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概要

シンシアNo8

■太陽光線の皮膚への到達範囲近赤外線A紫外線(UVA)B紫外線(UVB)表皮真皮皮下組織光老化予防の大切さを訴える川島眞教授。「太陽光線の中の紫外線を長年にわたって無防備に浴びると、皮膚にシミやシワ、タルミなどの美容的な変化が現れ、さらに皮膚がんが生じることもあります。最近は紫外線だけでなく、近赤外線もそうした皮膚障害をもたらす原因となっていることが分かってきました。このように、太陽光線によってもたらされる皮膚の障害を“光老化”と呼んでいます。また、皮膚に限らず目にも影響をおよぼすことが知られるようになってきました。その最たるものが白内障です」。地上に届く太陽光線の紫外線には、A紫外線(UVA)とB紫外線(UVB)があり、A紫外線のほうがB紫外線より波長が長い。紫外線は波長が長いほど皮膚の奥まで到達するという性質を持っており、B紫外線は表皮までしか届かない。B紫外線の影響を大きく受けた表皮では、メラミンという光を遮断する色素が大量につくられ、これがシミの原因となる。一方、A紫外線は表皮の下層の真皮まで入り込む。真皮は、コラーゲンとエラスチンと呼ばれる線維状のタンパク質によって肌に弾力を持たせているが、A紫外線を浴び続けるとコラーゲンとエラスチンが変性してしまい、シワをもたらす。さらに波長が長い近赤外線は、皮膚深部の皮下組織にまで侵入するため、それがタルミの原因の一つではないかと考えられている。□皮膚がんの発生につながるリスク前記したように、太陽光線による皮膚障害は光老化にとどまらず、その延長線上には皮膚がんが存在することを見過ごしてはならない。日本人はもともと、光に対する防御力を備えたメラミン色素の多い肌をしているため、それが乏しい白人に比べて皮膚がんになるケースは比較的少ない。とはいえ、日本でも皮膚がんの患者数は増加傾向にある。その背景について川島教授は、「最近はオゾン層の破壊に伴って紫外線の量が増加しており、北海道でもそうした現象が見られるとのことです。加えて、高齢化社会になるにつれて長期間、紫外線を浴びた人が増えているのも、皮膚がんの増加につながっている要因だといわれています。私も外来で、太陽光線が原因と思われる皮膚がんをよく目にするようになりました」と指摘する。皮膚がんの死亡率は低いとはいえ、命を落とすケースももちろんある。それだけに、光老化予防と対策が重要であることはいうまでもない。□サンスクリーンの適正使用を訴求光老化の最も一般的で合理的な予防法が、十分な紫外線防御効果を持つサンスクリーン製剤の使用である。皮膚の健康研究機構の調査によると、サンスクリーン製剤を「日常的に使用している」人の割合は、男性が3.2%と極めて低いのに対し、女性は24.4%と4人に1人という結果だった。また、「日差しが強いときに使用する」という割合は男性が14.1%、女性が39.1%で、日焼けを嫌う傾向にある女性でも、その対策を講じている人の割合は半分以下というのが実情である。しかも、サンスクリーン製剤が使われていても、それが適正使用ではないケースが多いことも浮き彫りとなっている。「サンスクリーン製剤には紫外線を防ぐ効果を表す数値とその適正な使用方法が示されていますが、実際には適正とされる量の半分くらいしか塗られていません。これでは効果が期待できず、たっぷりと塗ることが大切です」と、川島教授は警鐘を鳴らす。さらに、「太陽光線による皮膚障害に対して、日本人は警戒心が乏しいといわざるをえません。“シミぐらい問題ないだろう”と。でも、その先には皮膚がんもあるということが、まだあまり知られていません。そういうことを含めて、サンスクリーン製剤の適正使用を訴えています」という。川島教授はこれまで、女子医大で多くの美容皮膚科医を育ててきた。「アメリカでは政治家やエグゼクティブといわれる男性たちも、肌のケアに気を遣っています。日本でも彼女たちの手によって、女性だけでなく男性にも光老化予防を広めていってほしいですね」と締めくくってくれた。Sincere|No.8-2017 19