バセドウ病

治療

治療の目的は血液中の過剰な甲状腺ホルモンを正常化することです。治療法には内科的治療、外科的治療、放射線治療の三つがあります。

  1. 内科的治療
    甲状腺ホルモンの合成や分泌を抑制する抗甲状腺剤を服用する方法です。
    抗甲状腺剤(メルカゾールやチウラジール)を1日3から6錠程度を服用します。通常、服用を開始してから1〜3 月後には血液中の甲状腺ホルモン濃度は正常範囲までに低下し、症状も改善します。
    その後は少しずつ服用する量を減らしてゆき、最終的には一日1〜2錠の抗甲状腺剤を維持量として服用し、TRAb が陰性になったことを確認したら服用を中止します。 通常は2年以上の服用が必要となります。
    抗甲状腺剤の副作用としてもっとも多いのは皮疹(薬疹)で数パーセントに見られます。ひどい場合には薬を変更したり中止する必要があります。また重大な副作用には血液中の白血球の数が極端に減る無顆粒球症があります。白血球が減少するために感染症に対する抵抗性が失われ、放置すると危険です。
    発熱や咽の痛み、あるいはリンパ腺が腫れるなど感染症の徴候が出現した場合にはすぐに薬を中止して医療施設で白血球検査を受ける必要があります。
    服薬を中止すれば通常は1から2週間で白血球の数は正常化します. これらの副作用は服薬を開始してから1から2月以内に見られることが大部分です。
    内科的治療の欠点としては治療期間が長いこと、副作用が比較的多いこと、服薬中止後の再発が多いことなどが挙げられます。なお甲状腺機能が亢進している間は脈拍や動悸、振えを軽減させるためにベータブロッカーとよばれる薬を使用するのが一般的です。またルゴール液などヨード剤もバセドウ病の治療に有効ですが、その効果は長続きしませんので手術前など特殊な場合にのみ短期間に使用されます。
  2. 外科的治療
    手術によって甲状腺の大部分を除去する方法です。1週間程度の入院が必要となります。 手術の前には甲状腺機能を正常化しておくことが必要です。この利点は術後すぐに甲状腺機能が正常化する点ですが、再発したり逆に甲状腺機能が低下する場合も起こり得ます。
  3. 放射線治療
    放射線をだすヨード(131I)を服用する方法です。 131I は甲状腺に取り込まれ、その放射線によって甲状腺組織を破壊して甲状腺ホルモンの分泌量を減らすことができます。
    服用後1から2ヶ月程度で甲状腺機能は正常化に向かいますが、そのあとに機能低下になることが少なくありません。
    この場合には一生甲状腺ホルモンを服用することが必要となります。 入院の必要はなく、副作用もありません。 ただし、妊娠中は使用できません。

治療法の選択

上に述べた治療法のどれを選択するかは甲状腺機能の程度、患者さんの年齢、希望、医療施設の設備や専門医の有無などを総合して決定します。通常はまず抗甲状腺剤を使用しますが、長期にわたって定期的に通院することが必要です。 また服薬を中止した場合に再発する例が30% 程度にみられます。

副作用によって抗甲状腺剤が使用できない場合には他の治療に切り替える必要があります。一般的には甲状腺腫が大きい場合には抗甲状腺剤で完治させることは困難ですので手術が勧められます。放射線治療は妊娠中、あるいは近い将来に妊娠を希望されている場合を除いて使用できます。