医学部ー外来患者付き添い実習ー

患者さんとの対話を通じて 医師への第一歩を踏みだす


猛暑を引きずりながらも秋の気配が感じられるようになった2013年10月初旬。
その日、東京女子医科大学病院の外来では、白のポロシャツにスラックス姿の若い女性が散見された。


 

    

<女子医大ならではの人間関係教育>

 医療は、医師と患者さんとのコミュニケーションから始まる。医師が温かい心をもち、患者さんだけでなくそのご家族とも心の通う人間関係を築くことが医療の第一歩となる。女子医大では、そうした人間関係をテーマとした「人間関係教育」を、20年以上も前から実践している。

 女子医大の人間関係教育は、「人として・医学生として・医師として・女性医師として、“慈しむこころの実践力”を養う」ことを目的とし、そのためのカリキュラムとして講義やワークショップ、実習などのプログラムが、1~6学年それぞれに組まれている。

 「人間関係教育は、学内のさまざまな専門分野のスタッフから成る人間関係教育委員会が運営しています。委員会は学年ごとに設けているわけではなく、一つの委員会のもとに1~6学年までを体系的にとらえたカリキュラムを構築しています。それが女子医大の人間関係教育の大きな特徴です」と、人間関係教育委員会の委員長を務めている齋藤加代子教授(附属遺伝子医療センター所長)は、1学年から6学年までの一貫教育体制を実現していることを強調する。


<患者さんの視点から医療を考える>
 
 別表は、人間関係教育における実習プログラムの内容である。昨秋、女子医大病院の外来で目にした白のポロシャツにスラックス姿の女性たちは、この中の「外来患者との医療対話」を実習していた2学年生だったのである。
 
 この実習は「外来患者付き添い実習」と称し、外来患者さんに付き添うことによって受診者側の視点から医療を考えることを主旨としている。受付から待合い、診察、検査、会計に至るまで患者さんと行動を共にし、外来における患者さんの一連の流れをご家族の立場に立って体験する。それによって実際の医療現場を観察し、医師の役割を理解しようというのが狙いである。

 人間関係教育委員会副委員長の岡田みどり教授(医学部化学教室)は、「この実習では学生が自ら患者さんとコミュニケーションを図っていかなければなりません。その意味で、将来患者さんと良好な人間関係を築くことができる医師になるためのスタートラインともなります。そうした機会はなるべく早い段階に設けるべきだとの考えから、2学年生を対象としています」と、低学年から実際の医療現場において体験実習を行うことの意義を説明する。

<実習後は医療人としての自覚も生まれる>

 
 学生たちはこの外来患者付き添い実習をどのように受け止めているのだろうか。齋藤教授は次のようにいう。「患者さんと身近に接しながら話をするという機会は、とても新鮮なようです。教員から教えられる講義と違って患者さんの生の声を聞くわけですから、医師となって医療に携わっていくという自覚も生まれてきます。自ずと目の輝きも違ってきて、実習後はだんだんと医療人の目になってきます」

 岡田教授は外来患者付き添い実習の効果について、「遠方からの患者さんや待ち時間が長かった患者さんに付き添った学生が、わざわざ女子医大病院に来られる理由を聞いて誇らしく思うというケースもあれば、ドクターがもっとやさしく患者さんに接すればいいのにと思う学生もいます。そうした患者さんの視点に立った体験を経ることによって、しだいに医師としての視点を持つようになります」と語る。
 このように、女子医大の学生は外来患者付き添い実習で患者さんと接することにより、医師への第一歩を踏みだすのである。