2015年度には大学病院トップとなる848件の心臓手術を実施するまでに躍進させた。そして2017年、13年ぶりに古巣の女子医大に舞い戻った。「心臓外科医としての今の自分があるのは、女子医大のおかげです。その恩義に報いるために、ここに戻ってきました。かつて女子医大の心臓外科は“東日本の雄”として輝いていました。その輝きを取り戻すのが僕の使命だと心得ています」“手術は数こそが質”をモットーとする新浪教授は、今でも年間300件もの手術をこなす。彼が率いる心臓血管外科は、再び輝きを放ち始めている。患者さんの負担を軽減する最新の治療法を推進女子医大病院西病棟Bの2階手術室には、手術台とX線血管撮影装置を組み合わせ、人工心肺装置も備えたハイブリッド手術室がある。心臓弁膜症の一つである大動脈弁狭窄症の治療法である経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は、このハイブリッド手術室で行われる。重度の大動脈弁狭窄症の治療は、これまで開胸して一時的に心臓を止め、大動脈弁を人工弁に換えるのが一般的だった。これに対しTAVIは、カテーテルを用いて人工弁を心臓に植え込む新しい治療法である。開胸せず心臓を止めることがないうえ、治療時間も短いため患者さんの負担を大きく軽減できるのが特長だ。TAVIを担当し、その指導医でもある道本智医師は、2017年9月に埼玉医科大学国際医療センターから女子医大病院に赴任してきた。2015年11月からTAVIを開始した女子医大病院は、それ08 Sincere|No.10-2018