①担当医師

永田 智 教授・講座主任
鏑木 陽一郎 助教(出向中)
山本 陽子 後期臨床研修医(出向中)
大宮 亜希子 後期臨床研修医
千葉 幸英 非常勤講師

 

②対象疾患

上部消化管(食道~胃十二指腸)疾患
胃十二指腸潰瘍、ヘリコバクターピロリ感染症、好酸球性食道炎、乳幼児の胃食道逆流症など
下部消化管(腸)疾患
潰瘍性大腸炎、クローン病、難治性下痢症、腸管ベーチェット病
自己免疫疾患に関連した腸炎、蛋白漏出性胃腸症、難治性便秘症など
栄養
肥満、体重増加不良、慢性消化器疾患による栄養障害
アレルギー性疾患
消化管アレルギー、好酸球性胃腸炎など

★以下の症状のお子さんでお悩みの場合はご相談ください。

下痢: 2週間以上下痢が続き、薬の内服や食事内容で改善しない場合
血便や体重増加不良を伴う場合
腹痛: 特に体重増加不良、便の異常、食欲低下、発熱などを伴った場合
血便: 粘血便、黒色便、便全体が血液を伴う場合、腹痛を伴う場合など
便秘: 特に通常の内科治療で改善に乏しく、食事量低下や嘔吐なども伴う場合
嘔吐: 反復、持続する場合

※神経性やせ症の診療は当科では行っておりません

当科での主な検査・治療

  • 腹部超音波検査
  • 上部消化管内視鏡検査
  • 下部消化管内視鏡検査
  • 小腸カプセル内視鏡検査

食道・胃十二指腸や大腸だけでなく、小腸カプセル内視鏡検査による小腸病変の評価も行えます。8−10歳になると飲み込めるようになるお子さんが多いです。
カプセルの嚥下が難しいお子さんには、内視鏡を用いて全身麻酔下あるいは鎮静剤を使用した状況で胃十二指腸に送ることができます。
また、症例によっては消化器内科と併診し、小腸ダブルバルーン内視鏡での精査も行います。年齢や適応についてはご相談ください。
消化管造影検査、内視鏡治療は小児外科あるいは消化器内科と併診し行なってまいります。

③診療・特色

私たちは、小児の食道、胃から大腸、肛門まで、全ての消化管の問題を診療する専門集団です。
消化器疾患を小児科医が中心となり診療・検査・治療を行っている施設はまだまだ少ないのが現状です。小児の消化器疾患は栄養障害や二次性徴の問題が生じることが多く、年代ごとの問題点も多種多様であるゆえ、小児科医としての専門的な対応が求められます。

当グループでは小児科医が中心となり消化管内視鏡検査、消化管造影検査などで診断・評価を行い、グローバルスタンダードに則り患者のために良質な医療を提供できるよう努力しております。
一方で、消化器と密接な関係のある「腸内細菌叢」についても、我々は注目し日々研究しております。日々の診療でも腸内環境を整え消化器症状を解決するよう、研鑽しております。

消化器疾患のなかには小児から成人科に移行する患者さんも一定数いらっしゃいます。移行時に患者さんが戸惑うことがないよう、私たちは消化器内科・消化器外科と月2回のカンファレンスを設け、情報共有に努めております。

炎症性腸疾患センターとの連携

当グループでは潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患も積極的に診療しております。炎症性腸疾患は(現時点では)成人してからも治療が必要なケースが多いです。こどもの時にどう病気と向かい合うかは、成人してからの病気との付き合い方に非常に重要になると考えております。私たち小児科医は心理面、栄養面も含め、病気との付き合い方をサポートしていきます。

当病院の炎症性腸疾患センターは日本有数の症例経験数を誇り、内科・外科・小児科が一つのチームとなって患者の診療を行っております。チーム内で患者さんの状況を共有できているため、お子さんが大人になった時も成人科への移行がスムーズであり、移行時にどうしても生じる「戸惑い」「不慣れ」を最小限にできると自負しております。また手術が必要になる可能性があるお子さんを適切なタイミングで迅速にご紹介でき、シームレスに良質な医療を提供できると考えております。3つの診療科がしっかりと連携することで患者さんに大きなメリットを提供できると考えております。

