東京女子医科大学大学院
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  遺伝子医学分野

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概要
 2003年4月、ヒトゲノムの全配列が解読されたことがアメリカ、イギリス、日本、フランス、ドイツ、中国の6カ国の首脳により宣言され、ポストゲノム時代に突入した。ゲノム創薬、テーラーメイド医療など、新たな方向性を持ったゲノム研究が全世界的に展開されている。社会的にもゲノムへの関心はかつてない高まりを見せ、未来の中核的な産業の一部として重要な位置を占めると予測されている。これまでのゲノム研究で重要であった分子生物学、細胞生物学は引き続き重要な役割を果たすものの、さらに大きな役割を果たすと考えられているものは、数理人類遺伝学、ゲノム倫理学、遺伝子診断学、遺伝子治療学であり、先端生命医科学系専攻の遺伝子医学分野では、これらポストゲノムに必須の学問分野の教育・研究を行う。
スタッフ
 教授
 鎌谷直之
 教授
 齋藤加代子
 
 准教授
 横山昌幸
 准教授
 木村恒人
 
 准教授
 谷口敦夫
 准教授
 齋藤登
 
 准教授
 菅野仁
 准教授
 橋本しをり
 
 准教授
 岩崎直子
 講師
 松岡瑠美子
 
 講師
 中山正道
 講師
 川口鎮司
 
研究活動

1.高分子キャリアーを用いた薬物送達システム

 合成高分子を薬物や遺伝子の運搬体(キャリアー)として応用することで、標的部位に選択的に薬物を運搬し、副作用のない安全な薬物治療システムの確立を目的としている。
 親水性-疎水性などの不均質な構造をもつブロックコポリマーが、水中で自律的に会合した高分子ミセルのドラッグキャリアーとしての応用を検討している。高分子ミセルの粒径は非常に小さく(10〜100nm)、その分布もきわめて狭い。また、内核と外殻の明確な二層構造をもつために、外殻により生体との相互作用を通して体内動態・分布を決定し、内核には薬物を物理的あるいは化学的に封入することができる。ポリエチレングリコールを外殻にもつ抗ガン剤内包ミセルは、マウス皮下に移植した固形ガンに高い集積性を示し、優れた抗ガン活性を有することが明らかとなっている。現在、外殻を構成する高分子鎖を温度応答性にすることで、ある温度以上で選択的に薬物を放出する高分子ミセルシステムを開発中である。ガン局所ハイパーサーミアと併用することで、さらに高いガン選択的デリバリーが期待される。

2.ゲノムデータの遺伝統計学的解析による臨床応用

 ヒトゲノムは約30億個の塩基配列によりなりたっており、その約0.1%は個人個人により異なる。その違いが身長、体重、病気になりやすさ、薬剤による効果や副作用の出やすさ(これらを形質と呼ぶ)に関係している。遺伝子の違いと形質を結びつけるためには遺伝統計学の理論と、コンピュータプログラミングが必要である。我々は個人の遺伝子配列の違いをデータとして統計学を駆使し、コンピュータを利用して形質と配列の関係を解明する研究を行っている。形質と配列の関係を開明することにより薬剤開発の特許を取得したり(ゲノム創薬)、個人に最適の薬物治療をしたり(テーラーメイド医療)することが可能となっており、我々はその最先端を目指している。

3.遺伝性神経筋疾患の分子遺伝学的研究と治療法開発に向けての基礎的臨床的研究

筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症などの遺伝性神経筋疾患は小児期から重い障害を呈する難病である。これらの疾患の病因・病態を解明し、根本治療法開発の基盤を固める。具体的には以下の研究を行っている。
  1. 点変異を含む微小変異を効率的に検出するシステムの開発。
  2. 患者由来の骨格筋細胞の初代培養系と細胞株の樹立。
  3. 培養骨格筋細胞を用いた疾患治療法の開発
以上により、変異を効率的に同定し、患者由来の培養骨格筋細胞において、変異に応じて治療法を検討する。点変異に対しては、アミノグリコシド系抗生物質によるストップコドン乗り越え治療、その他の変異で、はウイルスベクターやポリマーを用いた遺伝子導入を行い、臨床応用を検討する。

4.包括的遺伝子医療に基づく病因・病態の解明

遺伝子情報を用い、生命の各ステージに沿って疾患を包括的に理解し、医療を行う包括的遺伝子医療から導き出された結果に基づき、疾患の成因・病態の解明し、治療法ならびに発症予防法の開発を行う。
  1. しばしば突然死を引き起こす肥大型心筋症などの、遺伝子診断と遺伝子異常による機能の変化とその治療法の開発
  2. Holt-Oram症候群、Noonan症候群、Marfan症候群、心室中隔欠損、心房中隔欠損、Fallot四徴など、心血管疾患における疾患遺伝子の同定、病態の解明とその治療法の開発
  3. 22q11.2欠失症候群、Williams症候群などの染色体微少欠失における表現型と欠失型の検討より、染色体欠失のメカニズムの解明と遺伝様式の解明

