トップページへ   支援室室長及び副室長からの挨拶   本事業の目的と概要   本事業を推進する各組織とそれぞれの役割   計画構想の概要、具体的な目標、期待される波及効果など   本事業の関連組織及び他大学の取組  
 
 


病児保育は平成3年にはわずか14施設でしたが、平成17年6月現在、全国における病児保育施設総数は474施設、1日当たりの病児保育受け入れ数は平均4.35人です。従いまして、全国における1日当たり病児保育受け入れ総数は約2000人と推定されます。病児保育施設は圧倒的な不足の状態で、「病気の子は親(母親)が見るのが当たり前」という現状を示しています。
平成16年度、17年度の(社団法人)日本女医会による「働く女性のための育児環境整備支援事業」による全国の一般保育園利用者2011人へのアンケート調査1)では、「病児保育を利用したことがある」回答は10.1%であり、「病児保育を利用したことがない」61.8%、「病児保育を知らない」が27.5%でした。一方、「居住している市町村に病児保育施設があったら利用したい」という回答は62.1%を示し、その理由は「子供の病気では仕事を急に休めない」が72.1%、「自宅で看病してくれる人がいない」が34.7%でした。病児保育施設の不足、病児保育の認知度の低さ、病児保育施設に対する理解度の不足が指摘されています。「病児保育を利用したことがある」という回答者は「今後も利用したい」という意見が86.8%を示し、病児保育の拡充によって、働く女性が安心して勤務を継続できる可能性を示唆しています。


現在、大学病院勤務の女性医学研究者(女性医師)は、出産後、子を保育所に預けて勤務を継続しています。病児保育を実施している保育所は、ほぼ皆無であり、子が37.5℃以上の発熱の場合に保育所から呼び出され、勤務途中に子を引き取りに行きます。母親である女性医学研究者が呼び出されることが多く、子の病気が治るまでの数日間は勤務を休まざるを得ません。平成15年度の(社団法人)日本女医会による「医師の労働環境と健康に関する調査」委員会による全国7大学医学部の卒業後11〜15年目の医師に対するアンケート調査2)(有効回答473名)では、子供を持つ女性医師が「勤務に当って育児で問題になったこと」(複数回答)であげた最大の問題は「子供の急病」(79.2%)であり、次に頻度が高かったものは「子供の感染症」(55.2%)と病児保育の対応領域であるものが大半でした。さらにその問題が起こった際の対応方法を尋ねたところ「自分が仕事を休んだ」と回答したものが73.2%と最多で、また12.1%は「自分が仕事を辞めた」と回答しています。「病児保育を利用した」と回答したものは4.3%に留まっています。同調査で休職経験があるとした女性医師は56.4%で同年代の男性が7.0%であるのに比較して非常に高い率であり、休職理由としては67.3%が「育児」でした。女性医師が「キャリア形成の障害」になると考えているものは「育児」(62.4%)「妊娠・出産」(44.9%)「子供の教育」(44.9%)であり、キャリア形成のために希望するものとしては「育児施設の充実」(63.4%)が最も高い結果となりました。研究者におけるキャリア形成に最も重要な時期である30歳代は、子育てにおいては、最も病気にかかりやすい乳児期から幼児期の子供を有する世代です。子供の看護のための休暇を取ることにより、研究が中断され研究自体が進展しないこと、研究が失敗すること、国内外の研究の競争に敗れること、研究指導者や同僚からの信頼を失うことなど、女性研究者(女性医師)は研究者(医師)として生きていくことを諦めざるを得ないことが現状です。女性医師の育成を理念としている本学でさえ、育児のために医学を断念する若手女性医師は多く、育児中の女性医師は無給となることが少なくありません。大学内の役職が上になるほど男性の割合が増加し、指導的立場の女性医師は例えば教授職では115人中27人(23.5%)に過ぎません。少子化社会において、安心して子供を産み育てることが出来る環境を整え、また子供の安全を守る環境を作ることは重要なことであり、一方で女性研究者をプロモートし、エンカレッジして、キャリアを積ませることは、即ち子育て中の女性研究者の育児環境整備支援を行うことです。


本事業では対象となる女性医師の子供達は、全て一般の保育所に所属しており、病気の時だけ、院内保育所の病児保育室で看護を受けることになります。病気が回復すれば、所属の一般保育所に戻ります。本学では大学病院という環境の利点を応用して、小児科医の協力によって、病児保育を安全に推進、拡充する条件を整えることが可能です。その意味で、本学だけでなく、他大学医学部、医科大学におけるモデルケースとして、保育士、看護師、小児科医師の深く関わる病児保育を開始し、充実させることが本事業における女性研究者支援の根幹であります。


認可保育所における保育士の定数は保育所の最低基準に基づいて0歳児は3対1(子供3人に保育士1人)、1〜2歳児は6対1、3歳児20対1、4歳以上が30対1となっています。これに対して、病児保育室の場合は、定員4人に対して職員2人が必要とされ、そのうち1人は看護師です。病児保育室では保育所の3.5倍の手厚い職員数のもとで保育されていることに留意することが必要です。通いなれた保育所とは異なる環境で、しかも病気をしている病児のケアを考えたとき、2対1保育によって病児の健康回復を早期に図り、一般保育所に戻れる体力を取り戻せる子供のための環境整備が必要です。また、看護師と保育士とが協力をして「保育看護」体制において保育を行うことが必須です。急性期におけるベッド上での保育、回復期における室内安静による保育等、子供の病状に対応した保育内容の実践が求められます。


東京女子医科大学では、院内保育所が既に存在し、主に看護師の子供達が保育されてきています。本学の事業計画として「女性医師育成のためのバックアップ」構想がでてきています。本事業の成功によって、同窓会との協力で本事業の継続が可能となります。本学の同窓会(至誠会)は、一般保育園としての「至誠会保育園」を設立した歴史を有しており、強い愛校心と若手同窓会員への支援の厚意を有する同窓生が多いです。


女性医師不足、優秀な人材育成の困難さが深刻になりつつあったため、過去数年間に「病児保育」「ワークシェア」「フレックスタイム制」の導入の企画、立案はあったものの、スタートアップ資金、推進する人材がない状態にあり、導入が出来ずに今日に至りました。この度の科学技術振興調整費の採択を受けた事により、不足していたスタートアップ資金、推進する人材が整い、本学において女性医師支援の第1段階としての女性医学研究者支援を開始できる状況が整いました。是非、本事業を成功させて科学技術振興調整費終了後の事業の発展につなげ、他大学、他医療機関へのモデルケースとして成果を共有していきたい。

参考資料
1) 働く女性のための育児環境整備支援事業平成16年度報告書:社団法人 日本女医会
2) 卒後11〜15年目の医師の労働実態に関する調査結果報告書:社団法人 日本女医会
3) 働く女性のための育児環境整備支援事業平成17年度報告書:社団法人 日本女医会

 
 
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