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  代用臓器学分野

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概要
 生体臓器の機能が低下、もしくは廃絶した患者に対し、臓器移植、あるいは人工臓器といった代用臓器が臨床の現場で広く利用されている。科学技術の進歩とともに、これら代用臓器の機能は飛躍的に向上している。代用臓器学分野では、これら既存の代用臓器を基本とし、最先端科学を駆使した新しい代用臓器の研究・開発に主眼をおいている。代用臓器学は「バイオマテリアル」、「組織・臓器移植」、「人工臓器」の3つの柱からなる。「バイオマテリアル」は、代用臓器を支える基本要素であり、生体・組織適合性材料をはじめ、すべての医用材料を対象としている。さらに、ドラッグデリバリーシステムやバイオセンサなどへのバイオマテリアルの新しい応用をも研究対象としている。「組織・臓器移植」では、人工臓器との相補・連携を基本と考え、移植免疫、免疫寛容、臓器保存、体外免疫調節などの基盤技術と先端科学との関わりを対象とする。さらに、移植情報や移植倫理に関する研究をも対象範囲としている。
スタッフ
 教授
 寺田慧
 教授
 峰島三千夫
 
 准教授
 菊池明彦
 講師
 秋山義勝
 
 助教
 小林純
   
 
研究活動

1.水系で生理活性物質の分離ができるクロマトグラフィーシステムの構築

 温度応答性高分子であるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PIPAAm)は水溶液中、32℃を境に低温で溶解、より高温で不溶化変化する。この性質を固体表面に導入し、さまざまな形状で固体表面に固定すると、この表面は温度変化に応答して低温で親水性(水となじむ)、高温で疎水性(水になじまない)性質を持つ。この性質を利用し、水系でステロイドやタンパク質などの生理活性物質を、温度変化のみで高効率に分離することのできる新しいクロマトグラフィー担体の設計を行っている。この手法は、従来の分離技術に比べきわめて少ないステップで生理活性物質の精製を可能とし、廃液処理に係わる環境への影響も小さいことに特徴がある。

2.再生医療を実現する新しい細胞培養皿の開発

 前述の温度応答性表面上に生体組織・臓器を構築する細胞を播種すると、細胞は体温(37℃)でこの表面に接着、増殖する。細胞培養している表面全体に細胞が増殖後、温度を20℃にすると表面に固定したPIPAAm分子が水和し、表面が親水性に変化する。この変化は培養細胞を増殖した形態を維持したまま剥離・回収することに利用できる。本研究では、さまざまな条件で温度応答性表面を調製し、その表面物性を解析するとともに、生理活性物質を固定し、培養細胞の機能を増強しうる機能性温度応答性表面の構築を目指している。これらの再生医療への応用は再生医工学分野のスタッフ・学生、ならびに学外の共同研究先の諸先生に提供し、臨床応用への可能性を評価していただいている。

3.機能性高分子ゲルによる生理活性タンパク放出制御デバイスの設計

 天然・あるいは合成高分子をマトリクスとするハイドロゲルを調製し、この中にタンパク質のような高分子量薬物を担持させ、体内で種々発生する信号を自ら検知し、その大きさを診断、必要量の薬物を放出するインテリジェント型薬物放出デバイスの調製を世界に先駆けて行い、これらの機能を探索している。

4.代謝系人工臓器による先端治療システムの構築

代謝系人工臓器、特に、次世代人工腎臓治療システムの構築を主眼においた、以下の研究テーマに着手している。
  1. パーベーパレーション技術を利用した新しい濾液再生型人工腎臓システムの開発
  2. 携帯型人工臓器を組み入れた、透析液再生型腹膜透析システムの開発
  3. 人工糸球体・尿細管による次世代型人工腎臓システムの構築
  4. マイクロリアクタ技術を基盤とした代謝系人工臓器の新しい展開
  5. 人工臓器治療における各種無侵襲モニタリングシステムの開発
  6. 在宅治療支援を目的とした人工臓器治療の完全自動化
  7. 自動制御型人工膵臓システム開発のための基礎的検討

研究可能テーマ
1.抗血栓性材料の分子設計とその発現機構の解析
 
親水性/疎水性の異なるブロックからなる合成高分子のコーティング表面はきわめて高い抗血栓性を示し、人工血管の内面のコーティング剤としてきわめて有効であることが明らかとなってきている。この表面での血小板の粘着抑制効果について、材料表面特性と細胞の代謝の関与から明らかにすることを目的とする。
 
2.生理活性物質の分離材料の開発
 
近年のバイオテクノロジーや遺伝子工学のめざましい進展の結果、医薬品として用いられる生理活性物質は多くなってきている。これらの医薬を、その機能を損なうことなく分離、分析するシステムの開発は急務である。本研究では、水中で外部刺激に応答して表面特性を変化させるクロマトグラフィー用担体の設計を行い、外的刺激により分離、分析を達成しうる新しい水系クロマトグラフィーシステムを開発することを目的とする。
 
3.細胞の識別、分離システムの構築
 
生体を構成する細胞は多岐にわたり、各細胞がさまざまな機能を発現して生体の恒常性を維持している。特定の細胞を識別し、分離することで細胞機能の基礎研究が行えると同時に、病態によっては不要な細胞の除去も必要になる。そこで本研究では、これらの細胞を識別、分離できるバイオマテリアルの構築を目指すことを目的とする。
 
