※トシリズマブの点滴静注による新たな治療方法(分子標的治療)を検討します。
顕微鏡的多発血管炎・多発血管炎性肉芽腫症の
患者さんの参加を募集中です。
この治験では、現在の標準治療と新しい治療方法の効果や副作用を比較します。
具体的には、IVCY+副腎皮質ステロイドの治療が必要と判断される顕微鏡的多発血管炎(MPA)や多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の患者さんに治験に参加していただき、トシリズマブの点滴+副腎皮質ステロイドを52週間投与した場合(トシリズマブ群)と、IVCY+副腎皮質ステロイドおよびアザチオプリンを52週間投与した場合(シクロホスファミド群)に振り分けて、それぞれの効果や副作用を比べます。
副腎皮質ステロイドは、患者さんの体重によって開始される用量が決められており、治験開始後は決められた投与計画に従って、投与、減量が行われます。患者さんがどちらの群に振り分けられるかは、機械によって決められ、患者さん自身や担当医が選ぶことはできない仕組みになっています(無作為割付比較試験)。
患者さんの選択や治験薬の投与の大まかな流れを下図に示します。
下図をclickすると拡大します
新しい薬の候補を健康な方や患者さんに使っていただき、対象となる病気に対する「効果」「副作用」などを確認し、国に承認申請するための試験のことを「治験(ちけん)」といいます。
新しい薬の候補は、下図のような各研究や試験を経て、効果と副作用が確かめられ、厚生労働省に報告・承認されて、通常の診療で使えるようになります。
下図をclickすると拡大します
医師主導治験は製薬企業が計画しにくい領域の疾患さんの治療方法を医師が主導して行われる治験です。
医師主導治験も企業治験と同様に国が定めた厳しい規則や基準の下で、参加される患者さんの安全と倫理面に十分配慮して行われます。
この治験は顕微鏡的多発血管炎および多発血管炎性肉芽腫症の診断・治療に精通した医師が計画・実施中の医師主導治験です。
分子標的治療とは、特に病気に強く関係している特定の物質の働きを抑える『分子標的薬』を用いた治療のことです。
近年、この『分子標的薬』を用いた治療が、関節リウマチを中心とした全身性リウマチ性疾患で行われるようになり、優れた治療効果が得られています。
血管炎の治療でも、2013年からリツキシマブという分子標的薬が顕微鏡的多発血管炎・多発血管炎性肉芽腫症の治療薬として日本でも用いることができるようになり、2017年には、高安動脈炎や巨細胞性動脈炎の治療薬として、トシリズマブという分子標的薬を用いることができるようになっています。
今回の治験では、トシリズマブという分子標的薬の顕微鏡的多発血管炎・多発血管炎性肉芽腫症に対する効果や副作用を検討します。
トシリズマブ治療は副作用がより少ないことが期待される分子標的治療です。この治験によりトシリズマブがMPAおよびGPAの治療薬として日常の診療で使えるようになることを目指します。
現在の高用量の副腎皮質ステロイドとシクロホスファミド間歇静注療法(IVCY)による治療には副作用があり、時に重症となって患者さんの生活の質を大きく低下させることが、MPAやGPAの現在の標準治療の大きな問題点となっています。
<高用量の副腎皮質ステロイドの投与>
<シクロホスファミド間歇静注>
そこで、このような副作用がより少ない治療方法が望まれており、そのためにはMPAおよびGPAの病態に関わる特定の物質だけ抑制する治療法(分子標的治療)の開発が必要となります。
トシリズマブは、炎症を引き起こす物質の一種であるインターロイキン-6(IL-6)の働きを特異的に抑制するお薬です。これまでの研究で、このIL-6が、MPAやGPAにおける血管の炎症にも重要な関わりを持つことが報告されています。
また、副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬などの従来の治療で改善しなかったり、悪化したりしたMPAやGPAの患者さんの症状や検査結果が、トシリズマブの投与によって改善したことが報告されています。したがって、トシリズマブが、MPAやGPAの新たな治療薬となることが期待されます。
