腎移植

Renal transplanation

手術・成績

腎臓は骨盤の中(腸骨窩といわれるところ)に移植されます。くわしくは下の図を参考にしてください。原則として右側に移植しますが、場合によっては左側にも移植します。

  • 腎臓をこの場所に移植する理由

    • 腎臓を入れるスペースがある。
    • 腎臓の血管と吻合する動脈と静脈がある。
    • 移植腎の尿管と膀胱との距離が近い。

腎移植の問題点

  • 腎臓提供者の問題

    腎移植を受ける場合は腎臓を提供してくださる方(ドナー)が必須です。身内に提供していただく方がいない場合は献腎移植に頼らざるを得ませんが、日本の献腎移植の現状ではそう簡単には移植の機会はまわってきません。そのためわれわれはこの現状を踏まえてご家族にドナー候補がいる場合は、血液型が違っていたり、移植の上で難しい組み合わせであるリンパ球クロスマッチ陽性であったとしても移植可能となるように移植技術の改善を行ってきました。

  • 免疫抑制剤の問題

    移植することによって腎臓病から完全に解放されるわけではありません。常に免疫抑制剤を内服し拒絶反応の抑制をしなければいけません。また、移植後10年、20年経っても拒絶反応の抑制をするため免疫抑制剤の内服は永続的に行わなければいけません。そのため免疫抑制剤による合併症がどうしてもつきまといます。
    感染症や心血管合併症、糖尿病など様々な合併症が挙げられますが、われわれの豊富な経験から予防法、早期発見法、治療法が確立されてきています。さらに、複数の種類の免疫抑制剤を少量ずつ内服することにより、副作用を低減するようにしています。その他にも、われわれは免疫抑制剤の不要な腎移植の方法を現在開発中であり、近い将来実現されることが期待されています。
  • 手術、入院の問題

    腎移植を受ける場合は手術を受けることはさけて通れません。そのため手術に伴う危険性は非常に少ないのですがまったくないとはいえません。

手術実績・統計

これまでの当院で行われた生体腎移植における5年生着率は約90%です。
つまりわれわれの施設で腎移植した100人のうち90人の腎臓が5年以上働いていることになります。
さらに、最近10年間に移植を受けた方に限れば、5年生着率は95%以上とはるかによい値になっています。

生着率

腎移植の成績は一般的に生着率で表します。生着率とは、移植してからある一定期間機能している移植腎の割合を示します。例えば5年生着率が90%というのは、移植後5年以上移植腎が機能している人の割合が90%であることを表しています。100人移植した場合、90人の方が5年以上移植腎が働いていることを意味します。
生着率は腎移植された方を総合して表すこともできますが、生体腎移植、献腎移植、血液型不適合移植など移植の条件別に表すこともできます。その場合、生体腎移植で血液型がドナーと同じでHLA(白血球の血液型)が一致する場合、最も生着率がいいことがわかっています。しかし現在、免疫抑制剤の改良と移植後の治療が進歩したので血液型が違っていてもHLAがまったく一致していなくても、移植腎生着率は十分良好です。

東京女子医大泌尿器科での生着率、生存率

下に示したデータは1983年からの東京女子医大泌尿器科の腎移植患者さん全員のデータです。
この数年で免疫抑制剤や拒絶反応の治療法が大きく改善されたために、最近(2005~2015年)の腎移植に限ればその成績はそれ以前のデータと比較するとはるかによいものとなっています。

  • 生体腎移植における生着率と生存率
    (東京女子医大泌尿器科 1983~2015)

  • 献腎移植における生着率と生存率
    (東京女子医大泌尿器科 1983~2015)

[年度別]生体腎移植における生存率と生着率(東京女子医大泌尿器科 1983~2015)

  • 生着率

  • 生存率

[年度別]献腎移植における生存率と生着率(東京女子医大泌尿器科 1983~2015)

  • 生着率

  • 生存率

血液型不適合生体腎移植生着率

血液型不適合移植では、血液型が適合した移植と比べると最初やや生着率は悪いのですが、5年以上の生着率では変わりません。特に最近の5年間に移植された方の生着率は血液型適合移植とはまったく変わりません。

血液型(ABO)適合別 腎移植における生存率と生着率(東京女子医大泌尿器科 1983~2004)

  • 生着率

  • 生存率

血液型(ABO)適合別 腎移植における生存率と生着率(東京女子医大泌尿器科 2005~2015)

  • 生着率

  • 生存率

※生存率:腎機能が維持された患者さんの生存率

移植腎が働かなくなる原因

以下の原因によって移植後に再び透析に戻ることがあります。最も多い原因は慢性移植腎障害(慢性拒絶反応)によるものであり、現在、われわれは日夜その治療に取り組んでいます。

慢性移植腎障害 12.7%
移植腎腎炎 1.9%
死亡 4.5%
急性拒絶反応 1.6%
免疫抑制剤の腎障害 0.01%
その他 1.6%

慢性移植腎障害は、急性拒絶反応や薬剤性腎障害、糸球体腎炎などを除外した病変の総称であり、免疫学的要因(狭義の慢性拒絶反応)と非免疫学的要因に分けられます。非免疫学的要因として高血圧や動脈硬化、脂質異常症、移植腎特有の障害(糸球体高血圧や過剰濾過、移植腎の老化・高齢ドナーからの移植腎)などが挙げられます。
また、免疫抑制剤や移植後の食事制限緩和などの生活様式の変化により、移植後の高血圧や脂質異常症、糖尿病の悪化、肥満・体重増加/メタボリックシンドロームなどが引き起こされます。これらはお互いに影響し合い腎機能を悪化させるため、移植後の外来管理として生活習慣の是正、更には薬物介入による治療が必要となることがあります。