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概要

シンシア 2014.No.2

朝のカンファレンスで教員から指導を受ける。ナースステーションで看護師と打ち合わせたり患者さんのカルテを確認する。科や呼吸器外科、循環器内科、脳神経外科、化学療法緩和ケア科などの診療科を舞台に病棟実習を行った。このうち、西病棟Bの5階にある脳神経外科で学んだ5人グループの実習の様子を追ってみよう。ピュアな気持ちで実習に臨む病棟実習の初日、まず脳神経外科病棟の大熊あとよ看護師長の挨拶があった。「脳神経外科病棟に入院されているのは、ほとんど脳腫瘍の患者さんです。中には意識障害がある患者さんもいますので、コミュニケーションをうまく取れないこともあるでしょう。大事なことは、患者さんの表情をよく観察することです」と、脳神経外科病棟の特性を説明。また、「患者さんは40~50歳代の人が多く、みなさんを自分の家族のように思っていろいろな話をされると思います。その中から、患者さんの生きた情報をつかみ取ってください」と要望。さらに、「私たちは“患者さんに選ばれる病棟づくり”をしていますが、同時に“学生に選ばれる病棟づくり”もめざしています。ですから、ピュアな気持ちで病棟実習に臨み、気がついたことはどんどん提案してください」と語った。このあと5人の学生はそれぞれ受け持つことになった患者さんの病室を訪れ、自己紹介。そして、患者さんの情報収集に努めた。K.K.さんが受け持った患者さんは、元気そうに見えるものの余命が短い。それを聞いたK.K.さんはショックを受け、他の4人も驚きを隠せず、命の重みを考えさせられる重々しい気分でのスタートとなった。ケアプランを中止する判断も重要脳神経外科病棟実習は午前8時半から始まる。前日の実習記録と当日の学習目標・看護計画を、朝のカンファレンスで教員に報告。ケアプランの修正などの指導を受けた後、受け持つ患者さんの担当看護師と調整し、タイムスケジュールや具体的な看護方法についてアドバイスを受け、患者さんへのケアを実行する。そして午後2時以降、その日に実施したこと・学んだことを看護師に報告し、3時に病棟から学部校舎へ移動して学臨床看護学実習を通して学生は急激な成長を遂げます東京女子医科大学看護学部成人看護学准教授原三紀子女子医大病院に入院される方、とりわけ脳神経外科病棟の患者さんは、最先端の医療を求めてここで治療を受けたいと願って来られる方がほとんどです。そういう環境の中での成人看護学実習が、女子医大の大きな特徴となっています。20歳そこそこの2年生が、脳腫瘍などの重い疾病を抱えた患者さんに寄り添い、その苦悩を実感するわけですから、ある意味で死生観も問われてきます。実質的な病棟実習は2週間と短いものですが、学生たちは急激な成長を見せます。最初は不安感が先立ちますが、グループの中で意見を述べ合うことによって“気づき”が広がっていき、表情も豊かになってきます。一生懸命取り組んでいる姿勢が患者さんにも伝わり、相互の信頼関係が深まっていくのが患者さんの表情からも見て取れます。患者さんに親切にするだけではただのサービスにすぎません。看護師として、専門職としてどうなのかと問いかけながら指導することにより、そうした自覚も芽生えてきます。女子医大には、教育的な役割を担う「クリニカルコーチ」という看護師がいます。私はその育成プロジェクトに関わっていますが、脳神経外科病棟にもクリニカルコーチがいます。学生たちは看護師のアドバイスを受けながら実習するわけですが、クリニカルコーチにも支えられているのが女子医大の看護学実習のすばらしいところでもあります。18 Sincere|No.2-2014