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本学の最先端医療 PETとPET/CT

PET(ポジトロン放出型断層撮影)呼ばれる画像診断法は、我が国でもがんの臨床になくてはならない先端技術として急速に普及し、がん診断の新兵器と呼ばれております。中でも、半減期が110分と短いポジトロン核種、フッ素で見印を付けた薬剤、FDG(18F標識ブドウ糖)が、専らがん診断に用いられます。発育していくがん細胞がブドウ糖をエネルギー源として使っている現象を利用する手法です。この放射性薬剤(FDG)は、がんの活性度に応じた取り込み程度となり、PET画像で高度に集積したがん病巣は、発育速度が早いなど、がんの性質が推定できます。がんの発生しやすい全身の躯幹部の画像をポジトロンカメラと呼ばれる装置で一気に撮るのがPET検査です。がんの再発や転移など、一度の検査で全身の広がりが観察できることもこの検査の特徴で、適正な診断・治療に結びつける役を果たします。

さらに、PET/CTという新機種を用いると、PETとCTを融合させた画像を作成することが出来、体内のブドウ糖分布と同時に、詳細な解剖学的情報を得ることが出来ます。CT画像が病巣の位置、形、大きさなどを映し出す「形態画像」であるのに対し、PETは病巣の代謝機能の活性をとらえる「生化学的画像」で、これらを同時に同位置で撮像するPET/CT融合像が精度の向上に役立ちます。(右4番目写真:「PETとPET/CT」の画像で腋の下に淡い集積()が見られ、CT画像も組み合わせたPET/CT画像で小さな乳癌()に一致していることが分かります)

但し、PET検査でもX線検査と同様に、少なからず被ばくを伴います。その検査1回の線量は胃腸透視1 回分(3〜4ミリシーベルト)程度です。また、PET/CTになると、CTの被ばく(1回2〜10ミリシーベルト)が加わります。決して身体に影響が生じる線量ではありませんが、検診に用いる場合は、撮像法などに工夫が求められます。当大学病院では、がん検診としてPET検査を受けられる場合は、まずPETのみの検査を行います。そこで何らかの異常が疑われた時に、続いて局所に限定したPET/CTを追加し、出来るだけ少ない被ばくで十分な情報を得るように心がけております。

検査法は、具体的にはFDGという薬剤を投与する前の数時間を絶食にし、注射後は1時間くらい安静状態を保って撮像に入ります。全身のFDGの分布を20〜30分かけてPET(またはPET/CT)カメラで収集し、全身画像を作成します。尚、ブドウ糖製剤であるFDGの体内分布は、血糖値の影響を大きく受けますので、糖尿病のある方は予め血糖値をコントロールしておくことが重要です。

検査後の注意としては、わずかに体内に残っている放射能についても留意し、数時間は妊産婦や幼小児との接触を避けるように指導しております。“放射線被ばくのリスクを出来るだけ少なくする”という国際基準に基づいた安全管理の徹底化を図るためです。

ブドウ糖代謝を利用したPETでは、発育速度の比較的遅い前立腺癌や胃癌、肝臓癌などの検出は苦手と言えます。また、肺炎やサルコイドーシスなどの炎症でも、活動期にはFDGを取り込みますので、結果の解釈に注意を要します。このように、代謝機能画像の一つであるFDGのPET検査では、がんの顔つきを推定することが出来ます。

現在、肺癌、大腸癌、乳癌、悪性リンパ腫、膵臓癌、食道癌、婦人科癌など、12種類のがんで、PET検査が治療法を決定する手法として保険収載されております。

過去にがんを患った経歴がある、はっきりした理由がないのに貧血がすすむ、やせていく、リンパ腺の腫れがある、がん家系であるなど、「がんではないか?」と不安を抱えている方々に、PET検診は大きな福音をもたらす可能性があります。

このように、PET検査は外来レベルで、いち早く、苦痛なく、簡単に進行性のがんを発見し、早期治療に結びつける最先端の画像診断法です。PETとPET/CTをそれぞれ適切に使い分け、これら高度の技術を健全に発展させていくことが重要です。


東京女子医大 放射線科
日下部きよ子

東京女子医大病院の最先端医療PETとPET/CT
がん診療におけるPET/CTの役割
PETとCT融合像
PETとPET/CT
検査による被ばく
PETとCT撮像に伴う被ばく
がん検診におけるPET/CTの使用法
PET(PET/CT)の検査法
がん診断におけるPETの特徴
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