東京女子医科大学大学院
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  先端工学外科学分野

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概要
 「安全な外科手術というものは存在しません。だからこそ医療現場では,手術の安全性をどのように確保するかが問われ続けているのです。」
本研究室は、医療の安全を支援する技術を中心に研究開発を行っている。脳外科でみると、脳はちょうど絹ごし豆腐のように柔らかい非常にデリケートな臓器である。しかも場所によっては1 mmでも違うと異なる機能が存在するという微細な構造をもっている。脳の手術とは、もろくて複雑な臓器を手術することであり、手術の安全を確保し常に改善していくためには、外科医の系統的なトレーニングが必須なのは言うまでもない。さらに外科医を支援する新しい手術システムの開発が不可欠で、とりわけ、切除すべき場所、傷つけてはいけない場所を常時正確に識別し、安全にかつ正確に手術できるようにすることが重要となる。これらを実現するために、外科医の新しい目(術中オープンMRI、インテリジェント手術室、など)、新しい手(ロボット手術システム、ラジオサージェリーシステム、など)、新しい脳(戦略デスク、医療トレーサビリティー、イベントレコーディングシステム、E-ナイチンゲール、など)を医工連携とスピード、イノベーションの理念を基に産・官・学のスタッフと共同で研究開発をおこなっている。
スタッフ
 顧問
 高倉公朋
 教授
 伊関洋
 
 講師
 村垣善浩
 講師
 林基弘
 
 助教
 中村亮一
   
 
研究活動

1.脳腫瘍完全摘出システム(インテリジェント手術室)

 悪性脳腫瘍は従来の治療方法に抵抗性である。浸潤性の悪性神経膠腫をターゲットとし、患者の生存率とQOLを向上させるための新規治療システム開発を行っている。手術摘出率の向上を目指すため、腫瘍の位置情報を知らせる術中MRIやナビゲーションシステム、合併症予防のための神経モニタリングを開発した。また正確な摘出のための脳外科用ロボット開発が、現在進行中である。これら工学的手法を用いた客観的で精度の高い手術システムは、21世紀の外科の主流となりうる。

2.情報戦略誘導下手術システム(手術戦略デスク)

 これからの外科治療は、手術過程を術前・術中・術後まで管理し、患者を含めた病態をイベントレコーダ・イベントシミュレータで管理する、一貫したシステム治療に移行していく。これは、手術過程の解析による手術の標準化であり、高品質の医療を保証するリスクアセスメント・マネージメントシステムの構築でもある。これからの先端手術とは、手術戦略システムの管理下で、術前・術中のプランニングと手術デバイスの稼動状況をリアルタイムにモニタリングし、目標に向かうロードマップ(戦術)を最適化しながら、目的を達成することに他ならない。これらをコントロールするHead Quarterとなる手術戦略デスクシステムについての研究開発を行っている。戦略デスクの基盤技術として開発し、周術期患者の全身状態のシミュレーションを研究開発している。

3.新しい循環動態指標 “Wave Intensity” の非侵襲的測定法の開発とその臨床応用

 新たな循環動態指標としてのWave Intensity(WI)の性質を、我々は明らかにしてきた。WIからは、心収縮性を表す指標、拡張特性を表す指標、末梢からの反射波の影響(末梢抵抗の大きさ、狭窄が存在する場合その程度、位置、血管攣縮、血管の硬さ、などに関連)を表す指標、などを定義できる。したがって、病的心臓の動作状態、末梢循環(脳循環も含む)の病的状態、あるいはこれらの干渉の解析において、WIは他の指標にはみられない有用性を発揮することが期待される。  このWIを超音波法により非侵襲的に測定する方法を開発し、その臨床応用を展開中である。

4.ロボタイズドガンマナイフの遠隔患者モニタリングシステム

 東京女子医科大学では、Auto Positioning System(APS)を備えた最新のガンマナイフ、model C-APSを導入し、臨床応用を行っている。完全に自動化された精度0.1mmの正確な脳腫瘍治療は、安全性と正確性を備えた治療システムであるが、患者が長時間に渡り放射線治療室内に放置されることに関しての問題点については、現在あまり考慮されていない。さらに安全で信頼性の高い治療システムの構築を目指し、我々は高速ネットワークと最新モニタリングシステムを用い、遠隔で患者の画像・音声・バイタル情報を一元的に管理可能な遠隔モニタリングシステムの構築を現在行っている。
研究可能テーマ
1.増強現実に基づく低侵襲脳神経外科手術システム
 
