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2017年08月28日スマート治療室「Hyper SCOT」
手術の精度と安全性の向上をもたらすスマート治療室「Hyper SCOT」
 
これが近未来の手術室「Hyper SCOT」。開発の中心人物・村垣善浩教授(右)と岡本淳講師(左)。
これが近未来の手術室「Hyper SCOT」。開発の中心人物・村垣善浩教授(右)と岡本淳講師(左)。

 東京女子医科大学先端生命医科学研究所が開発を主導しているスマート治療室「Hyper SCOT(Smart Cyber Operating Theater)」。2016年6月に公開されたそのプロトタイプが話題を呼んでいる。
 Hyper SCOTは、MRIを中心にさまざまな機器(約20種類)をパッケージ化し、それらを相互に接続してネットワークを形成。これによって術中画像や手術器具の位置情報、患者の生体情報などを集約するとともに、手術の進行や患者の状態を統合的に把握することができる。また、手術をナビゲートしたり機器の稼働状況を監視したりすることにより、手術の精度や安全性の向上が期待できる。さらに、手術中に収集したさまざまな情報は、治療の改善につなげるための貴重なデータベースとなる。
 「内視鏡は、それを体の中に入れて診断したり治療したりする医療機器ですが、Hyper SCOTは治療室そのものが大きな医療機器であり、その中に人が入って診断治療を受けます」と村垣善浩教授はHyper SCOTの概念について説明する。
 Hyper SCOTの機器の中で目を引くのが、2つのロボットだ。1つは「術中コックピット」と呼ばれるロボットで、術者の腕の動きを支えるやわらかな曲線のアームは、手の震えや疲労の軽減をもたらす。もう1つは「ロボティック手術台」。これは、患者を術中MRIへ自動搬送できるシステムで、丸味を帯びたデザインが印象的だ。こうした点や、最先端の有機EL照明の採用、レーザーポインターや床デザインによって常に病巣が中心位置にセッティングできるシステムなどが評価され、Hyper SCOTは2016年度グッドデザイン賞を受賞した。
 今後、さらに新たな機器を接続し、2019年3月にはHyper SCOTを完成させて女子医大本院に導入し、実用化を進める計画である。村垣教授は、「ほとんど国産の機器や部品で構成されているSCOTはクオリティが高く、すでに海外からもいくつか引き合いがきています。日本の大きな輸出産業となるよう育てていきたいですね」と抱負を語る。女子医大発・日本発のビッグな医療機器が世界に広まっていくのも夢ではなさそうだ。
 
「Sincere(シンシア)」7号(2017年1月発行)