研究可能テーマ
1.遺伝統計学の理論と手法
 
今後、バイオインフォーマティックスが益々重要になってくる。テーラーメイド医療、疾患の原因の発見、ゲノム創薬のために大量のゲノムデータを分析する必要がある。そのため、バイオインフォーマティックスの中でも遺伝統計学の重要性が高まっている。それなしにはSNPの情報を分析する事はできない。しかし、このような手法に習熟した人材はほとんどいない。ゲノム情報から重要な情報を抽出する手法を完全に見につける事をめざす。
 
2.筋ジストロフィー症の遺伝子診断と遺伝子治療
 
筋ジストロフィー症の原因であるジストロフィンタンパク異常のタイプを精密に解析し、遺伝子診断による病状診断の精度を上げてより良きケアを実現する。また、正常のジストロフィンタンパク遺伝子を筋肉細胞に導入する遺伝子治療を目指した遺伝子ベクターシステムの構築を行う。
 
3.乳ガンの遺伝子診断
 
ガン遺伝子およびガン抑制遺伝子の診断を総合的に行い、個人の乳ガンのリスクを定量化することで患者個人別の必要とされる定期診断スケジュールを作成し、避けるべき環境因子を明確にする。
 
4.先天性心奇形疾患の遺伝子診断
 
患者の遺伝子と細胞から作り出される蛋白質の機能を比較することにより、先天的心奇形疾患の遺伝子配列と蛋白機能の両面から明らかにすることでより的確な治療法の確立を目指す。
 
5.合成遺伝子ベクターの分子設計
 
遺伝子を細胞に取り込んで遺伝情報を発現させる役目を担うベクターをウイルスではなく合成物で用いる例が注目を集めている。本研究は合成高分子をベースとし、遺伝子の細胞への取り込み、核への移動、RNAポリメラーゼによる転写の各段階を効率よく行うための精密高分子設計を行い、遺伝子治療で用いるより安全でより高性能なベクターの作成を行う。
 
6.高分子ミセル型ターゲティングシステム
 
疾病組織、臓器のみを選択的に治療する標的治療は先天的な治療法の重要な柱である。部位選択的な遺伝子の発現や薬物発現によって副作用を抑制して治療効果を劇的に向上させることが可能となる。本研究は高分子からなるミセル構造を用いることで固形ガンや炎症部位に選択的に遺伝子や薬物を送達(ターゲティング)することを行う。
 
7.ウイルスとバイオマテリアルとの相互性作用解析
 
重要な病原体であり、また遺伝子治療でのベクターとしても用いられるウイルスがどのような物理・化学的な性質を有して生体と相互作用するかという基礎的な側面はほとんど知られていない。本研究は様々なバイオマテリアルとの吸収・不活性化などの基礎的な相互作用を解析することにより、遺伝子のウイルスベクターの高性能化とウイルスの体外循環濾過法などの治療に役立てることを目的とする。
*テーマの内容・受け入れ人数については
PDFファイルをご覧ください→
研究可能テーマPDFファイル
大学院在校生の声
北村 豊

 個人の特性に応じた医療(オーダーメイド医療)の実現を夢見て研究しています。



原田(旧姓:龍口)百合子

 1999年東京女子医科大学医学部を卒業し,卒後研修を受けた後,2001年に本大学院先端生命医科学系専攻遺伝子医学分野へ入学しました。
 私は,22q11.2欠失症候群やWilliams症候群の患者を対象とした包括的遺伝子医療に携わっています。包括的遺伝子医療とは様々な分野の専門家を含んだ総合医療チームにより,表現型に関与する原因遺伝子の解明およびその症状の改善を含む治療,予防を目的とした医療です。
 私は22q11.2欠失症候群における包括的遺伝子医療についてまとめ,現在はWilliams症候群の欠失領域について研究中です。



八木 寿人

 私は早稲田大学・同大学院修士課程と生物学(主に分子生物学)を学び、2002年本大学院博士課程先端生命医科学系専攻遺伝子医学分野に入学しました。
 私の研究内容は、22q11.2欠失症候群やHolt-Oram症候群をはじめとする先天性心疾患の成因解明です。主に疾患候補遺伝子の遺伝子解析・機能解析を行っています。

<参考文献> Yagi, H. et al. Role of TBX1 in human del22q11.2 syndrome. Lancet. 362:1366-73. (2003)

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