東京女子医科大学病院 膠原病リウマチ痛風センター
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「エンブレル」は1998年に米国において世界で初めて認可された生物学的製剤です。国内では2005年から使用開始されており、当センターで良く使用されている生物学的製剤の1つです(2023年10月現在)。国内で約13,000例に対して行われた市販後全例使用成績調査の結果、投与開始24週後に9割近くの方で一定以上の効果が認められています。

「エンブレル」はTNF受容体とヒト免疫グロブリンの一部を結合させた製剤で、完全ヒト型製剤(マウスなどの異種タンパクを含まない)のため、メトトレキサート(リウマトレックス®)の併用は必須ではありません。しかし他の生物学的製剤同様にメトトレキサートを併用したほうが有効性が高まることが確認されています。また完全ヒト型製剤のためアナフィラキシーはほとんどありませんが、注射部位反応などのアレルギー反応がみられることがあります。また、他の生物学的製剤同様、免疫の働きを低下させるため、感染症にかかりやすくなることがあります。

「レミケード」や「ヒュミラ」同様に「エンブレル」も炎症反応に関与する生体内物質(サイトカイン)であるTNFαの働きを抑えますが、先の2剤が抗体製剤であるのに対し、「エンブレル」は受容体製剤であり、TNFとの結合の仕方に違いがあります。この違いにより「エンブレル」は他のTNF阻害薬に比べて、結核や悪性リンパ腫などの発症リスクが低い可能性が報告されています。

「エンブレル」は、体内で薬剤の血中濃度が半減するまでの時間が約4日と生物学的製剤の中で最も短いため、他の生物学的製剤に比べ投与間隔が短いという欠点がありますが、これにより逆に副作用が発現した際にはもっとも対処しやすいということも言えます。

また、他の抗体製剤とは異なり胎盤通過性が低いことから、妊活中や妊婦にも比較的安全な薬剤として認識されています。

「エンブレル」の投与方法は皮下注射です。皮下注射製剤は、自宅で患者さんご自身による自己注射による投与が一般的です。10-25mgを週2回、または25-50mgを週1回投与します(標準使用量は週50mg)。標準使用量の半量である週25mgから開始して効果が弱い場合に増量したり、週50mgの投与によって寛解が得られた場合に用量を半減するなど用量調整が可能な薬剤です。

「エンブレル」は1本(25mg)は約10,000円、1本(50mg)は約20,000円です。標準使用量である週50mg投与を行った場合、自己負担額が月に約25,000円となります(3割負担の場合)。標準使用量の半量である週25mg投与を行った場合、自己負担額が月に約13,000円となります(3割負担の場合)。これに再診料・検査料・処方箋料・在宅自己注射管理料などが加わります。

「エンブレル」には、バイオ後続品であるバイオシミラーの「エタネルセプトBS」があり、それを使用するとさらに安価になります。

文責 田中榮一
2023年10月11日更新