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概要

シンシア 2014.No.2

母体胎児科ハイリスク妊娠・分娩に対応分娩中の産道出血でショック状態の人や、産褥異常の人が搬送されてくるケースもある。ちなみに、母体胎児科に救急搬送される件数は年間約150件を数える。8時半から行われる朝のカンファレンス。母体胎児科・婦人科教授正岡直樹■年間約150件の救急搬送を受け入れる今年4月半ば、Aさんは妊娠高血圧症候群のため母体胎児科のMFICUに入院。血圧をコントロールしながら妊娠37週での出産が予定された。だがその後、血圧コントロールが難しい状態となり、分娩時に母子とも危険を伴うとみられることから、35週で帝王切開により出産した。Aさんはそれから1週間、血圧コントロールを行って退院。新生児科のNICUに入院していた赤ちゃんも、無事に家へ帰ることができた。母体胎児科のMFICUには、Aさんのような重症妊娠高血圧症候群や合併症妊娠、切迫早産、胎児異常などのハイリスク妊娠に対応するため、超音波診断装置や人工呼吸器、生体情報モニター、分娩監視装置などが備えられている。合併症妊娠とは、病気を持つ人の妊娠のこと。例えば、糖尿病の人が妊娠すれば糖尿病合併妊娠となり、流産や早産のリスクが高まるほか、新生児にも低血糖症や呼吸障害などの合併症が起きやすくなる。また、妊娠中は胎盤から血糖値が上昇しやすい物質が分泌されるため、妊娠中に糖代謝異常が発見される場合もある。これが妊娠糖尿病である。八千代医療センターには、このようなハイリスク妊娠の妊婦さんや、破水、切迫早産、双子の妊娠などで早産・低出生体重児出産となりそうな妊婦さんが、千葉県の各地から搬送されてくる。また、■生命の誕生に立ち会えるすばらしさ千葉県で総合周産期母子医療センターに指定されているのは、八千代医療センターと亀田総合病院の2つしかない。亀田総合病院は鴨川市にあるため、人口が密集する都市部を中心としたエリアでの救急母体搬送は、八千代医療センターに集中する。その意味で、「ここは千葉県における周産期医療の最後の砦であり、我々スタッフはその自負と矜持を持って任務にあたっています」と、正岡直樹教授は胸を張る。母体胎児科のスタッフは婦人科も兼務しているが、常勤の医師は11人と少ない。その中で、2人当直・オンコール(いつでも対応できるよう待機していること)1人の態勢をとっているため、自ずとスタッフの当直回数が多くなる。「私も月に7~8回当直をしています。おそらく日本で最も多く当直回数をこなしている婦人科ではないでしょうか」と正岡教授。さらに、「我々は生命の誕生というすばらしい瞬間に立ち会えるわけです。それだけにやりがいがあります」という。千葉県は母親の出産年齢が高齢化しつつあり、帝王切開も増加傾向にある。母体胎児科の果たす役割はますます重要となってくるのはいうまでもない。母体ユニット看護師長牧野仁美MFICUに入院している妊婦さんへの回診風景。外来での妊婦健康診査風景。看護師を交えた合同カンファレンス。母胎ユニットの看護師のみなさん。ハイリスク妊娠・分娩と、その後の育児まで継続したケアを提供します母体胎児科助産師は、ハイリスク妊産褥婦のケアを行うことを使命としています。早産の危険が高い妊婦さんに妊娠を継続していけるようなケアをしたり、ハイリスク分娩をしたお母さんが家へ帰って安心して子育てができるようにお手伝いするのが私たちの仕事です。さらに、退院後も継続してケアを行っています。八千代医療センターでは、妊婦さんが地域の婦人科クリニックで健診を受けていただき、分娩は当院で行うという“セミオープンシステム”を導入しています。そこで重要なのが地域の助産師さんとの連携であり、そのシステムの構築もめざしています。Sincere|No.2-2014 15