東京女子医科大学病院 膠原病リウマチ痛風センター
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関節リウマチの治療はメトトレキサートや生物学的製剤など新しい薬剤の登場により,ここ十数年で飛躍的な進歩を遂げていますが,一方で関節リウマチに起因する間質性肺炎,治療に伴う薬剤性肺障害,呼吸器感染症といった多岐にわたる肺疾患の合併がこれまで以上に問題になっています。当センターの疫学調査では,関節リウマチ患者さんの死因として悪性腫瘍と並んで肺合併症の頻度が高いことが明らかとなっています。

間質性肺炎

関節リウマチの患者さんでは約10〜30%の方に間質性肺炎の合併がみられます。痰を伴わない咳が最も多い症状ですが,自覚症状に乏しく合併に気づかれないことも多いため,注意が必要です。無症状で経過することもありますが,一部の患者さんでは徐々に進行し,さらに感染などを契機として急速な悪化(急性増悪)がみられることもあります。症状に乏しい場合でも,定期的なレントゲンや胸部CTで合併や進行の有無を確認することが重要です。

薬剤性肺炎

抗リウマチ薬をはじめとした薬剤は関節リウマチの治療にとって重要な役割を果たしている薬剤ですが,一方でメトトレキサートをはじめとした関節リウマチの治療薬(抗リウマチ薬)により,まれに薬剤性肺障害をきたすことがあります。治療としては原因薬剤の中止が必須で,軽症例では中止のみで改善することもありますが,多くの例で重篤な呼吸不全を呈し,高用量のステロイド治療を含めた入院治療が必要となります。

呼吸器感染症

関節リウマチには細気管支炎や気管支拡張症といった気道病変の合併が多いことが最近報告されており,細菌などによる感染の原因となりうると言われています。またステロイドや抗リウマチ薬による免疫抑制のため,経過が急速で重症化しやすいため注意が必要です。また本来は病原性の少ないカビ(真菌)やウイルスによる日和見感染症や結核などの感染症を発症することもあります。

関節リウマチの呼吸器合併症は,経過の早さと重症化の危険性から早期診断,早期治療が重要です。治療中に呼吸器症状の出現や発熱がみられた場合には放置せず,なるべく早めに医療機関を受診するようにしましょう。

文責 花岡成典
2015年6月1日改筆