| 次世代型補助人工心臓エバハート |
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第4回 メディアセミナー 「次世代型補助人工心臓エバハート」 内科的治療の限界を超えた末期重症心不全症の治療において、優れた植込み型補助人工心臓が渇望されています。本邦で開発された次世代型補助人工心臓エバハートは、従来の拍動型と全く異なる作動原理の遠心ポンプで、(1)格段に小型で高効率である、(2)非常に静かで発熱や振動もない、(3)人工弁が不要で、血栓症・感染症が少ないと推測される、(4)長寿命である、(5)携帯性に優れている、(6)自宅療養、外来管理も可能、等の多くの利点を有しています。平成17年度よりエバハートの臨床治験が本邦において開始されました。 1.はじめに 心不全は心臓の収縮力が低下し、全身の臓器に必要な血液を充分拍出できない疾患で、日本人の死因の第2位を占めています。心不全の治療は、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、ベータ遮断薬、強心剤(カテコラミン・ジギタリス)等の薬物治療が行われます。しかし静注カテコラミン依存のNYHA IVの重症慢性心不全の場合、6ヶ月時点での死亡率は60〜80%と極めて予後不良です ※[1]。かかる末期重症心不全症は心臓移植の適応となりますが、世界的にも脳死下の臓器提供数は非常に限られています。そのため補助人工心臓を用いた長期循環補助療法が、心臓移植または自己心回復後離脱までのブリッジ使用を中心に使用されてきました。 2.補助人工心臓による治療 世界的に多く使用されてきた植込み型補助人工心臓は、ノバコア(ワールドハート社)とハートメイト(ソラテック社)の2機種で、いずれも2つの生体弁とポリウレタンの血液サックを持つ拍動型ポンプです。米国においてハートメイトを用いた心臓移植へのブリッジを前提としない最終治療手段としての治験の結果、植込み後1年時において、生存率は25%(薬物治療群)から52%へと大幅に改善しました※[2]。 3.エバハートの特徴 エバハートシステムは、体内に植え込まれる遠心ポンプ(420g)と、体外の携帯コントローラ(A4サイズ)からなります(図1)。遠心ポンプは直径40mmの羽根車をモータにより毎分約2000回転で駆動し、発生する遠心力により、血液を左室心尖部より吸引し人工血管を介して上行大動脈へ駆出します。エバハートは100mmHgの圧力で毎分10L/min以上 の送血能力を持ち、機能不全に陥った左心室を代行することができます。遠心ポンプは左季肋部に植え込まれ、駆動ケーブルが右腹壁の皮膚を貫通し体外の携帯コントローラに接続されます(図2)。滅菌された純水が遠心ポンプのモータ内部を還流し、回転軸受けの潤滑、血液シールの維持、モータの冷却を行い、ポンプ-コントローラ間を循環します。システムは充電式メインバッテリー2個と非常用バッテリーにより、連続10時間程度のバッテリー駆動が可能です。電源はバッテリーの他、通常の家庭用コンセントや、車のシガーライターにも直接接続することができます。装置装着患者さんはコントローラを携帯し電源管理を行えば、入浴はシャワーのみといった制限があるものの、ほぼ日常的な生活を行うことが可能です。 エバハートは従来の拍動型ポンプと比較して、(1)格段に小型でポンプ効率が高い。(2)作動音が非常に静かで、発熱や振動も無い。(3)人工弁が不要で、血栓塞栓症・感染症が少ないと推定される。(4)生体内で劣化しないチタン金属・ファインセラミックスで構成されるため長寿命である。等多くの利点を持っています。
図1.植込み型遠心ポンプエバハート:装置植込み患者さんは常時コントローラを携帯しなくてはならない制約があるものの、自宅における日常的な生活が可能となります。
図2.エバハートのシェーマ。遠心ポンプは駆動ケーブルで体外携帯コントローラと接続されます。ポンプとコントローラ間で滅菌水が循環し、ポンプのジャーナルベアリングの潤滑モータコイル・メカニカルシールの冷却を行います。 4.前臨床治験及び臨床治験計画 米国における前臨床試験では、18台の循環シュミレータを用いた1年間の長期耐久性試験において故障無く、動物実験では溶血やポンプ内血栓が無く10例以上の良好な長期慢性動物実験結果が得られました。様々な生物学的安全性試験・機械的安全性試験・電気的安全性試験も全てクリアしました。臨床治験は国際ハーモナイゼーションを想定し、日米ほぼ共通の治験プロトコールが制定され、本邦で先行して臨床治験が開始されました。まず2施設(東京女子医科大学・国立循環器病センター)で計3症例のパイロット治験を行い、1年生存率100%の良好な結果を得ました。これらの結果は外部委員で構成された効果安全性評価委員会で検討され、治験第2相の多施設本治験に移行することが決定されました。今回は、4施設(上記に加え大阪大学、埼玉医科大学)で計16人の患者さんに治験を行い、装置の効果、安全性を評価致します。 5.治験の対象患者さん 拡張型心筋症や虚血性心筋症等で、死亡の危険が高い下記に該当する患者さんが対象となります。
治療の効果・安全性を高めるために除外基準も定められています。装置植込み後は、3ヶ月・6ヶ月・12ヶ月時点での効果・安全性評価が行われ、自宅療養プログラムの適応が検討されることになっています。 6.おわりに 欧米において次世代型補助人工心臓が末期重症心不全症に応用され、一つの有力な治療手段として確立されつつあります。本邦においても次世代型補助人工心臓の臨床治験が開始されました。心臓移植の提供者が極めて限られ長期補助を余儀なくされる本邦においてこそ、退院可能で自宅療養を前提としたQOLの高い優れた植込み型補助人工心臓がその真価を発揮するものと期待されます。 *エバハート治験に関するお問い合わせは、東京女子医科大学 心臓血管外科 山嵜 健二(やまざき けんじ)、斎藤 聡 (さいとう さとし)まで |



