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概要

sincere no04

医療現場最前線レポート操作ボックス(コンソール)でロボットアームを遠隔操作。「ダビンチサージカルシステム」による前立腺がんの手術風景。日本の病院の中で群を抜くものである。第2位の病院の年間手術件数が100件強であることからも、突出していることが分かる。単に手術件数が多いというだけでなく、早期の腎がんや小径の腎がんの場合は、腫瘍とその周辺のみを切除する「部分切除術」を推進していることも特徴だ。ちなみに、過去3年間の部分切除術の割合は60%超となっている。また、腹腔鏡下手術を積極的に取り入れ、患者さんの負担を少なくする低侵襲化も進めている。腎臓全摘手術においても、ここ数年は開腹手術より腹腔鏡下手術のほうが多い。さらに、2013(平成25)年からは手術支援ロボット「ダビンチサージカルシステム」(以下ダビンチ)を駆使した部分切除術が行われるようになった。同年のダビンチによる手術件数は34件だったが、昨年は75件へと倍以上増加した。まだ医療費が保険適用の対象になっていないため患者さんの費用負担は大きいが、手術を待ち望んでいる患者さんが少なくないためコンスタントに週2~3回のペースでダビンチによる手術を行っており、今年は100件の大台を突破してくるのは間違いない。保険が適用されるようになれば、ダビンチによる腎がんの部分切除術はさらに増えてくるだろう。前立腺がんロボットによる手術の推進で良好な成績を実現心地よいポップスのBGMが小さく流れる中、ときおり「カシャ、カシャ」という軽快な音が鳴り響く。ここは中央病棟2階のダビンチが設置されている手術室。青森からやってきた前立腺がん患者さんの手術が行われているところだ。「カシャ、カシャ」という音は、ロボットアームを操作するコンソールの足元のペダルを操作したときに発せられるものである。患者さんの腹部に開けられた穴には3Dカメラと手術用鉗子が挿入され、コンソーモニターを見ながら手術の進行状況を確認。ルに座った田邉教授が3D画像を見ながらロボットアームを遠隔操作する。田邉教授はダビンチ手術の先駆者でもある。モニターに映し出された鮮明な画像を目にすると、患部が正確に切除されていくのが見てとれる。まるでオペレーターが患者さんの体の中に入ダビンチ手術の熟達者・飯塚淳平助教。り込んで手術を行っているような錯覚を覚える。通常、ダビンチによる前立腺がん手術は1.5~2時間で終わるが、この日の患者さんはリンパ節の切除も行ったため手術時間は3時間を要した。女子医大病院にダビンチが導入されたのは2011(平成23)年。その年の8月に前立腺全摘術の一例目が行われ、これまでのダビンチによる手術件数は約250件を数える。田邉教授とともにダビンチ手術の指導的立場にある飯塚淳平助教は、「今では前立腺がん手術のほぼすべてをダビンチによって行っています。おおむね週2回のペースで行い、年間の手術件数は80件程度となっています」という。ダビンチは腹腔鏡を発展させたものといえるが、腹腔鏡による手術は全般的に出血が少なく、術後の回復が早いというメリットがある。出血量は開腹手術の1~2割にすぎないという。加えてダビンチは、「ロボットアームの手術用鉗子先端部を細かく動かすことができるうえ、手ぶれを自動的に補正する機能もあるため、より精緻な手術操作が可能です」と飯塚助教は指摘。さらに、「これまでの症例はいずれも術後の経過が良好で、手術の成績は従来の方法に比べてダビンチのほうが良いという結果が出ています」とのことだ。16 Sincere|No.4-2015