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概要

シンシア 2014.No.1

医療研究最先端女子医発・世界初の「細胞シート」が再生医療の新たな地平を切り開く再生医療で世界を牽引する日本。体細胞を培養してつくる「細胞シート」は、心臓病、食道がん、角膜損傷などで著しい治療効果が期待できると、いま世界の注目を集めている。現在進行形で進化し続ける細胞シートの研究拠点が、東京女子医科大学河田町キャンパス内にある先端生命医科学研究所である。拡張型心筋症患者が細胞シートによって奇跡の生還!心臓病の代表的な難病といわれる心筋症。いまだ根本的な治療法が確立されておらず、重篤な場合、残された道は心臓移植しかないとされる。大阪府のAさん(50代・男性)は8年前、持病の心臓病が悪化し、地域の病院に緊急入院した。拡張型心筋症と診断され、一時は意識不明に陥るほど病状が悪化した。大阪大学医学部附属病院に転院したが、冷蔵庫大の補助人工心臓をつけ、病院のベッドで心臓移植の機会を待つ日々が続いた。だが、1年経ってもドナー(臓器提供者)は現れなかった。Aさんを救ったのは、女子医大が基盤技術を開発し、大阪大病院と共同で取り組んできた細胞シートによる臨床研究だった。Aさんが受けた治療は、自身の太ももから約10グラムの筋肉を採取し、そこから筋芽細胞を取り出して約4cm四方・厚さ0.1mmに培養した細胞シートを複数枚重ね、心臓の表面数か所に張り付けるという世界初の手術だった。移植された細胞シートは心臓の筋肉と一体化して、血液を押し出すポンプ機能を徐々に高めていった。4か月後には補助の人工心臓を外せるまでに回復し、7か月後には退院が許された。その後は愛犬の散歩を日課とするなど、奇跡的ともいえる元気な日常生活を送っている。再生医療の難問をクリアする細胞シートこれまで臓器の機能が失われると、臓器移植を受けるか人工臓器をつけるか、極めて少ない選択肢しか残されていなかった。だが、臓器移植はドナーの絶対数が不足し、人工臓器も一時的な補助手段にすぎないのが実情だ。それに対し、近年注目を集めている再生医療は、医学や理工学、細胞生物学などの知識と技術を融合し、組織や臓器を再生しようという新しい試みである。再生医療には、治療に用いる細胞が培養皿で培養された細胞シートクリーンベンチでの細胞シート研究風景06 Sincere|No.1-2014