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概要

シンシア No.7

稲葉貴子(林医院院長・トライアスリート)林医院を続けていく自信を失いかけていました。が、心も体もなんとかしなければと一念発起し、ジョギングを始めることにしました。犬の散歩がなくなった分、走ってみようと思ったのです。そうしたら製薬会社の女性MRさんから「マラソンに出てみませんか」と声をかけられ、その人と一緒に米軍横田基地内を走る「フロストバイトロードレース」のハーフマラソンに出場しました。走り始めて半年後でしたが、2時間を切るタイムで走り切ることができました。45 kmを12時間以内で走る北丹沢山岳耐久レースでは8時間半くらいで完走。走っているときは無心になれ、自分を悩みから解放してくれることを実感し、立ち直ることができました。そして2008年の佐渡国際トライアスロン大会に参加し、トライアスリートデビューも果たしました。■アイアンマンレースで自信がつくこれまでフルマラソンに2 0回近く、トライアスロンには20回以上出場。このうち、“アイアンマン”と呼ばれる距離の長いレースへの出場は11回を数えます。初めてのアイアンマンレースは、米ユタ州のセントジョージ大会でした。水泳は水温16℃の湖、バイク(自転車)とラン(長距離走)は34℃にものぼる砂漠のコースをひた走る苛酷なものでしたが、完走できて大きな自信につながりました。走ることを通して、体を動かすことの大切さがより理解できるようになりました。胸が痛いという患者さんが、検査をしても何も異常が見つからないような場合、姿勢の悪さや体の硬さが原因だったりするケースが少なくありません。特に女性の場合、更年期以降の人生が長くなってきていますから、そういう人たちが骨粗しょう症やサルコペニア(筋肉量減少)などで寝たきりにならないよう予防することが大事です。スポーツを通して得た経験を、そうした予防医療に生かしていければと思っています。■大ケガを負ってもなお走り続けたい昨年7月末、オランダで開催されたアイアンマンレースに出場し、バイクで転倒して大ケガをしました。バイクコースはベルギーにもまたがっていて、160km地点に当たる同国市街地の石畳の段差にタイヤを取られて飛ばされ、左腰から石畳に叩きつけられたのです。激痛で立つことができず、救急車で病院へ搬送され、レントゲン検査の結果、骨盤を何か所も骨折し、左肩鎖関節脱臼と肋骨打撲も負っているという重傷でした。それでも同行者たちのサポートにより、予定していた翌日の飛行機でなんとか帰国。それから9月末まで車椅子と松葉杖に頼る“歩行禁止”の生活を余儀なくされました。とはいえ、帰国して3日目から車椅子で外来診察にあたることができました。いつも治療する側にいるわけですが、車椅子の生活を送ったことにより、バリアフリーの大切さなどたくさんの“気づき”がありました。トライアスロンを始めて8年目に、骨盤骨折という大きなケガを負ったわけですが、これでやめるつもりはありません。これからも楽しみながらトライアスロンに挑戦し続けるとともに、マラソンやトレイルランニングの救護活動にも携わっていきたいと思っています。Sincere|No.7-2017 05