乳房再建・乳頭乳輪の再建

乳房再建

女性にとっての美しさの象徴でもある乳房は、喪失により非常に大きな精神的苦痛を伴うものです。当教室においても、乳癌切除後の乳房再建は大きなテーマのひとつであり、患者様の要望に応じていくつかの手術方法を選択し治療を行っております。
手術方法は大きく分けて、

1)自家組織移植(他の部位から組織を移動する方法)により乳房を作るもの
2)シリコンなどでできた人工物を利用するもの
3)上記二つあるいは脂肪注入を組み合わせたもの

の3通りに分かれます。

1)自家組織による乳房再建

当教室で行っている主な自家組織移植による乳房再建は、①深下腹壁動脈穿通枝皮弁(または浅下腹壁動脈皮弁)、②広背筋皮弁、の2通りです。

①深下腹壁動脈穿通枝皮弁は従来行われていた腹直筋皮弁を改良したもので、お腹の皮膚、脂肪に血管をつけた組織を採取し、胸で血管吻合して移植する方法です。利点はボリュームの大きな乳房や下垂した乳房再建にも対応できる点で、皮膚の質感も胸部皮膚と馴染みやすく、柔らかい乳房を再現することができます。腹直筋皮弁の欠点である腹筋の犠牲を無くし、ヘルニアなど腹壁合併症を起こす危険性が少なくなっています。一方で欠点は長時間手術であり、組織壊死の可能性がある点、腹部に30~40cmの長い傷跡が残る点です。

②広背筋皮弁は背中の皮膚及び皮下組織を広背筋という筋肉を脇の下の血管をつけたまま胸に移動する手術法です。利点は、血管を切り離しせずそのまま移動できるので血行が安定している点、腹直筋皮弁と比較し手術時間が短い点、背中に15〜25cmほどの傷はつくものの人目につきにくい点です。欠点は広背筋皮弁は採取できる脂肪の量が限られている点で、乳房のボリュームの小さい方に向いています。

2)人工物(シリコンインプラント)による乳房再建

人工物とはシリコンインプラントとよばれるもので、2014年より保険適用となりました。まず、乳癌切除の手術と同時あるいは術後に、エキスパンダーというシリコン製組織拡張器を大胸筋の下に入れ、それを3ヶ月〜半年かけて少しずつ膨らませる(生理食塩水を注入する)ことで皮膚・筋肉の十分な伸展を図った後に、シリコンインプラントに入れ替える手技が一般的です。この方法の利点は、からだの他の部位に傷をつけずに乳房再建ができ、手術時間が短いとう点です。しかし、手術を2回要する点、人工物であるためにやや硬い触感と下垂した胸の表現が難しい点、破損・露出などの人工物特有の合併症リスクがあります。

3)上記二つあるいは脂肪注入を組み合わせたもの

自家組織での再建方法だけではボリュームが不足した場合にシリコンインプラントを併用したり、局所的にボリュームを増やしたり、形の修正に脂肪注入を併用する場合があります。脂肪注入はご自身の腹部や大腿部などから脂肪を採取して胸に移植を行います。利点は局所的なボリュームの調整ができ、触感も柔らかい点です。欠点は1回に移植する脂肪の量が限られている点、経時的に脂肪が吸収されてしまう可能性がある点です。

◆乳頭乳輪の再建

乳頭の再建には①反対側の乳頭の一部を移植する方法、②再建した乳房の皮膚を使用し立体的に組み立てる方法があります。

乳輪の再建には①反対側の乳輪の一部を移植する方法、②足の付け根の色の濃い皮膚を移植する方法、③medical tattoo(自費)で定期的に着色する方法があります。

乳頭乳輪再建術を希望されない方には一時的に装着する人工乳頭があります。温泉などではそのままお湯に入ることができ、取り外しが可能で繰り返し使用できます。複数のメーカーで扱っており、既製からオーダーメイドまであり費用は3〜10万円ほどかかります。