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2019年06月08日スムーズな復職をサポート女性医師再研修プログラム
スムーズな復職をサポートする女子医大ならではの研修プログラム

 出産・子育てなどによって医療現場を離れたものの、再び現場に復帰したいと願う女性医師は少なくない。東京女子医科大学では、そうした女性医師のために研修プログラムを用意し、復職の実現を後押ししている。

女性医師(左)に付き従って総合診療科外来の診察に立ち会う山口あけみさん。
内科系外来での復職をめざしている。


■10年のブランクを経て復職を決意
 2017年6月28日(水)。東京女子医科大学病院総合外来センター1階にある総合診療科外来の診察室には、若い女性医師に付き従って患者さんの診察に立ち会うもう1人の女性医師がいた。医療現場への復帰をめざして研修を受けている山口あけみさんがその人だ。















診察に立ち会う山口あけみさん(右)
 山口さんは女子医大出身である。卒業後、血液内科での研修を経て女子医大附属膠原病リウマチ痛風センターに勤務。3年目に結婚し、夫がニューヨークへ赴任することになったため退職して同行。4人の子どもに恵まれ、育児に追われながら10年余りニューヨークで暮らし、今年1月に帰国した。この間、医療の現場からは遠ざかっていた。
 とはいえ、山口さんは帰国する2年前から復職へ向けてひそかに準備を進めていた。女子医大の女性医療人キャリア形成センターが提供している「教育・学習支援プログラム」(e-ラーニング)を、インターネットを通じて受講していたのである。このプログラムは、臨床基本や臨床実践など約100コンテンツで構成され、医療従事者であれば地域を問わず誰でも利用することができる。
 「帰国したら復職しよう」と考えていた山口さんだが、e-ラーニングを学ぶにつれ、10年間のブランクの大きさを痛感。そこで、帰国して一段落したら研修を受けようと決意し、女性医療人キャリア形成センターが運営している「女性医師再研修部門」を訪れた。そして、6月半ばから3か月間、毎週水曜日に総合診療科で研修することになったのである。
 内科系外来での復職を希望している山口さんは、「当初、どの診療科で研修を受けるか決めかねていました。総合診療科にしたのは、横田先生(下段の囲み記事参照)から『臨床現場を総括的にとらえることができ、活気もあって勘を取り戻すにはふさわしい診療科』というアドバイスをいただいたからです。患者さんを診るためにはたくさんの引き出しが求められますが、患者さんから学ぶこともたくさんあって、総合診療科にしてよかったと思っています」という。
 山口さんの末のお子さんはまだ3歳だが、「母が子育てを手伝ってくれています」とのこと。そして、「私が復職に向けてアクションを起こしたことを、母がとても喜んでいます」と、山口さんは笑顔をのぞかせた。

■まずは外来で現場感覚を取り戻す
 女性医療人キャリア形成センターの女性医師再研修部門では、「再研修̶復職プロジェクト」と「一般内科プロジェクト」の2つのプロジェクトを展開している。「再研修̶復職プロジェクト」は、日本赤十字社や済生会など外部組織とも協力しながら復職希望者からの相談や研修に対応。「一般内科プロジェクト」では、復
職希望が多い一般内科の診療スキルを身につけるための研修を提供している。
 研修はどちらも週1回・3か月間を基本としているが、その内容について女性医師再研修部門の副部門長を務める東京女子医科大学東医療センター内科の小川哲也准教授(血液浄化部部長)は次のように説明する。
 「まずは現場の感覚を取り戻すために外来での診療を見学していただきます。現場に慣れてきたら予診を行い、それを指導医にチェックしてもらったうえで診察に立ち会います。そして、次のステップとして実際に診察をしていただきます。もちろん、分からないことや困ったことがあれば指導医がフォローします。さらに、救急外来や病棟の回診に参加していただくことも可能です」。
 小川准教授は、こうした研修を通じてこれまで何人もの女性医師を指導してきた。その中の1人が小出純子さんである。
小川哲也准教授と小出純子さん
 川崎医科大学(岡山県倉敷市)出身の小出さんは、皮膚科医として都内の大学病院に勤務していたが、5年前、出産と同時に退職。それを機に、「これからは高齢化社会になるので内科をまんべんなく学んでみたい」と思うようになった。そうした受入先はないかとインターネットで調べていたところ、女性医師再研修部門の「一般内科プロジェクト」が目に止まり、コンタクトをとったという。
 子育てで1年半、医療現場を離れていた小出さんは、2014年3月から小川准教授のもとで研修を受けた。「研修プログラムはとても充実していて、貴重な3か月間を過ごすことができました」と振り返る小出さん。研修終了後はそのまま内科医として東医療センターに勤務することとなった。「最初の頃は戸惑うことばかりでしたが、先生方が親切に教えてくださり、何とか務めることができました」という。
 その後、小出さんは2人目のお子さんを出産し、2016年9月から育休に入っている。「育休が終わったら、また現場に復帰したいと思っています」と意欲を見せている。
 「再研修̶復職プロジェクト」に登録申請し、去る5月中旬から週1回、膠原病リウマチ痛風センターで研修を受けているのが山崎明子さんである。
山崎明子さん

 リウマチ専門医の資格を持つ山崎さんは、熊本大学医学部の出身で、卒業後4年間、北海道の病院に勤務したあと、久留米大学病院呼吸器・神経・膠原病内科で6年間、リウマチ患者さんを診てきた。現在は一般内科医として都内2か所のクリニックで診療活動を行っている。したがって、医療現場を離れているわけではない。
 山崎さんが膠原病リウマチ痛風センターでの研修を希望したのは、専門医資格更新に必要な症例を確保し、再びリウマチ患者さんの診療に携わりたいと思っているからにほかならない。
 「今はリウマチ患者さんを診ることはなく、リウマチ医としては7年間のブランクがあります。この間にリウマチ診療は大きく変わり、新しい薬も出てきています。そうした変化を知り、最新の治療法を吸収するために研修を希望しました」と山崎さんはいう。「女子医大の膠原病リウマチ痛風センターは、日本最大で世界的にも知られるリウマチ性疾患専門施設ですから、やはり研修のしがいがあります」とも。
 研修終了後もしばらくは一般内科医を続けるとのことだが、「近い将来、リウマチ医として再デビューを果たしたいですね」と山崎さんは意気込みを語った。

「Sincere(シンシア)」8号(2017年7月発行)