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概要

シンシア 2014.No.1

細胞培養自動化システム「組織ファクトリー」(プロトタイプ)織や臓器を修復する、というものである。すでに女子医大と女子医大病院のチームが心筋症、食道がん、歯根膜治療で臨床研究の成果を積み重ねており、近く肺気腫の臨床研究に入る予定である。加えて、女子医大は大阪大病院、東北大病院、東海大病院、長崎大病院、フランスのリヨン国立病院、ノーベル医学・生理学賞の選考委員会が設置されているスウェーデンのカロリンスカ研究所、アメリカのユタ大学などと共同で、前記のほか角膜、耳、軟骨、肺、肝臓、膵臓など多様な臓器・器官にかかわる疾病での臨床研究を進めている。「私たちの願いは世界から難病をなくすことです。そのためには、革新的な治療法ほど情報公開すべきです。私たちは、これからも国内外を問わず細胞シート工学の技術移転を積極的に行っていきます。そして、世界の研究者たちと切磋琢磨することで、細胞シート工学を再生医療のスタンダードにしていきます」と岡野教授は力強く語る。医理工融合・産学共同で再生医療の実用化をめざす「細胞シート工学」の研究拠点である先端生命医科学研究所は、女子医大と早稲田大学との共同施設として2008(平成20)年に設立された先端生命医科学センター「TWIns(ツインズ)」内にある。同研究所では、医学研究者や臨床医をはじめ、理工学、生化学、企業の研究者などが参加して医理工融合・産学共同による「生命医工学」の研究・開発に邁進している。いまや最先端の医学として注目を集める生命医工学だが、女子医大がこの分野に着目したのは45年も前の1969(昭和44)年のこと。医療の技術革新をめざす「医療技術研究施設」としてスタートした。2001(平成13)年には「先端生命医科学研究所」として生まれ変わり、細胞シート工学の生みの親である岡野教授が所長に就任。科学領域や産業界との連携を強め、医療の最先端を歩み続けてきた。生命医工学の目的の一つに、先端医療の大衆化、すなわち限られた人しか受けられなかった先端医療を、誰もが受けられるようにすることがある。例えば、名人といわれる医師しか執刀できない難手術、高価すぎて尻込みしてしまう特殊医療、ドナー不足の移植医療などがそれに当たる。女子医大が推進する細胞シート工学は、まさにその解決法の一つといえる。誰もが受けられる医療を推進するには、臨床医の誰もが日常的に行える医療であり、患者さんの誰もが気兼ねなく受けられる医療でなければならない。そのためには、これまでとは違った視点から医療を見直す必要があった。「TWIns」の3階には、女子医大が進める生命医工学に協賛する企業が複数社入居している。細胞シート工学08 Sincere|No.1-2014