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| 大学院教授からのメッセージ |
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佐藤 幹二
内分泌疾患で最も多いのは、甲状腺と副甲状腺の病気です。
当大学院では、日常の診療の中で甲状腺や副甲状腺疾患の患者さんより得られた問題点を研究室に持ちかえり、患者さんの診断や新しい治療法の開発を目指しております。しかし、新しい治療法の開発には、その病態を克明に解明する必要があります。これまで、一貫してbed side よりclean ベンチへ、clean ベンチよりbed side へという方針で少しでも患者さんのためになるような研究を進めてまいりました。
当研究室の研究テーマは、患者さんを対象としておりますので、すべて倫理委員会の承認を受けているものばかりです。以下、患者さんより同意を得たうえで、現在進展中の研究テーマを主に紹介します。
また、大学院生には甲状腺専門医の資格を取得していただき、頚部エコーをマスターして、将来、甲状腺・副甲状腺疾患を迅速かつ的確に診断・治療していける臨床力のある専門医の育成を目指しております。 |
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| スタッフ |
佐藤幹二 病態治療学分野 大学院教授
木村寛也 病態治療学分野 大学院生(3年目)
中島貴志子 研究助手
山崎和子 研究補助員(金地病院 甲状腺研究所よりの出張) |
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| 研究活動 |
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| A) |
原発性および続発性副甲状腺機能亢進症患者より得られた副甲状腺細胞の増殖機構に関する基礎的研究 |
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(平成15年11月26日, 倫理委員会承認番号439,) |
副甲状腺細胞は、低カルシウム血症や高リン血症があると増殖する性質があります。そこで、原発性および続発性副甲状腺機能亢進症のため副甲状腺摘出術を受けた患者さんの副甲状腺腫を小切片にしてコラーゲンゲル上に浮遊したまま培養する器官培養系を確立しました。 そして、高リン濃度の培養液で培養した場合に、長期間にわたり細胞増殖と副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌が刺激されることを確認しました1)。つまり腎透析を受けている患者の病態をin vitro で再現できたことになります。これらのmicroarrayで解析した副甲状腺の全遺伝子はNIHのGene Expression Omnibusに登録済みです(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/query/acc.cgi?acc=GSE11423)。
現在、さらにヒトの全遺伝子を解析できるmicroarray を用いて、原発性と続発性副甲状腺機能亢進症がどのように違っているのかを比較検討中です。 |
| B) |
自己免疫性甲状腺疾患の成因に関する基礎的研究 |
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(平成16年6月16日、倫理委員会承認番号710)) |
当研究室では、バセドウ病のため当院で甲状腺亜全摘術を受けた患者さんより得られた甲状腺より、血中濃度のTSH(0.4-4μU/ml)でT3,T4を分泌する甲状腺濾胞の浮遊培養系を確立しております2)。
このバイオアッセイ系を用い、これまでTSHやバセドウ病IgGにより血管内皮細胞増殖因子(VEGF)が増殖し、その結果、バセドウ病では甲状腺内の血流量が増加することを見出しております。ところで、甲状腺内の血流量は大量の無機ヨードにより減少することが知られていましたが、この成因としてVEGF系の遺伝子が減少するためであることを見出しました3)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/query/acc.cgi?acc=GSE12244)。これは、内分泌外科医が慣習的に行っていた手技(バセドウ病の術前にヨードを大量に投与すると出血量が少なくなる)が正しいことを遺伝子レベルで立証したことになり、内分泌外科医より高い評価を受けております。
亜急性甲状腺炎は、ウイルス感染症であるとされておりますが、現在まで特定のウイルスは見出されておりません。そこで、ウイルス感染モデルである2本鎖RNAを上記のヒト甲状腺濾胞の浮遊培養系に添加し、microarray にて解析したところ、type I interferon 系が直ちに活性化され、長期間培養するとMHC class I 抗原が誘導されて、破壊性甲状腺炎が起こりうることを見出しました4)。
つまり、どのようなウイルスであれ細胞内に侵入すると2本鎖RNAが合成されるので、特定のウイルスでなくとも、亜急性甲状腺炎は発症することになります(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/query/acc.cgi?acc=GSE12154)。 |
| C) |
甲状腺ホルモン過剰症(バセドウ病、亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎)の成因、治療に対する反応性、薬剤に対する副作用に関与している遺伝子解析 |
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(平成16年1月16日、倫理委員会遺伝子解析 承認番号61) |
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自己免疫疾患であるバセドウ病には、免疫抑制的に作用するCTLA-4遺伝子多型が関与していることが知られております。そこで、承諾書の得られたバセドウ病患者415例のexon1 のA/Gの遺伝子多型を解析したところ、バセドウ病患者では対照群に比較し、明らかにGG型が多いことを確認しました。さらにGG型は内科的治療に反応しにくい場合が多く、131I治療になる症例が多いことが判明しました5)。したがって、将来的には、抗甲状腺剤を2−3年以上内服してもバセドウ病が自然寛解しない場合には、CTLA4遺伝子多型を解析し、GG型である場合には放射線療法を早期に薦めるのが良いと考えております。 |
| D) |
副甲状腺ホルモン不足のため低カルシウム血症を呈している患者におけるカルシウム感知受容体の遺伝子解析 |
