研修医・大学院生志望者の方へ

コンテンツ詳細内容

研究内容

当科の研究は、臨床から出てくる素朴な疑問を解決するものや基礎研究でも臨床の現場に密接に関連したものがほとんどです。具体的な例をお示しします。

アトピー性皮膚炎では皮膚の乾燥がなぜ起きるのでしょうか。研究の結果、アトピー性皮膚炎患者では炎症部のみならず、一見すると正常な皮膚でもセラミドという角層細胞間脂質が減少して皮膚のバリア機能が低下していることが分かりました。現在では、アトピー性皮膚炎でセラミドが減少する原因を調べるために、セラミドの代謝異常に関する研究を進めています。一方で、2歳までの乳幼児のアトピー性皮膚炎と健常児のバリア機能やセラミド量を比較することで、皮膚のバリア機能障害が先天的にあるのか、環境的な要因で生じたのかについての研究も進行しています。

尋常性乾癬という病気では、分子生物学的な研究の成果が治療薬として臨床応用される時代に入りました。当科でも、乾癬の角化性皮疹の形成に重要なサイトカイン、炎症細胞をひき寄せる接着分子の発現、肥厚する表皮の増殖因子とアポトーシスを調節する因子について研究を重ね、乾癬の病態の把握に重要な情報を提供しています。このほか、乾癬の関節症状について画像診断とQOLの評価、類縁疾患である掌蹠膿疱症の発症機序や治療の有効性に関する研究を進めており、患者さんのためにより良い治療の提供を目指しています。

また、尋常性痤瘡の毛孔にも角層の肥厚が生じて、毛孔が詰まり皮脂が毛包内に貯留しています(面皰(めんぽう))。そこで、乾癬の角化異常を是正するビタミンD3軟膏を塗ってみたらどうなるだろうと考えました。面皰のモデルマウスに、実際にビタミンD3軟膏を塗ってみると面皰が小さくなることが分かりました。現在は、その作用機序を調べながら、臨床応用の可能性を探っています。

皮膚線維腫という真皮に線維芽細胞や組織球が増殖してできる良性腫瘍では、表皮の基底層に色素沈着を生じます。なぜだろうかという素朴な疑問から研究を行い、その原因を解明しました。この研究は、現在、基底細胞癌や老人性色素斑、脂漏性角化症などの色素異常の研究に発展しています。

もう少し臨床的なものを取り上げてみましょう。痤瘡に化粧は禁忌とされていましたが患者さんのほとんどは化粧をしています。本当に化粧は悪化因子だろうか。こんな素朴な疑問から、実際に治療と並行して化粧指導を行い、「ニキビ患者への化粧は、ニキビ治療を妨げることなく、QOLを改善する」ことを証明しました。QOLの調査についてはアトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹などでも行い、日常の診療に生かしています。慢性蕁麻疹はありふれた病気ですが、毎日のように膨疹が出没し、強いかゆみを伴うため、患者さんの日常生活に大きな影響を及ぼす疾患です。夕方以降に発疹がでやすいため受診時には症状がないことが多く、患者さんの重症度を客観的に判定することが困難でした。我々の検討で、蕁麻疹で中心的な役割を担う肥満細胞から放出されるトリプターゼの血中濃度が、慢性蕁麻疹の活動期に上昇していることがわかり、蕁麻疹の経過との関連をさらに検討中です。また、胃潰瘍の原因として注目されているピロリ菌が慢性蕁麻疹、多形慢性痒疹などの一部の皮膚疾患でも関与することが指摘されていたことから、当科でも除菌治療の有効性について検討したところ、特に多形慢性痒疹での有効性を示唆する結果を認め、今後の治療に生かしていく予定です。

皮膚疾患は目に見えますが、その背後には多彩な現象が起きています。何が起きているのであろうかという素朴な疑問を解決するために、検討を行いまとめるには、大変な時間と労力、豊富な知識と多数の共同研究者の協力が必要です。しかし、その結果は永久に残るものであり、達成した時の満足感は他には代えがたいと思います。我々は大きな夢をもって皮膚科の研究に取り組みたい臨床医をサポートします。

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