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概要

シンシア 2014.No.1

細胞シート再生治療食道・食道ガンの内視鏡切除後の口腔粘膜シートによる再生治療歯周・歯根膜細胞シートによる歯周組織の再生治療角膜・角膜輪部細胞や口腔粘膜細胞シートによる角膜の再生治療細胞シートによる移植組織・臓器作製心臓・間葉系幹細胞や筋芽細胞シートによる拡張性心筋症または虚血性心疾患の再生治療耳・鼻粘膜細胞による中耳腔粘膜細胞の再生治療肺・繊維芽細胞シートによる気胸などの再生治療細胞シート厚100um~200umの積層細胞シート血管網を有する厚い組織・臓器軟骨・軟骨細胞シートによる関節軟骨の修復再建治療細胞シート工学の第一人者・岡野光夫教授肝臓・遺伝子修飾した高機能化肝臓細胞シートによる肝再建治療膵臓・膵島細胞シートを用いた新規糖尿病治療の実現まず必要になる。それには万能細胞(ES細胞、iPS細胞)を用いる方法や、患者さんなどの体細胞を用いる方法がある。代表的な万能細胞であるES細胞(胚性幹細胞)なら、あらゆる組織や臓器への分化が可能だが、受精卵を用いるため、ヒトになり得る細胞を恣意的に操作してよいのかという生命倫理の問題が絡んでくる。一方、iPS細胞(人工多能性幹細胞)は体細胞からつくる万能細胞なので倫理問題がクリアでき、再生医療への利用が可能だ。ただ、そのままでの利用は難しく、もう一度体細胞に戻す必要がある。いまは医療に用いる実用化技術の開発に取り組んでいる段階だ。これに対し、患者さんなどの体細胞からつくる細胞シートは、倫理問題に抵触しないのはもちろん、移植後に拒否反応を起こす心配も極めて少ない。加えて、将来的にiPS細胞の応用技術が確立されれば、iPS細胞を原料とした細胞シートの大量生産が可能となり、組織や臓器づくりへの道が開ける。それだけに、細胞シートへの期待は高まるばかりだ。広がる大学間連携で難病治療の研究に拍車がかかる細胞をシート状に培養する「細胞シート工学」は、女子医大の岡野光夫教授・副学長が1990(平成2)年に開発した温度応答性培養皿を基盤とする日本発・世界初の再生医療技術である。岡野教授は、人体の組織や臓器がシート状の細胞、つまり細胞シートの土台でできていることに着目。患者の細胞を培養して細胞シートをつくり、単層または複数枚重ねて体内に移植し、組織や臓器を再生するという再生医療の新しい概念と技術基盤を確立した。細胞シートによる組織・臓器再生の仕組みは、欠損した細胞組織を補填する、あるいは細胞シートから放出されるタンパク質の一種「サイトカイン」が毛細血管を育成し、患部に栄養分を送り込み、組再生医療の不可能を可能にするそれが私たちの使命です20世紀後半に移植医療が脚光を浴び、大きな進歩を遂げました。しかし、臓器提供者(ドナー)が極端に少ないことが大きな悩みで、解決の見通しも立っていません。臓器移植では、提供された一つの心臓で1人の患者さんしか治療できません。しかし、細胞や組織を使うと、一つの心臓で1万人の命を救うことも夢ではありません。それを可能にするのが、私たちが開発した「細胞シート工学」です。私たちは患者さんから体細胞を採取し、先端生命医科学研究所所長岡野てるお光夫培養して細胞シートにし、それを再移植する方法で臨床研究の成果を積み上げています。将来、ドナーからの臓器が使えるようになり、またiPS細胞から体細胞が大量培養できるようになれば、細胞シートを大量生産して大勢の患者さんを救うという私たちの夢は実現します。白血球の血液型ともいえるのがHLA(ヒト白血球型抗原)ですが、約140種のHLAホモドナーからiPS細胞を樹立すれば、約9割の日本人をカバーできるという試算があります。将来、iPS細胞から細胞シートの大量生産が可能になり、あらかじめHLA別に心臓や肝臓の細胞シートが製造できるようになれば、誰もがオーダーメイド医療(遺伝子情報などをもとに個々人の特性に合致した最適な治療が受けられる医療)を受けられるようになります。これは夢物語ではありません。実現可能な夢なのです。これまでの医療は、既存の病気を治すことに専念してきました。しかし、いま治せない病気、難病とされる病気を治すことこそ、医療にかかわる者の使命です。これまで治せないとされてきた病気の治療法を、女子医大が開発し世界に広めていく。細胞シートでそれを成し遂げる。私たちはそのことに全力をあげて取り組んでいきます。Sincere|No.1-2014 07