ブックタイトルシンシア 2014.No.1
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シンシア 2014.No.1
医療研究最先端先端生命医科学センター(TWIns)内の組織・臓器作製室安倍首相も「組織ファクトリー」を視察を普及するには、細胞の自動培養装置や各種の器具、試薬などの開発が欠かせない。そうした体制が整ってはじめて細胞シートの大量生産が可能になる。医理工融合・産学共同は、先端医療の大衆化、すなわち誰もが受けられる先端医療を実現する強力な推進力なのである。細胞シート生産の自動化を実現し再生臓器づくりも視野に再生医療の発展と普及をめざすには、細胞シートの大量生産がキーポイントとなる。この問題をクリアすべく、先端生命医科学研究所では他大学や産業界と連携し、細胞培養自動化システム「組織ファクトリー」の開発と、細胞シートから組織や臓器をつくりだす技術「臓器ファクトリー」の確立に全力で取り組んでいる。「組織ファクトリー」に関しては、すでに自動化システムの試作機が完成している。全工程のクリーンルーム化と全自動化を実現するとともに、製造ラインを工程ごとにユニット化し、実験内容によりユニット構成を組み換えるモジュール方式を採用した。「細胞シートの生産は、手作業だと年間10~20人分が限度ですが、自動化システムなら30~80人分が可能です。また、手作業によるバラツキがなくなり、製品の安定化と高品質化が実現できるほか、夜間の稼働も可能になり、量産とコストダウンが両立できるようになりました」と、実験を指導する清水達也教授は語る。一方、「臓器ファクトリー」では、iPS細胞を用いた幹細胞の大量培養技術をはじめ、幹細胞から目的細胞を選別する技術、血管付与技術と積層化・肉厚化技術などの開発を進めている。こうした技術の開発により、ドナー臓器に代わる再生臓器が医療現場に登場する日もそう遠くはないだろう。安倍首相も先端生命医科学研究所を視察安倍晋三首相は内閣発足3か月後の昨年3月、先端生命医科学研究所を訪れ、細胞培養自動化システム「組織ファクトリー」などを視察した。安倍内閣の経済政策「アベノミクス」では、医療を成長産業と位置づけ、日本を支える産業の柱の一つとして育成していく方針を打ち出している。中でも再生医療は、国際競争力のある有望分野とされているだけに、安倍首相は岡野教授の説明に熱心に耳を傾けていた。このことからも、細胞シートによる再生医療への期待の大きさがうかがえよう。細胞シートでの臓器づくりをめざしています先端生命医科学研究所教授清水達也現在、心臓に用いる細胞シートは患者さんの太ももから採取した筋芽細胞を培養し、製造しています。もし患者さんの心臓から心筋細胞を直接採取できたら、細胞自体が拍動する細胞シートがつくれ、治療効果は格段に改善します。しかし、それは不可能に近い。近い将来、iPS細胞の応用技術が進歩して目的細胞への転換が容易になれば、iPS細胞を原料とした拍動する心臓の細胞シートがつくれ、同時に臓器製造への道も開けます。細胞シートで心臓をつくるとなると、細胞シートを500枚ほど積層する必要があります。しかし、細胞シートを4~5枚重ねると、細胞内の酸素が不足し、栄養分がゆきわたらなくなります。その問題を解決するのが、細胞シートに血管を植え付ける「血管付与技術」です。いまは、ヒトiPS細胞からつくった心筋細胞に血管内細胞を混入して血管を付与する実験に向けての準備を進めているところであり、3~5年後をメドにこの技術の確立をめざしています。Sincere|No.1-2014 09