診断と治療 膠原病・類縁疾患 多発性筋炎/皮膚筋炎

多発(性)筋炎/皮膚筋炎

多発(性)筋炎/皮膚筋炎とは

多発(性)筋炎/皮膚筋炎は、数週間から数か月にわたって進行する、おもに体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす炎症性ミオパチー(筋疾患)です。手指、肘関節や膝関節外側のがさがさした紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な皮膚症状がある場合は、皮膚筋炎と呼ばれます。その原因は今のところよくわかっていませんが、免疫の異常が病気の成り立ちに重要な役割を果たしています。日本全国に2万人ほどの患者さんがいると考えられており、男女比は1:3で、発症ピークは5~9歳と50歳代にあり、中年発症が最も多いです。多発筋炎/皮膚筋炎は、筋炎を中心に、皮膚症状、関節炎、間質性肺炎などを併発し、多彩な病像を呈しますが、すべての症状が起こるわけではなく、患者さん一人一人によって、出てくる症状、障害される臓器の種類や程度が異なります(筋肉の症状すらない、皮膚症状だけのひともいます: 無筋症性皮膚筋炎)。なお、小児期ではほとんどが皮膚筋炎であり、症状も特徴的であることが多く、若年性皮膚筋炎は成人とは少し違った病因を伴って発症しているものと思われます。

特発性炎症性ミオパチー(特発性炎症性筋疾患)とは

理論上、全ての筋疾患は「ミオパチー」ですが、日本を含む多くの国では、慣習的に筋ジストロフィー以外の筋疾患のことを「ミオパチー」と呼んでいます。ミオパチーには様々な種類のものがあり、大きく分けると遺伝性のものと、後天性のものがあります。後天性ミオパチーには、炎症性ミオパチー、内分泌性ミオパチー、薬剤性ミオパチーなどがあり、特に炎症性ミオパチーは「筋炎(myositis)」とも呼ばれます。炎症性ミオパチーは、感染など原因が明らかなものを除き、「特発性炎症性ミオパチー(idiopathic inflammatory myopathies: IIMs)」(特発性炎症性筋疾患)と呼ばれ、多くは自己免疫疾患と考えられています。
一般的には、多発筋炎、皮膚筋炎以外に、封入体筋炎、抗ARS抗体症候群(抗合成酵素抗体症候群)、免疫介在性壊死性ミオパチー(免疫介在性壊死性筋症)が含まれるとされていますが、これらの亜分類の方法や各病型の異同については、専門家の間でも議論があり、定まったものはありません。従来は、免疫介在性壊死性ミオパチーは多発筋炎に含まれ、抗ARS抗体症候群は皮膚症状があれば皮膚筋炎、皮膚症状がなくて筋症状があれば多発筋炎に分類されていました。なお、封入体筋炎は、他のIIMとは異なり、その病態に「変性」が関与していること、通常は免疫抑制療法の効果も乏しいことから、リウマチ科で診療されることはほとんどありません。

診断

医師による診察と、血液検査や生理検査、画像検査、病理検査などを組み合わせて、総合的に診断されます。血液検査では、筋原性酵素(CPKやアルドラーゼ)が上昇し、抗Jo-1抗体、抗ARS抗体、抗MDA5抗体、抗Mi-2抗体、抗TIF1-γ抗体などの種々の自己抗体が認められることが多いです。筋炎の診断確定のためには、針筋電図や筋生検が必要です。MRIも補助的に用いられます。ただし、無筋症性皮膚筋炎の場合は、通常はこれら筋肉の検査に異常はありません。また、間質性肺炎や心臓病変、がんを合併することがあり、これらの検索も必要に応じてなされます。多発筋炎・皮膚筋炎の分類基準としては、従来、1975年に発表されたBohanとPeterによる分類が頻用されていました。しかし、この基準にはいくつかの問題が指摘されており、当施設も参加した国際的なプロジェクトによって、新たな分類基準が2017年に発表され、以後使われています(Ann Rheum Dis. 2017;76:1955)。

治療

病気の重症度や症状の出方には個人差があり、それに応じた治療がなされます。基本となるのは、ステロイドによる薬物治療ですが、ステロイド単独では治療が難しい場合や、ステロイドの使用量を減らしたい場合には、シクロホスファミドやアザチオプリン、タクロリムス、メトトレキサート(本邦では適応外)のような免疫抑制薬、および免疫グロブリン静注療法が併用されることもあります。筋力低下の進行を防ぐための、治療開始早期からのリハビリテーションも重要です。皮疹に対しては、遮光および外用薬が用いられます。急速進行性の間質性肺炎を合併する場合は、強力な治療が病初期から必要とされます。診断や治療の進歩によって、以前に比べると予後は改善されましたが、非常に難治な患者さんもいまだにめずらしくはありません。また、感染症や骨壊死・骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などの治療に関連した合併症の適切なコントロールが重要となってきています。2020年には、当施設の川口臨床教授らが参加して作成した、『多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン(2020 年暫定版)』(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業・自己免疫疾患に関する調査研究班・多発性筋炎皮膚筋炎分科会)が公開されました。
なお、特に抗TIF1-γ抗体陽性の皮膚筋炎では、皮膚筋炎発症前後にがんを合併するリスクが高いため、注意が必要です。がんが診断された場合には、基本的にはがんの治療を優先しますが、皮膚筋炎の治療を同時に行うこともあります。

当センターにおける治療

当施設外来には、この病気を持つ患者さんが200人以上通院中です。2014年の学術論文(Curr Opin Rheumatol. 2014;26:724)において、共同研究可能な多発筋炎/皮膚筋炎レジストリー(症例登録システム)が世界には46あるとされ、当施設は日本国内で唯一その中に含まれています。当科病棟には、入院治療中の患者さんが常におられます。脳神経内科や皮膚科などとも連携して、専門的かつ全人的な治療を行っております。初発やその疑いの患者さんだけでなく、転居されて新たな担当医を探している方や、専門外の先生方からのご紹介、重篤な患者さんについても、常時迅速対応させて頂いておりますので、該当される方は是非ご連絡ください。
また、従来の治療に抵抗性の方に対しては、新薬の治験も実施しておりますので、ご興味のある方は、当科初診外来を予約受診してください(ただし、治験に参加するにはいくつかの条件がありますので、必ずしも希望される方が全員参加できるわけではありません)。
また、当施設は、大学病院かつ多くの患者さんを診療している施設の使命の一環として、さまざまな臨床研究を行っていますが、近年は、とくに皮膚筋炎合併急速進行性間質性肺疾患に注目しています。そのベッドサイドで簡単に測定できるバイオマーカーとして、血清フェリチンの意義を初めて報告し(Rheumatology. 2010;49:1354など)、日本国内ではこの病態において広く測定されるようになっています。私たちはまた、皮膚筋炎合併急速進行性間質性肺疾患の治療成績向上と病態研究に特に取り組んでおります。

文責 勝又康弘
2020年12月12日 更新