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概要

シンシア10号

こんなところが女子医大講義のほかビデオやグループ討論も交えた「チームSTEPPS」の授業。翌年から臨床実習に、看護学部4年生は臨床現場に入るわけですが、ともに医療安全という意識を持って臨まなければなりません。そこで、チームSTEPPSを授業に取り入れることにしました。医学部・看護学部合同の授業としたのは、“チーム医療なくして医療安全なし”との考えを学生たちにも徹底するためです」加藤准教授による授業は、講義のほかビデオやグループ討論などを交えながらテンポよく進む。冒頭の講義では、「医療事故の原因は確認不足や判断ミス、スタッフの連携不足などヒューマンエラーによるものが多い」と指摘、コミュニケー授業には指相撲も取り入れられている。ションやリーダーシップなどノンテクニカルスキルの重要性を訴えた。ユニークだったのは、そのあとに行われた指相撲である。隣り合わせた学生同士が30秒間、指相撲に興じたわけだが、これはメンタルモデルを意識させる狙いがある。メンタルモデルとは、「事実とそれらを取り巻く環境との関連性からつくられる心理的な状況認識」のことで、ほとんどの学生が「指相撲は戦いである」というメンタルモデルから、勝ったり負けたりを繰り返し、勝ち数は4~5回が最も多かった。そうした中、「勝てばよいので協力し合ってやろう」というメンタルモデルを共有し、お互いに何十回も勝ったという学生ペアも見られた。つまり、お互いのメンタルモデルが違うとパフォーマンスもかなり違ってくるということだ。チーム医療では、いかにチーム全員がメンタルモデルを共通化するかが大事だという。チームSTEPPSについての説明のあとは、実際の医療現場におけるスタッフのやり取りを収めた2本のビデオが紹介された。1本は、研修医がドクターに「患者さんが心配です」と訴えたものの、聞く耳を持たなかったためそれ以上いうことができなかったという場面。もう1本は、患者さんの情報をスタッフみんなで共有してドクターに2度確認を促し、「指摘してくれてありがとう」とドクターが笑顔を見せているシーンである。この2本のビデオを見た学生たちが、グループ討論を行ってその結果を発表した。「1本目はドクターが威張っていて研修医が食い下がれなかったが、2本目はみんなで意見をまとめ、説得力を持って2度ドクターに訴えていた」、「1度伝えたことが無視されても、勇気を持ってもう1度伝えることが大切」といった意見が聞かれた。これらの指摘は“2回チャレンジルール”といわれるもので、チームSTEPPSにおいて最も重要なポイントの1つとなっている。加藤准教授は最後に、「患者さんの安全はチーム医療でなければ保たれないという時代に入っています。ここで学んだチームSTEPPSというスキルを、ぜひチーム医療に生かしてほしいと思います」と、学生たちにメッセージを送った。16 Sincere|No.10-2018