ブックタイトルシンシア　2014.No.3

概要

シンシア　2014.No.3

脳卒中にかかりやすいリスク■肥満：太りすぎは高血圧や動脈硬化、糖尿病などの原因となり、脳卒中の危険因子を増大させる。■高血圧：高血圧は動脈硬化を進行させ、脳卒中をきたす最大のリスクとなる。■糖尿病：糖尿病の人は脳卒中で死亡する率が正常な人の2～3倍となる。■脂質異常症：コレステロールが多すぎると動脈硬化が進行し、脳卒中につながる。■運動不足：運動不足は肥満をきたし、高血圧や脂質異常症、糖尿病のリスクとなる。■ストレス過多：ストレスや緊張は血圧を上昇させる。■親族に脳卒中の人がいる：親族に脳卒中発症者がいれば、その家族も脳卒中の発症率が高くなる。■心房細動（不整脈）がある：心房細動を放置すると血栓が脳に達し、脳梗塞の原因となる。■大量飲酒：酒に合う食べ物には塩分が多いため高血圧になりやすい。飲酒は利尿作用で脱水症状をもたらし、血液がドロドロになって脳梗塞の引き金となる。■タバコ：1日に10本以上喫煙する人は、脳卒中になる危険が吸わない人に比べて5倍も上昇する。だが、実際には高血圧だったのである。「三親等くらいまでの親族の中に高血圧の人がいれば、自分も高血圧ではないかと疑ってかかるべきです」と岡田教授。事実、Kさんの場合も父親が高血圧で、脳出血で亡くなっていたのだ。人間ドックで高血圧と診断されなかったのは、落ち着いた状態のときに血圧測定をしていたからにほかならない。岡田教授はさらに、「脳出血は急に気温が下がるなど季節の変わり目に起きやすいものです。また、血圧が上がる朝方に発症するケースも多いですね」という。Kさんはこうした指摘にも当てはまっていたのである。□予期せぬストレスで血圧が急上昇さて、女子医大病院に搬送されたKさんは、手足を動かす神経のすぐ脇に血腫が広がっていたが、運動に大きな支障をきたすほどではなかったため、手Kさんは毎日の血圧測定を欠かさない。術をすることなく内科的治療で乗り切ることになった。そして、意識が戻ってからすぐにリハビリを開始。マヒが残ることもなく、1か月半後に退院することができた。それ以来、Kさんは降圧剤を服用しながら、自動血圧計を購入して毎日、血圧をチェックするようになった。「自動血圧計なら自宅で簡単に血圧を測れますから、血圧をコントロールするうえでおすすめです」。そう語るKさんは、食事にも気をつけるようになった。「好物の干物はなるべく控え、塩漬けの漬物も避けています。朝食を抜くこともありません。体重が増えると血圧が上がりますから体重維持にも努めていますが、これがなかなか難しくて……」と苦笑する。人は誰でもストレスがかかると血圧が上がる。岡田教授はその一例として、「脳動脈瘤の手術の最中に執刀医の血圧を測定したところ、操作が患部に近づくと血圧が一気に20mmHg以上も上がり、処置が終わるとスーッと下がりました」と、自身の研究事例を紹介する。「このことからも、まずは自分の通常の血圧がどのくらいなのかを把握することが重要。予期せぬストレスで血圧が急に上がったりしますから、そういうバロメーターを持っておくことが大切です」と、岡田教授は脳卒中予防のポイントを語ってくれた。脳神経外科の岡田芳和教授（病院長）。コラム1なぜ寒い地域に脳卒中が多いのか？飲食で寒さをしのぐには、高カロリーで脂肪の多いものを食べる、ウォッカなどアルコール度数の高い酒類を飲む、そして塩分を多く摂取するなどがあげられる。塩分は血圧を上げて代謝を良くするため、寒さしのぎにつながるわけだ。秋田県など寒い地方で塩分の高いものが食されているのはこのためである。だが、血圧が高いと脳出血が起こりやすい。やはり塩分は控えたいものだ。コラム2起き抜けのジョギングは愚の骨頂！朝起きてすぐにジョギングなどの運動をしている人も少なくないだろう。だがこれは厳禁である。朝はもともと血圧が高い。食事をしたり温かい飲み物を飲めば血圧は下がるが、いきなり空腹のままジョギングしたりすれば、高血圧の人は脳卒中のリスクが高まる。早朝ジョギングの提唱者は心筋梗塞で亡くなっているのだ。朝ジョギングするなら、何かを口にしてから始めるべきである。コラム3降圧剤を飲んだら風呂に入るべからず酒を飲んで温泉に入ったら倒れた、という話をよく耳にすることだろう。一見、血圧が高かったからだと思いがちだが、実は正反対。酒を飲むと血圧は下がり、風呂に入って温まるとやはり血圧は下がる。したがって、血圧が下がりすぎて倒れるのである。ましてや、飲酒や入浴の前に降圧剤を服用するなどもってのほか。逆に、血圧を測定するなら飲酒や入浴前に行わなければならない。Sincere｜No.3-2015 21