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(平成14年4月16日, 倫理委員会遺伝子解析 承認番号26) |
当科には、15例のPTH欠乏性の副甲状腺機能低下症が通院中です。
大部分は自己免疫性や術後性のものですが、カルシウム感知受容体(CaSR)の突然変異によるものを2例見出しております。前者と後者では治療法も大いに異なるためCaSRの遺伝子解析により鑑別診断を明確にしておく必要があります。現在、2症例に見出された遺伝子異常がCaSRのgain of function mutation であることを検討中です6)。 |
| E) |
バセドウ病術後の副甲状腺機能低下症および開復術後の癒着性イレウスによる消化吸収障害により、活性型ビタミンDを大量に内服しているにもかかわらず、著しい低カルシウム血症が持続している1患者に対するビタミンDの筋注療法 |
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(平成19年10月23日、倫理委員会承認番号1197) |
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現在、ビタミンD3筋注用製剤(スイスの製薬会社より個人的に購入)を2ヶ月ごとに30万単位筋注すると、血清カルシウム値も8mg/dl台に落ち着き、テタニーなどの低Ca血症も消失しており、大量筋注療法が奏効しております。向後1年ほど経過をみてVD3の維持量が決まった時点で、新しい治療法として症例報告の予定です。 |
| F) |
甲状腺癌および副甲状腺癌の細胞株の樹立 |
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(平成16年1月26日、倫理委員会承認番号469,) |
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これまで、ヒトの副甲状腺のcell line は樹立されておりません。そこで副甲状腺癌の患者3名より得られた副甲状腺癌の細胞株の樹立を数年来、試みておりますが、2年ほど培養すると増殖傾向がなくなってしまうので、この世界初の仕事は難渋しております。 |
| G) |
家族性高カルシウム血症の一家系におけるカルシウム感知受容体の研究 |
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(平成13年12月21日、倫理委員会遺伝子解析承認番号13)(終了)。 |
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ご家族3名より承諾書をいただき、CaSR のcoding regionを検討しましたが異常は認められず、CaSR以外の遺伝子異常ではないかと推測しております。 |
| H) |
添付書どおりにpovidone-iodine gargle (イソジンガーグル)で含嗽をしたときの尿中ヨード排泄量の検討 (終了)。 |
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(平成18年3月20日、倫理委員会承認番号862) |
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ヨードを大量に含むイソジンガーグルで含嗽をしすぎてヨード誘発性の甲状腺機能低下症を生じた1症例を経験しました。これまで添付書どおりにイソジンガーグルで一日3回含嗽をしたときの尿中ヨード排泄量は不明でしたので、volunteerを20名ほど募り、尿中ヨード排泄量を検討したところ4.6 ±・2.1mg/day でした。したがって、一日数mgものヨードを摂取していると一部のものでは、ヨード誘発性の甲状腺機能低下症になることが明らかになりました7)。 |
参考文献
| 1) |
Nakajima N, Umino K, Azuma Y, Kosaka K, Takano T, Obara T, Sato K.
Prolonged Stimulation by Phosphate of Parathyroid Cell Proliferation and PTH
release in Organ Cultures Obtained from Patients with Primary and Secondary
Hyperparathyroidism(J Bone Miner Metab, in press,2008) |
| 2) |
Sato K, Yamazaki K, Yamada E. DNA Microarray Analysis of Effects of TSH,
Iodide, Cytokines and Therapeutic Agents on Gene Expression in Cultured Human Thyroid
Follicles. In : Genomics in Endocrinology:DNA Microarray Analysis in Endocrine Health
and Diseases (Comtemporary Endocrinology) Handwerger S, Bruce A, editor p.207-218,
Humana Press, December, 2007 |
| 3) |
Yamada E, Yamazaki K, Takano K, Obara T, Sato K
Iodide inhibits vascular endothelial growth factor (VEGF)-A expression in
cultured human thyroid follicles: a microarray search for effects of TSH and
iodide on angiogenesis factors. Thyroid 16:545-555, 2006. |
| 4) |
Yamazaki K, Suzuki K, Emiko Yamada E, Yamada T, Takeshita F, Matsumoto M,
Mitsuhashi T, Obara T, Takano K, Sato K, Suppression of iodide uptake and thyroid
hormone synthesis with stimulation of type I interferon system by double-stranded
RNA (dsRNA) in cultured human thyroid follicles. Endocrinology 48:3226-
3235, 2007. |
| 5) |
Kimura H, Kato Y, Shimizu S, Takano K, Sato K.
