卒後臨床研修センターだより

さまざまな説明会やオリエンテーション、学会に参加する研修医たち。
貴重な体験報告や、臨場感あふれる行事の様子など月毎にお知らせします。

2018年2月号

自分自身の研修を振り返って、何ができたか、何を学んだか、将来どんな医師になりたいか

卒後臨床研修センター 2年次研修医 會澤美和

 初期研修も終盤に差し掛かっており、将来何科に進みたいかを考えると同時に、どのような医師になりたいかを再び考える時期となった。その時期に大学病院ではなく、他施設にて地域医療研修の1ヶ月を過ごしたことは大きかったと思う。普段は大学病院にて、重症な患者さんを受け持ち、事務仕事が多くバタバタした毎日を過ごしているが、地域医療の1ヶ月は全く違う1ヶ月となった。地域医療というと訪問診療というイメージが強く、私は訪問診療の見学をしたかったため、市中病院ではなく地域の診療所での研修を選択した。診療所は患者さんの玄関口であり、何か異常があった場合にはすぐにもう1つ上の段階の病院へ紹介するという連携スタイルを徹底していた。できる検査もレントゲン、心電図、エコー、内視鏡検査とスクリーニング目的の検査が中心だ。スクリーニング検査をして少しの異常を見つけたら、より詳しい検査ができる病院へと引き継ぐのだ。来院する患者さんたちはみんな院長先生を慕っており、親子や夫婦そろって2人で外来を受診する方や、病気のことだけでなく家族のことや色々な世間話まで先生に相談したり話を聞いてもらっており、先生を信頼していると感じた。院長先生は、介護保険のことや、その家の事情なども把握しており、また、患者さんによって話し方を変えたり、細かく説明をすることもあれば、わかりやすくさっと説明するなど患者さんを見て診療スタイルを変えていた。病気を見るのではなく、その人自身の人生をみているという言い方が合っているのかもしれない。 

 そして、生活保護の80代、90代のお年寄りも多く、高齢化している日本についても考えさせられた。訪問診療では、簡易宿泊所のたった2畳の空間に住んでいる在宅酸素療法をしているおじいさん、ベッドの上で寝たきりの100歳のおばあさんなど、さまざまなお家にお邪魔した。実際、大学病院ではその患者さんの生活にここまで深く関わることはないだろう。専門的な研究や、病気が集まるのは大学病院の特色でもあるが、最終的にこの高齢化社会の日本の医療を担うという意味では、地域で働く医師になるという選択肢も魅力的に思えた。 
 新専門医制度では、オールマイティの総合内科としての内科医師が求められている。高齢の患者さんや国民が求めているのは、この診療所のような玄関口である医師ではないだろうかとも思えたのだ。 
 私はまだ経験が浅く考えが足りないが、総合内科医になるために、このように地域の医師として、かかりつけ医として働く経験は、総合内科医に必要ではないかとも感じた。内科を目指す医師は統一した制度ができたが、自分がどのような医師として働きたいかの自覚を持っていないと、ただのローテートとなるのではないかという懸念も大きい。途中、立ち止まって自分がどうしたいのかを考えつつ、特に初期研修の地域医療研修を思い出したいと思う。

卒後臨床研修センター 2年次研修医 程 璐

 私は、日本に来てもうすぐ4年になる。2014年から書類審査、日本語診療能力試験などをクリアして、やっと2016年2月に日本医師国家試験の受験資格を得た。3月に国試結果が発表され、合格が分かった瞬間を今でも覚えており、その時に人生の一番難しいところを乗り越えたと思っていた。 
 2016年4月1日より初期研修医生活が始まった。大学時代から日本語を勉強し始めたが、実際に日本で暮らしたことはなく、聞き取りと話す能力は簡単な日常会話レベルしかできず、研修医生活は自分が思っていたより、もっと大変なものだった。
 最初に研修したのは救命救急センターで、その時の自分がどんなに頑張って集中しても、相手が話した内容の60%ぐらいしか分からなかった。初めての夜勤の時、救急隊からの情報を自分はちゃんと聞き取れるのか、聞き間違ったら大変ではないのかと、ソワソワしながらやっていた。臨床経験と知識の勉強以外にも、私にとって日本語を伸ばすことが一番重要だと思った。救命救急センターの3か月間は、この2年間の研修生活の中で一番辛かったかもしれないが、逆に日本語能力や、採血技術などを鍛えることができて、その後の研修生活にとても役に立った。 
その後の神経内科の3か月間もとても有意義だった。頭部CTとMRIの読み方、神経所見の取り方、脳梗塞の分類と治療などを勉強でき、胃管、ルーンバール、初回のCV挿入などの手技も神経内科で多くやらせていただいた。その時、日本に来て初めての誕生日に先生たちがサプライズを準備してくれ、心がとても暖かくなり日本に来てよかったと、改めて思っている。
 去年の10~12月は循環器内科で、すごく忙しく大変だったが、私の第一志望だったこともあり、一番楽しかったのもその時だった。心エコーのやり方、心電図から不整脈の起源を解析できたり、心不全の評価と治療、カテーテル、アブレーションも全てが面白く、今でも一番好きな診療科である。循環器内科の先生たちも凄く素敵だと思い入局も検討していたが、子供や家庭など将来を考えて、そのような忙しい生活を一生続けるのは、私にとっては難しいと思った。 
 今年10月には総合診療科をもう一度研修した。1年目に研修した時とは異なり、上申だけではなく、患者さんをどんな順番で見るのか、検査をする必要があるのか、どんな検査を入れるのかを先生たちに教えていただいた。初期研修が終わる前にこのような経験ができて、良かったと思っている。働いているうちに将来をどのように過ごしていきたいのかがだんだんと分かってきた。仕事以外に家庭も重要なので、仕事と家庭を両立できる診療科がいいと思っている。将来自分がどのような医師になれるか分からないが、初心を忘れずに、自分が選択した分野で頑張っていきたいと思う。

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