外科領域では手術の侵襲性の最小化のために、狭い術野での操作を支援する手術ナビゲーション技術が重要視されている。基盤技術である増強現実(augmented reality:AR)は術者が現在の手術位置の確認や操作状況の把握を経験や勘に頼らず、一定精度で継続的かつ客観的に支援するリアルタイム総合情報を提供する。本研究ではこの増強現実を高度利用した脳神経外科領域の低侵襲手術システムを構築するとともに本システムを用いた手技の確立を目指す。
 
2.脳神経外科における手術戦略システム
 
手術計画と実際の手術経過の照合とそれに基づく手術の修正を二大ファンクションとする手術戦略システムは複雑化する脳神経外科手術成功の要である。本研究では術前の手術計画の立案、術中の断層情報可視化による進行状況の確認、ならびにその結果検出される問題に対する手術の修正を系統化・効率化する方法とそれを実現するソフト・ハードウェアを開発する。
 
3.手術リスクマネージメントのための手術フライトレコーダ・シュミレータ
 
手術における危機管理の効率化・最適化のためには術中の麻酔管理情報・患者生理情報(ウェラブル機器データ)と手術情報(術野映像データ)経時的デジタル情報として記録・保存するためのフライトレコーダが必要となる。また不測の問題発生に対する分析と評価のためには、フライトデータの蓄積に基づくフライトシミュレータシステムが不可欠である。本研究ではフライトレコーダならびにフライトシミュレータを開発し、手術過程を安全に導く技術の確立を図る。
 
4.MRIによる温熱療法下の体内温度分布の非侵襲画像計測
 
体温は生理的活動を反映する指標であり医療上の最も基礎的的かつ重要な計測量のひとつである。特に最近は加温・冷却を利用した治療(高温切除術、癌温熱療法、低体温手術、凍結療法)における患部付近温度分布の把握が不可欠となっている。本研究ではプロトン磁気共鳴(MRI)で観測される磁気共鳴周波数により温度分布を可視化する方法を開発・改良する。
 
5.インターベンショナルMRIにおける撮像条件の最適化
 
 各種の手術器具・装置と共棲しながら術中画像を提供するインターベンショナルMRIでは、電磁干渉や磁化した器具によるアーチファクトを低減するために通常のMRIとは異なる特殊な撮像条件が要求される。本研究ではこのようなインターベンショナルMRI特有の撮像条件の最適化指針の開発ならびにその指針に基づく画質の検討を行う。
 
6.インターベンショナルMRSI
 
 現在の手術監視・制御MRIでは形態・機能・温度の画像化が中心であるが、MRI信号の持つ情報を最大に利用して組織の生化学・生理・代謝の画像をも得るためには、分光学的な手法の適用が望まれる。本研究ではこのような次世代のインターベンションのための高速かつ高精度な磁気共鳴分光画像化法(MRSI)の開発と応用を検討する。
 
*テーマの内容・受け入れ人数については
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大学院在校生の声
西澤幸司西澤幸司

 私は日立製作所で手術用マニピュレータを開発しているエンジニアである一方,本大学院に所属する社会人学生です.ロボット技術を駆使した次世代の医療機器を開発し,現在の臨床の限界にブレークスルーを起こすことを目指しています.
 医療のように,特殊でプロフェッショナルな世界で通用する「道具」を作るためには,自らその世界に飛び込み,現場に埋もれた本質的な要求を理解することが重要だと考え,本学に入学しました.
 女子医大では術中MR撮像を可能にしたインテリジェント手術室が既に稼動しています.私は,この手術室のメリットを最大限に生かしつつ,さらに,人の手の動きを超える微細で低侵襲な手術を実現する為のマニピュレータ装置の研究・開発を進めています.


小澤 紀彦

 2003年4月に大学院へ入学し、伊関洋助教授・村垣善浩先生のご指導の下で、「術中オープンMRIにおける術中拡散テンソルナビゲーションシステムの開発」 をテーマに研究を行っています。(株)日立メディコから社会人入学しており、業務と研究を半々で行っています。会社では、MRIシステム本部に所属し、新機能開発及び画質評価・向上を担当しています。宜しくお願いします。
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