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概要

sincere no04

受診者の不安や悩みに寄り添い心のケアに努める遺伝子医療センター臨床心理士・認定遺伝カウンセラー浦野真理遺伝カウンセリングでは、臨床遺伝専門医と私たち臨床心理士や認定遺伝カウンセラーなどが受診者やご家族の話を伺います。臨床遺伝専門医は医学的見地から遺伝性疾患について説明し、どのような解決法があるのかを説明します。一方、臨床心理士や認定遺伝カウンセラーの役割は、受診者やご家族の心を和らげ、臨床遺伝専門医に聞きづらい問題や心配事などに耳を傾け、不安を少しでも軽くして次のステップへ踏み出せるようにすることです。遺伝カウンセリングで難しいのは、倫理の問題が絡んでくるケースです。例えば、最初のお子さんが筋ジストロフィーなどの遺伝性疾患であった場合、二人目をどうするかは当事者のご夫婦にとって大きな問題です。二人目をあきらめることは、最初のお子さんを否定することになると苦しむ方。妊娠したが、同じ疾患を持つ子を育てる自信がないと悩まれる方。こうした方々には小児医療の最新情報や参考となる事例を紹介し、冷静な判断ができるようフォローしていきます。難しい判断を下された場合も、当事者である方々に寄り添って支えていくのが私たちの基本的な姿勢です。ラー、看護師などで構成された医療チームが同席し、受診者やそのご家族と面談する。認定遺伝カウンセラーは、齋藤教授が理事長を務める日本遺伝カウンセリング学会と日本人類遺伝学会が共同認定する資格で、2005年に制度がスタート。資格取得者は2014年12月現在161人を数える。「受診者が抱える悩みは一人ひとり異なります。私たちの役割は、受診者だけでなくご家族にもかかわる問題に納得のいく決断を下していただけるような環境を整備することです。まずは受診者とご家族の病歴をお聞きし、どのような解決をお求めなのかをしっかりと把握する必要があります。そのため、初回の遺伝カウンセリングは優に1時間を要します」と齋藤教授。こうした受診者やご家族の情報をもとに、「スタッフカンファレンス」が開かれる。そこで遺伝子検査の妥当性や今後の方針などが検討される。このように、遺伝カウンセリングでは受診者やご家族の事情を聞いたうえで、遺伝子変異や遺伝の仕組み、遺伝の確率、発症時期、治療法、遺伝子検査を受ける心構えなどについて時間をかけて説明し、疑問や質問に答えながら遺伝子検査を受けるかどうか自己決断できるようカウンセリングを進めていく。「遺伝カウンセリング受診者の約40%は、妊婦さんやお子さんの遺伝性疾患を心配するご両親です。重い問題を抱え、遺伝子検査を受けること自体に悩んでいる方も少なくありません。もし陽性だったらと考えるだけで、強いストレスを感じる方。たとえ陰性であっても、兄弟姉妹に遺伝性疾患が受け継がれている場合、自分が免れたことに負い目を感じる方もいます。それだけに、心理面でのフォローが大切になります。こうした遺伝カウンセリングは、学会や学内の倫理規定に沿って行われます」(齋藤教授)。遺伝子検査の結果、陽性の判定が出た場合は必要に応じて他の診療科や医療機関、ソーシャルワーカーなどと連携して診療を進める。また発症前の場合は、発症年齢に達するまでの健康維持や生活面での指導、定期検査、さらには不安を軽減する的確なアドバイスなどでフォローしていく。そのため、面談や診療は10年、15年と長期におよぶことが多い。将来への希望を取り戻した受診者とそのご家族女子医大の遺伝カウンセリングへの取り組みを、患者さんやご家族はどのように受け止め、評価しているのだろうか。仙台市在住のIさんご夫妻は、10歳になる娘さんのカウンセリングと診療のために年2回、女子医大に通っている。「娘が生後8か月の頃、細胞を切り取って検査しなければ病名は確定できないと地方の病院でいわれました。ところが女子医大では、血液による遺伝子検査で診断がスタッフカンファレンスの模様。遺伝子検査室の遺伝子解析装置(シーケンサー)。08 Sincere|No.4-2015