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概要

sincere no05

糖尿病センター長(第四代)の内潟安子教授。独立した建物の糖尿病センター。4、5階が病棟となっている。予備軍を含め日本人の6人に1人が該当する国民病厚生労働省の調査によると、「糖尿病の疑いが強い人」は全国で約950万人、「糖尿病の可能性が否定できない予備軍」が1,100万人で、両者を合わせると2,050万人にのぼり、国民の約6人に1人が該当する。糖尿病は高血糖状態が慢性化する病気である。血糖を抑えるホルモン、インスリンが膵臓から分泌されるが、これの不足やインスリン作用(働き)の不足によって発症する。放置すると自覚症状がないまま血管や神経が侵され、網膜症、腎症、神経障害の三大合併症をはじめ、さまざまな合併症を引き起こす。糖尿病は大きく1型と2型に分けられる。膵臓の細胞が破壊されてインスリンが欠乏する1型は、幼児期から思春期に発症することが多い。インスリンの分泌量が減ったり働きが鈍くなって起きる2型は、中年期での発症が多く、糖尿病の90%以上を占める。治療法は1型の場合、生涯にわたりインスリン治療が必要となる。2型は過食や運動不足などによる生活習慣病であり、食事療法、運動療法、内服薬で病状の安定化をめざすが、効果が薄い場合はインスリンの補充が必要となる。いずれにせよ、いかにして血糖値を良好に保つかが糖尿病治療のポイントとなる。女子医大の糖尿病センターは、初代所長の故・平田幸正氏の発想のもと、糖尿病と関連代謝疾患とあらゆる合併症に対応する我が国初の糖尿病専門医療施設として1975年に開設された。平田氏は、「平田病」として世界に知られるインスリン自己免疫症候群を発見し、その治療法を明らかにした糖尿病の権威である。また、糖尿病患者さんの長年の悲願であったインスリン自己注射の保険適用を実現した功労者でもある。医師もメディカルスタッフも幅広い医療の知識を修得現在、第四代センター長を務める内潟安子教授は次のように語る。「ここには糖尿病眼科がありますが、平田先生は同じように糖尿病小児科や糖尿病腎臓科、糖尿病心臓科、糖尿病皮膚科などがあってもいいとお考えでした。糖尿病はそれほど広範な領域を必要とする病気だという意味でしょう。今、糖尿病センターの医師には、先生の予見どおり、内科だけでなく小児科、皮膚科、心療内科、免疫学、生理学、医療統計学などさまざまな分野の知識が求められ、足りない部分はお互いに助け合って私たちは糖尿病に対峙しています。また、看護師や薬剤師、検査技師、管理栄養士などのメディカルスタッフもお互いの知識を修得し合い、糖尿病認定看護師とともに多くの糖尿病療養指導士資格者がいます」。糖尿病センターは内科と眼科から成るが、内科には小児・ヤング、腎症、神経障害、心血管障害、足病変、糖尿病妊娠、肥満、遺伝関連の各専門グループを配し、糖尿病のあらゆる症状に対応するとともに、幼年から高齢までの一貫した診療体制を構築しているのが大きな特徴である。外来患者数は年間10万人を超え世界最大のインスリン使用者を擁す「糖尿病の医療施設において独立した眼科を設置しているのは全国でここだけ。海外でも私が知る限り2施設だけです」と語るのは、糖尿病眼科の北野滋彦教授である。近年、糖尿病網膜症が増加傾向にある。糖尿病にかかると糖が血管に障害を与えるようになり、目の網膜にある血管がダメージを受けて糖尿病網膜症を併発する可能性が高くなる。初期段階では自覚症状がなく、気がつくと悪化しているケースが多い。このため、糖尿病センターでは早期発見をめざし、初診で内科を訪れる患者さんは必ず糖尿病眼科も受診するシステムをとっている。「糖尿病網膜症の患者さんが手術を受ける場合、事前に血糖値を適切にコントロールしていないと、術後に症状がSincere|No.5-2016 07