本治験に参加いただける患者さんを募集しています。
参加いただく患者さんは、参加基準、除外基準を医師が確認した上で、参加できるかどうかが決まります。
基準の確認は参加頂く医療機関で行いますので、結果によっては参加できない場合もあります。
募集期間:2018年7月から募集開始(現在募集中)
参加していただくのに適切と判断する基準です。すべてを満たす方にご参加頂けます。
1. | MPAまたはGPAと診断され、抗好中球細胞質抗体(ANCA)陽性の方 |
2. | 登録時に20歳以上85歳未満である方 |
3. | 体重が40㎏以上の方 |
4. | BVAS(疾患活動性を示す評価点数)が3点以上の方 |
5. | 血管炎による臓器病変が1つ以上ある方 |
6. | CRPが0.6mg/dL以上の方 |
一つでも該当すると参加していただけません。
1. | 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、抗糸球体基底膜抗体病の方 |
2. | 2次性シェーグレン症候群以外の膠原病、全身性自己免疫疾患を有する方 |
3. | EUVAS (European Vasculitis Study Group)の重症度分類で限局型に該当する方 |
4. | 生命にかかわる重篤な肺病変を合併する方(人工呼吸器管理を必要とする、重症な肺出血など) |
5. | 透析を必要とする方、あるいは原病に基づく腎障害により血清クレアチニン値が4.0mg/dLを超える方、重篤な腎障害がある方 |
6. | コントロール不十分な虚血性心疾患、不整脈、心不全を合併する方 |
7. | 消化管の梗塞、出血を合併する方、憩室炎の既往・合併のある方 |
8. | 重篤な薬剤過敏症の既往のある方 |
9. | 登録時に活動性の感染症を有する方 |
10. | 活動性のB型肝炎、C型肝炎の方、あるいはその既往のある方 |
11. | 肝機能障害(AST ALTが基準値上限の2.5倍以上)を有する方 |
12. | 活動性肺結核あるいは活動性深在性真菌感染症の方 |
13. | 5年以内に悪性腫瘍、リンパ腫、白血病またはリンパ増殖性疾患の合併または既往のある方。ただし、完全に切除され1年以上転移を認めない皮膚がん、上皮内がん(carcinoma in situ、乳がん、子宮頚部がんなど)は参加可能です。 |
14. | 白血球数が4,000/mm3未満あるいは血小板数が120,000/mm3未満の方 |
15. | 過去に生物学的製剤(TNF阻害薬、IL-6受容体阻害薬、T細胞選択的共刺激調節薬)を投与された方。 登録前52週以内にリツキシマブを投与したことがある方。ただし、52週以内にリツキシマブを投与している場合でも、末梢血B細胞数が規定の条件を満たした方は参加可能です。 |
16. | 副作用などによりシクロホスファミドやアザチオプリンの投与が困難な方 |
17. | 登録前4週以内に副腎皮質ステロイドの内服または静脈内投与の新規開始または増量投与が行われた方。 |
18. | 登録前8週から5週以内に25㎎/日を超える副腎皮質ステロイドの内服または静脈内投与の新規開始または増量投与が行われた方。 |
19. | 登録前8週以内に副腎皮質ステロイド以外の免疫抑制薬の新規開始または増量投与が行われた方 |
20. | 登録前8週以内に副腎皮質ステロイドパルス療法、シクロホスファミド間歇静注療法、免疫グロブリン大量静注療法、血液浄化療法が行われた方 |
21. | 登録前4週以内に生ワクチンを接種された方 |
22. | 登録前12週間以内に他の治験に参加された方 |
23. | 治験担当医師が治験に組み入れることが適切でないと判断された方 |
この医師主導治験は、日本医療研究開発機構(AMED)の研究課題として採択され、東京女子医科大学 針谷正祥、杏林大学、吉祥寺あさひ病院 有村義宏が治験調整医師として、全国の治験実施医療機関のご協力を得て実施しています。
医療機関名 | 担当診療科 | 責任医師名 |
---|---|---|
国立大学法人北海道大学病院 | 内科Ⅱ | 渥美 達也 |
埼玉医科大学総合医療センター | リウマチ・膠原病内科 | 天野 宏一 |