小児外科との連携

小児消化器疾患は外科的処置・手術を必要とすることが多々あります。私たちは週に1回、小児外科と合同カンファレンスを行い、患者についての意見交換を行なっております。また、小児消化器に関する検査や内視鏡的処置について、時に協同し診療を行います。

 

④受診を希望されるご家族の方へ

小児の消化器を専門的に診療する施設はまだまだ少ないです。
こちらの症状でお悩みのお子さまがおりましたらご相談ください。
血便など、便のことでお悩みのご家族は、便の写真を併せて持ってきていただけると診療する上で非常に助かります。

 

⑤医療関係者の方へ

炎症性腸疾患、自己免疫疾患や自己炎症症候群に伴う腸炎、消化管アレルギー疾患、ヘリコバクターピロリ感染症、消化管潰瘍、難治性下痢、難治性便秘、不明熱など、消化器に関して診断・治療に苦労されている方がおられましたら、ご紹介いただけると幸いです。
こどものお腹の悩みのお役に立てるよう、努力いたします。

 

⑥専門外来

以下の日程で外来を行なっております。鏑木、永田宛てにご紹介ください。

外来担当表

 

⑦入局希望の先生方へ

科学的根拠に基づいた各種消化器・膠原病の診療、研究に興味がありましたら、ぜひ一度見学にいらしてください。内視鏡や消化管造影検査などができる小児科医は貴重であり、専門性も高い領域です。日本では比較的新しい領域であるため、若手・中堅の医師の割合が大きいです。そのため、勢いのある若いうちよりオピニオンリーダーになることが比較的多いです。

また、当グループでは、食物アレルギーの寛解のメカニズム解明、川崎病の病因解明、プロバイオティクスを用いた消化器疾患、慢性下痢症、アレルギー、自己免疫疾患の研究などを行い、これらの成果を実地の治療に応用していきたいと思っています。興味のある方、ぜひ一緒に働きましょう!

 

⑧研究・実績

<研究の特色>

川崎病の病因はいまだ不明ですが、当研究グループは、冠動脈瘤発症機序や日本人に多いなど疫学条件をも説明できる新しい病因仮説をもとに、新しい細菌説の発見に至っています。食物アレルギーの研究に関しては、世界的に基礎的な検討が不足しているため根拠のある治療戦略が少ないですが、私達は、寛解を促進するヘルパー細胞のサブクラスに注目して、全く新しい見地から寛解のメカニズムを解明していきます。

昨今、難病の治療戦略の一つとして、腸内細菌叢の調節が注目されていますが、私たちの施設では、微生物免疫学講座と協力して精度の高い分子生物学的手法による腸内細菌叢の分析を行っており、この技術をもとに、「炎症性腸疾患の再発予防」「免疫細胞活性化、腸内環境の改善による生活習慣病・がんの治療、予防」などきわめて新しい分野への挑戦を続けています。このように、当グループでは、他施設の追従を許さない傑出した先進的検討を行う環境が整っています。