4.培養細胞の脱着制御のためのバイオマテリアルの設計とその応用
 
種々の培養細胞組織を用いて新しい組織を構築することは、代用人工臓器開発に重要である。この場合、細胞を培養する基材の形状や表面性状はきわめて重要である。本研究では、培養細胞の、細胞−細胞接着を切断することなく、細胞機能を維持したままで細胞にきわめて低侵襲に脱着・回収することが可能な培養基材を形状や、表面性状に着目して開発することを目的とする。
 
5.刺激応答性ハイドロゲルの分子設計とDDSへの応用
 
外界の物理的、あるいは化学的刺激を自ら感知し、その構造や形態を可逆的に変化する高分子材料(インテリジェント材料)を用いて高含水のハイドロゲルを作製し、標的部位で特異的な外的刺激に応答して内包した薬物を放出、治療を達成、治療が完了した後は薬物放出を停止することのできる新しいインテリジェントDDSへの応用を検討する。
 
6.連続高効率型人工腎臓治療システムの開発
 
現用人工腎臓治療は技術的に確立されているが、その機能は生体腎臓にはるかに及ばず、患者は種々の合併症に苦しんでいる。これに対し次世代型人工腎臓治療として連続的かつ高効率なシステムの開発が不可欠となっている。携帯型人工腎臓治療や透析液再生型腹膜透析など、新しい人工腎臓治療システムの開発を目的とする。
 
7.人工糸球体/人工尿細管開発のための基礎研究
 
現用人工腎臓の機能は体内老廃物の除去ならびに電解質調整の一部を代行にすぎないが、選択性に乏しくアミノ酸やホルモンといった有用物質も除去してしまっている。また、生体腎臓のもつ代謝・内分泌機能は代替できず、患者は種々の合併症に悩まされている。患者由来の糸球体/尿細管細胞もしくは遺伝子導入により同様な機能を持つ代用細胞を用いたバイオ人工腎臓システムの開発をめざす。
 
8.ハイブリッド型肝補助装置の開発
 
劇症肝炎に対して血漿交換、血液透析濾過、活性炭吸着などの血液浄化療法がしばしば施行される。しかし治療効果が限定的かつ抵抗率ゆえ患者の救命率は低い。これを是正するためには代謝・解毒作用をもつ新しい肝補助装置の開発が不可欠である。培養肝細胞と既存の膜/吸着モジュールとを組み合わせたハイブリッド型人工肝補助システムを開発し、移植へのブリッジユースを目的とする。
 
9.完全自動制御型人工膵システムに関する研究
 
インスリン依存型糖尿病はその病態生理も解明され、治療方針も確立されているにもかかわらず、患者自己注入に代わる完全人工膵臓システムは未だ存在していない。この人工膵臓システムには血糖センサー、コンピューター、インスリン注入器を要するが、現用システムは種々の課題を有する。光センサー、マイクロマシン技術を利用した、低侵襲かつ携帯可能な完全自動制御型人工膵臓システムの開発をめざす。
 
10.人工臓器治療の自動化に関する開発
 
現用人工臓器治療の条件設定は医師の経験に基づいている。しかし、患者の病態やその変化に対応したきめの細かい治療を実現させるためには、各種モニタリング/自動診断/自動制御システムの構築が必要である。特に患者もしくは家族によってなされる在宅人工臓器治療においては、治療の自動化がならびに安全確保が不可欠である。
 
11.マイクロリアクタを利用した新しい人工臓器に関する研究
 
血液の体外循環を基本とした従来の人工臓器治療では治療の血流依存性/不連続性による低効率、体外循環に伴う感染、抗凝固剤などの副作用の問題が不可避である。一方代謝型人工臓器の対象疾患では、体内で生じる代謝反応の欠損にその病態が依存している。ミクロンオーダーのマイクロリアクタを開発し、カテーテル/内視鏡技術、マイクロカプセル化などの手法によって血管、腹腔、組織などに注入、浮遊、留置、埋没、放出できるような新しい発想の人工臓器を開発する。
*テーマの内容・受け入れ人数については
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大学院在校生の声
畠山 英之 畠山 英之

 私の在籍する研究室では、温度応答性高分子を表面に修飾した培養皿を用い、温度制御により培養細胞の接着/脱着を制御しうる技術を開発しました。この温度応答性培養皿を用いることで、細胞間の結合(構造的連結)や機能(細胞間コミュニケーション)を損なわずに、極めて非侵襲的に、培養細胞をシート状で回収することが可能となります。私達はこの技術を利用して、移植に必要な大きさの組織を再構築する新技術を創製し、次世代型組織工学の実現に向けて取り組んでいます。
 現在、私は「次世代型組織工学(細胞シート工学)に向けた温度応答性培養皿の高次機能化の検討」を博士論文テーマとして、岡野教授、菊池助教授、大和助教授の御指導の下、研究を行っています。生理活性物質を温度応答性培養皿に固定化することで、培養細胞の機能亢進、特定遺伝子の発現制御を実現するのが目的です。また、本研究テーマと並行して、東京女子医科大学・呼吸器外科の神埼医師とともに臨床治験に向けた細胞シート工学の応用を検討しています。現在手がけているこれらの研究が、将来の再生医療におけるひとつの方向性になることを願っています。
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