慶應義塾大学病院 | リウマチ内科 | 鈴木 勝也 |
順天堂大学医学部附属順天堂医院 | 膠原病・リウマチ内科 | 田村 直人 |
東京女子医科大学病院 | 腎臓内科 膠原病リウマチ内科 |
唐澤 一徳 勝又 康弘 |
聖マリアンナ医科大学病院 | リウマチ膠原病アレルギー内科 | 川畑 仁人 |
岡山大学病院 | 腎臓・糖尿病・内分泌内科 | 松本 佳則 |
香川大学医学部附属病院 | 膠原病・リウマチ内科 | 土橋 浩章 |
産業医科大学病院 | 膠原病リウマチ内科・内分泌代謝糖尿病内科 | 田中 良哉 |
杏林大学医学部付属病院 | 腎臓・リウマチ膠原病内科 | 駒形 嘉紀 |
東北大学病院 | リウマチ膠原病内科 | 石井 智徳 |
独立行政法人国立病院機構東京医療センター | リウマチ膠原病内科 | 岡野 裕 |
広島大学病院 | リウマチ・膠原病科 | 平田 信太郎 |
九州大学病院 | 免疫・膠原病・感染症内科 | 新納 宏昭 |
和歌山県立医科大学附属病院 | リウマチ・膠原病科 | 藏本 伸生 |
島根大学医学部附属病院 | 膠原病内科 | 村川 洋子 |
藤田医科大学病院 | 腎臓内科 | 坪井 直毅 |
名古屋市立大学病院 | リウマチ膠原病内科 | 難波 大夫 |
国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 | 腎センター内科・リウマチ膠原病科 | 星野 純一 |
難治性血管炎に関する調査研究のホームページ |
事務局aトシリズマブ医師主導治験事務局 |
電話:03-3353-8112 内線34325 |
Email:aavtcz.qa.be@twmu.ac.jp |
参加施設への電話あるいはメールでの直接のお問い合わせは、対応する者がおりませんのでご遠慮ください。
血管炎に対するトシリズマブ医師主導治験事務局へお問い合わせをお願い致します。
医師主導治験は製薬企業が計画しにくい領域の患者さんの治療方法を医師が主導して行われる治験です。
医師主導治験も企業治験と同様に国が定めた厳しい規則や基準の下で、参加される患者さんの安全と倫理面に十分配慮して行われます。
本治験は顕微鏡的多発血管炎および多発血管炎性肉芽腫症の診断・治療に精通した医師が計画・実施中の医師主導治験です。
医療機関名 | 担当診療科 | 責任医師名 |
---|---|---|
国立大学法人北海道大学病院 | 内科Ⅱ | 渥美 達也 |
埼玉医科大学総合医療センター | リウマチ・膠原病内科 | 天野 宏一 |
慶應義塾大学病院 | リウマチ内科 | 鈴木 勝也 |
順天堂大学医学部附属順天堂医院 | 膠原病・リウマチ内科 | 田村 直人 |
東京女子医科大学病院 | 腎臓内科 膠原病リウマチ内科 |
唐澤 一徳 勝又 康弘 |
聖マリアンナ医科大学病院 | リウマチ膠原病アレルギー内科 | 川畑 仁人 |
岡山大学病院 | 腎臓・糖尿病・内分泌内科 | 松本 佳則 |
香川大学医学部附属病院 | 膠原病・リウマチ内科 | 土橋 浩章 |
産業医科大学病院 | 膠原病リウマチ内科・内分泌代謝糖尿病内科 | 田中 良哉 |
杏林大学医学部付属病院 | 腎臓・リウマチ膠原病内科 | 駒形 嘉紀 |
東北大学病院 | リウマチ膠原病内科 | 石井 智徳 |
独立行政法人国立病院機構東京医療センター | リウマチ膠原病内科 | 岡野 裕 |
広島大学病院 | リウマチ・膠原病科 | 平田 信太郎 |
九州大学病院 | 免疫・膠原病・感染症内科 | 新納 宏昭 |
和歌山県立医科大学附属病院 | リウマチ・膠原病科 | 藏本 伸生 |
島根大学医学部附属病院 | 膠原病内科 | 村川 洋子 |
藤田医科大学病院 | 腎臓内科 | 坪井 直毅 |
名古屋市立大学病院 | リウマチ膠原病内科 | 難波 大夫 |
国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 | 腎センター内科・リウマチ膠原病科 | 星野 純一 |