<研究業績>

○プロバイオティクス

  1. Nagata S. Effects of continuous intake of lactobacillus casei strain Shirota for controlling infections and normalizing bowel movements in facilities for the elderly. Prof. B.S. Ramakrishna, Prof. G. Nair B. and Prof Takeda Y, eds. Probiotics, Microbiome and Gut Function- Transforming health and well-being. Elsevier・India ISBN 978-81-312-4054-0,  July 6th, 99-106, 2015 
    (乳酸菌の感染予防と腸内環境改善への有用性を示す英文単行本)
  2. Nagata S, Asahara T, Ohta T, Yamada T, Kondo S, Bian L, Wang C, Yamashiro Y, Nomoto K. Effect of the continuous intake of probiotic fermented milk containing Lactobacillus casei strain Shirota on fever in a mass outbreak of norovirus gastroenteritis and the fecal microflora in a health service facility for the aged. Brit J Nutr 106:549-56, 2011?(乳酸菌飲料が高齢者施設の入所者のノロウイルス胃腸炎による発熱期間を短縮することにより重症化を防ぐことを証明した臨床試験)
  3. Shida K, Nanno M, Nagata S. Flexible cytokine production by macrophages and T cells in response to probiotic bacteria: a possible mechanism by which probiotics exert multifunctional immune regulatory activities. Gut Microbes. 2:109-14, 2011
    (プロバイオティクス菌が宿主の免疫応答細胞のサイトカイン産生を調節することを示す総説)
  4. Yamashiro Y, Nagata S. Beneficial microbes for premature infants, and children with malignancy undergoing chemotherapy. Beneficial Microbes 1:357-365, 2010?(ビフィズス菌が未熟児や化学療法中の小児の感染予防に役立つことを示す総説)
  5. Chiba Y, Shida K, Nagata S, Wada M, Bian L, Wang C, Shimizu T, Yamashiro Y, Kiyoshima-Shibata J, Nanno M, Nomoto K. Well-controlled proinflammatory cytokine responses of Peyer's patch cells to probiotic Lactobacillus casei. Immunology 130:352-62, 2010?(乳酸菌がマウスのパイエル板の炎症性サイトカインの産生を調節する作用があることを示す基礎研究)
  6. Nagata S, Asahara T, Wang C, Suyama Y, Chonan O, Takano K, Daibou M, Takahashi T, Nomoto K, Yamashiro Y. The effectiveness of Lactobacillus beverages in controlling infections among the residents of an aged care facility: A randomized placebo-controlled double blind trial. Ann Nutr Metab 68: 51-59 2016

○炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病、ベーチェット病)

  1. Nagata S, Shimizu T, Kudo T, Tomomasa T, Tajiri H, Yoden A, Kagimoto S, Tahara T, Ushijima K, Uchida K, Kobayashi A. Efficacy and safety of pulse steroid therapy in Japanese pediatric patients with ulcerative colitis: A survey of the Japanese Society for Pediatric Inflammatory Bowel Disease. Digestion 81:188-192,2010
    (本邦の小児潰瘍性大腸炎に関するステロイド・パルス療法の効果をまとめた報告:ヨーロッパのガイドラインの参考文献に使われています)
  2. Aoyagi Y, Nagata S, Kudo T, Fujii T, Wada M, Chiba Y, Ohtsuka Y, Yamashiro Y, Shimizu T, Ohkusa T. Peroxisome proliferator-activated receptor γ 2 mutation may cause a subset of ulcerative colitis. Pediatr Int  52:729-34,2010
    (潰瘍性大腸炎の難治化をもたらす遺伝子多型の調査報告)
  3. Kudo T, Nagata S, Aoyagi Y, Suzuki R, Matsuda H, Ohtsuka Y, Shimizu T, Okumura K, Yamashiro Y. Polarized production of T-helper cell type 1 cells in Peyer's patches in Crohn's disease. Digestion 70:214-25,2004
    (クローン病の初発部位である小腸パイエル板を調べ、病態について考察した研究)
  4. Ohtsuka Y, Arai K, Aoyagi Y, Fujii T, Yamakawa Y, Ohtani K, Ikuse T, Baba Y, Inage E, Kudo T, Suzuki R, Nagata S, Shimizu T. Monitoring 6-thioguanine nucleotide concentrations in Japanese children and adolescents with inflammatory bowel disease. J Gastroen Hepatol 25:1626-30,2010
    (本邦の炎症性腸疾患の維持療法に使われる6MPの血中濃度に関する検討)
  5. Fujii T, Ohtsuka Y, Yamakawa Y, Ohtani K, Kudo T, Ohtomo Y, Nagata S, Shimizu T. Effect of mizoribine in children with IBD. Pediatr Int 52:e57-9,2010
    (免疫調節薬であるミゾリビンの小児炎症性腸疾患への効果に関する検討)

 



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Illustrated by Kouchiei