The Polymorphism at Position 49 in Exon 1 of CTLA-4 Gene is associated with
Graves’ disease refractory to medical treatment but not with amiodarone-
associated thyroid dysfunction. Submitted to Thyroid |
| 6) |
木村寛也ら。特発性副甲状腺機能低下症と診断されていた15例中に、新規に見
出されたCa感知受容体2症例の遺伝子解析 (#O2-05)。
日本内分泌学会雑誌 84(1)211、2008。 |
| 7) |
Sato K, Ohmori T, Shiratori K, Yamazaki K, Yamada E, Kimura H, Takano K
Povidone iodine-induced overt hypothyroidism in a patient with prolonged
habitual gargling : Urinary excretion of iodide after gargling in normal
subjects. Intern Med 46(7):391-395, 2007. |
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| 大学院研究生の声 |

木村寛也
私は卒後、直ちに東京女子医大内分泌センター内科に入局致しました。その後、臨床医として様々な内分泌疾患を経験してまいりました。また、学会で症例報告を発表するなどの経験をしてまいりました。その過程において、様々な患者さんを診て疑問点を感じる日々が続きました。日常の臨床で疑問に持った点に関して、当研究室は基礎的研究を通して、臨床的に重要な問題を解決していく研究室です。私のテーマのひとつとして‘バセドウ病の成因と治療法に関する遺伝子解析’を行っております。最近、ようやく免疫抑制的に作用するCTLA4の遺伝子多型が、バセドウ病の治療法を選択する際にひとつの指標になることが判明しました5)。また、甲状腺エコーを中心に臨床医としての研鑽に勤めております。また、内分泌専門医や総合内科専門医などの資格を取得しており、将来は甲状腺専門医を取得する予定です。
当研究室は臨床経験での疑問を基礎的研究で解決し、その成果を臨床の場で生かしていけるような、実力のある甲状腺専門医を養成する素晴らしい環境の研究室であると思います。 |
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| 研究可能テーマ |
| 平成20−21年度科研費:研究題目「新規開発したヒト副甲状腺腫の器官培養系における細胞増殖および血管新生の制御機構」(課題番号#20591102)を中心に(B)(C)(D)(F)の仕事を完了する予定です。 |
*テーマの内容・受け入れ人数については
PDFファイルをご覧ください→ |
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| その他:循環器内科との共同研究 |
| 抗不整脈剤(amiodarone)に伴う甲状腺機能異常の診断と治療 |
| 当院には日本最大の循環器内科があり、重篤な不整脈に対する抗不整脈剤(amiodarone)を投与されている患者さんが数百名以上も通院しております。Amiodaroneには甲状腺細胞障害性があり(a)、そのため10%ほどの患者さんに破壊性の甲状腺炎が生じてくることがあります(type II amiodarone-induced thyrotoxicosis;AIT)。これまで、循環器内科の笠貫(元)主任教授、萩原誠久主任教授、志賀准教授らと共同で、ヨード摂取の多い本邦ではtype IIの AITが多いこと(b), type II AITが起こってもamiodarone は中止しなくとも良いこと、またtype IIAITは再発することもあるが、再発例では軽く経過する傾向があること(c)、バセドウ病などが合併したAIT(type I)の場合には、手術療法が著効することなどを報告しております(d)。 |
| a. |
Yamazaki K, Mitsuhashi M, Yamada E, Yamada T, Kosaka S, Takano K, Obara T,
Sato K. Amiodarone reversibly decreases sodium-iodide symporter mRNA
expression at therapeutic concentrations and induces antioxidant responses at
supraphysiological concentrations in cultured human thyroid follicles.
Thyroid 17: 1189-1200, 2007. |
| b. |
Sato K, Miyakawa M, Eto M, Inaba T, Matsuda N, Shiga T, Ohnishi S,
Kasanuki H. Clinical characteristics of amiodarone-induced
thyrotoxicosis and hypothyroidism in Japan. Endocrine J
46:443-451, 1999. |
| c. |
Sato K, Shiga T, Matsuda N, Onoda N, Takano K, Hagiwara N,
Kasanuki H. Mild and short recurrence of type II amiodarone-induced
thyrotoxicosis in three patients receiving amiodarone continuously for more
than 10 years. Endocr J 53:531-538, 2006 |
| d. |
Sato K, Omi Y, Kodama H, Obara T, Yamazaki K, Yamada E, Seki T,
Takano K, Shiga T, Kasanuki H. Differential diagnosis and appropriate
treatments of four thyrotoxic patients with Graves’ disease required to
take amiodarone due to life-threatening arrhythmia
Intern Med 47:757-762, 2008. |
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