トシリズマブは、インターロイキン6(IL-6)が作用するためのレセプター(IL-6受容体)に結合する抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体です。IL-6は、免疫を活性化し、炎症を引き起こす物質の一種で、IL-6がIL-6受容体に結合すると炎症が起こります。トシリズマブはこのIL-6が作用するためのIL-6受容体に結合して、IL-6の働きを阻害することで炎症を鎮める作用があります。
MPAやGPAで生じる炎症にも、IL-6が関与していることから、トシリズマブが炎症を鎮め病状を改善する効果が期待されます。また、このような効果により、一緒に使用する副腎皮質ステロイドの量を従来よりも減量できる可能性もあるため、副腎皮質ステロイドによる副作用を軽減できることが期待されます。
トシリズマブはアクテムラという商品名で2005年に日本で発売され、キャッスルマン病、関節リウマチおよび若年性特発性関節炎の治療薬として日常の診療で使われています。また、わが国では、2017年に、高安動脈炎や巨細胞性動脈炎の治療薬として使えるようになりました。点滴静注用製剤と皮下注用製剤がありますが、この治験では点滴静注用製剤を使用します。
シクロホスファミドは抗がん薬および免疫抑制薬に分類されるお薬で、DNAの複製を阻害することで腫瘍細胞や免疫に関わる細胞の増殖を抑制する働きがあります。
国内ではエンドキサンという商品名で1962年に発売され、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、肺がんなどの治療薬として長く使用されてきました。しかし、悪性腫瘍だけでなく、リウマチ性疾患に対しても有効であることが以前から示されており、わが国では、2011年に治療抵抗性のリウマチ性疾患の治療薬として使えるようになり、現在、MPAおよびGPAを含む全身性血管炎、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎/皮膚筋炎などの治療薬として使用されています。経口薬と注射用製剤がありますが、この治験では注射用製剤を使用します。
アザチオプリンは免疫抑制薬に分類されるお薬で、免疫に関わる細胞のDNAの合成を阻害することでその増殖を抑え、免疫を抑制する作用があります。
国内ではイムランやアザニンという商品名で販売され、臓器移植後の拒絶反応抑制やクローン病、潰瘍性大腸炎の治療薬として使用されています。わが国では、2011年に治療抵抗性のリウマチ性疾患の治療薬として使えるようになり、現在、MPAおよびGPAを含む全身性血管炎、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎/皮膚筋炎などの治療薬として使用されています。このお薬は飲み薬で、この治験で使用するのはアザニンです。
この治験に参加している間に使われるお薬(トシリズマブ、シクロホスファミド、アザチオプリン)の費用はかかりません。その他の薬剤や検査・画像診断費用、基本診療費、入院治療費などに関する費用は通常の保険診療に基づいて費用が発生します。
ただし、検査のうち、この治験特有の検査の費用はかかりません。
今回治験に参加をお願いするのは、顕微鏡的多発血管炎(MPA)または多発血管炎性肉芽腫(GPA)と診断されている患者さんです。
MPAおよびGPAは、内臓の中の小さな血管に炎症が起こる病気です。どちらの病気でも、患者さんの血液中に抗好中球細胞質抗体(ANCA)が認められ、総称してANCA関連血管炎とも呼ばれます。
どちらの病気でも炎症に伴う発熱や体重減少などの全身症状が起こります。また、障害される臓器によってさまざまな症状がおこります。
MPAでは腎炎による血尿・タンパク尿・腎機能障害、末梢神経の炎症による腕や脚のしびれ・運動障害、紫斑などの皮膚症状、間質性肺炎や肺胞出血による咳・呼吸困難・血痰などの呼吸器症状が起こります。
また、GPAでは血管の炎症に加えて肉芽腫という病変が生じ、それによって鼻症状(血性または膿性の鼻汁、鼻粘膜の潰瘍、軟骨炎による鼻の変形)、眼症状(眼の痛み、視力低下、眼球突出)、耳症状(耳だれ、中耳炎、聴力低下)、呼吸器症状(血痰、咳、息苦しさ)が起こります。MPAと同じように腎炎による血尿、タンパク尿、腎機能障害が起こります。