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概要

シンシアNo.9

東京女子医科大学医学部の3年生は、毎年12月に学内50超の研究部署に分散し、3週間にわたって研究活動にいそしむ。それが「研究プロジェクト」というカリキュラムである。脳神経外科に配属され、小児もやもや病の手術を見学するMさん。た。が、それだけではなくエピジェネティクス変化もからんでいるということを知り、“目からウロコ”でした」と、エピジェネティクスへの関心が大きく高まったという。Sさんを指導した増井憲太助教は、グリオーマを含むがんのエピジェネティクス変化をメインの研究分野としている。エピジェネティクスのメカニズムに興味を持ち、脳神経への関心も高かったSさんにとって、研究テーマはまさにうってつけだったといえよう。「研究期間中は毎日充実していて、いろいろな発見がありました。実験の組み立て方を学べたのが一番の収穫です」というSさんは、ポスター発表会にも参加して生き生きと質問に答えていた。増井助教は、「Sさんは一つ一つしっかり考えながら前へ進んでいくタイプで、疑問があればすぐに質問してきます。疑問が生まれるということは研究者として大事な資質です。病気のメカニズムを解明することによって、将来的に多くの患者さんを救うという形で医療に貢献する。そういう基礎研究志向の人が少ない中、彼女は貴重な存在ですね」と評した。■小児もやもや病の手術に立ち会う12月12日、「小児もやもや病に対する治療法」を研究テーマに、中央手術室でその手術を見学するMさんの姿があった。手術の助手を務めたのが、Mさんを指導した脳神経外科・小児脳神経外科担当の千葉謙太郎助教である。手術は、その準備も含めて約5時間を要したが、Mさんは最初から最後までずっと立ち会った。もやもや病は、脳内の主幹動脈が閉塞していく一方、血流を維持するために細い血管が増えて煙のようにもやもやした状態になる疾患である。小児では構音障害(正しく発音できない症状)や麻痺、しびれ、頭痛などの症状を伴う。外科的治療法として、頭の外の血管を頭の中につなぐ直接バイパスと、血管を有する組織を頭の中に敷くことによって新生してくる血管が血流を補う間接バイパスがある。女子医大では小児もやもや病に対して両者を併用しているのが特徴である。Mさんが脳神経外科での研究を希望したのは、「授業で学んだばかりなので実際の臨床現場を体験したかったからです。また、小児科にも興味がありますので、小児もやもや病をテーマにできたことは幸運でした」という。そして、「手術室へ入ったのは初めてで、肉眼では見えないような血管を手術する場面に立ち会えたことは貴重な経験となりました」と語る。千葉助教は、「小児もやもや病の症例研究成果を発表するMさんと指導した千葉謙太郎助教。Sincere|No.9-2018 21