形成外科では、出生時より認める体表面の形態異常を中心に治療を行っています。
代 表疾患として、口唇・口蓋裂、耳介形成不全(小耳症など)、眼瞼下垂、胸郭変形(漏斗胸・鳩胸など)、臍ヘルニア(臍突出症)、手足の形成異常(多指症・ 合指症など)、外性器の形成異常など、多岐にわたります。疾患それぞれの中でも程度の差があり、手術法も異なる場合がありますが、一般的に頻度の高い疾患 を以下に紹介します。
口唇裂・口蓋裂
唇 のみの異常である口唇裂、歯茎に至る歯槽裂、唇から口蓋までおよぶ口唇口蓋裂など、程度はさまざまです。口唇裂は完全(鼻腔まで裂がある)・不完全(裂が 鼻腔までは至らない)にわけられ、さらに両側・片側の場合に分けられます。口蓋裂のある場合には口蓋床という、プレートの装着により哺乳力や口蓋の成長を 補助していきます。口唇・口蓋裂の治療は、言語治療や歯科矯正治療など、一人一人にあった長期的な治療をstep by stepで継続していく必要があり、形成外科のほか、各科専門医師、歯科医とのチーム医療になります。当院では形成外科が中心となって一貫した治療計画を 建てていきます。

唇裂・口蓋裂の治療は複数の科が連携しながら段階的なアプローチが必要です。必要に応じ、修正手術を追加することもあります。患者さまごとに適切な治療を提示していきます。
◆口唇裂手術
通常生後3-4ヶ月で手術を行います。粘膜、筋肉、皮膚を本来あるべき位置に修正し、縫合します。入院期間は約1週間です。
手術後数ヶ月たつと傷跡も落ちつき、きれいになります。
◆口蓋裂手術
口 蓋裂の手術は言語の発声や、嚥下機能を獲得するために重要です。口唇裂手術よりもやや大きい手術となるため、1歳くらいで手術を行うのが普通です。口蓋裂 の手術にはいくつかの方法がありますが、いずれも中央の裂を筋肉とともに閉鎖し、延長して言葉や飲食物が鼻へ抜けないようにすることが目的です。
患者さんの裂の型などにより手術方法を考えていきますが、極力上顎の成長を妨げない方法を選択します。入院期間は1週間前後です。口蓋裂手術前後は専門の言語聴覚士による経過観察を行いながら正常な言語発達が得られているか確認していきます。
◆歯科矯正
顎の矯正は乳歯列期後半より開始します。咬み合わせや歯並びを中心に経過観察していきます。必要により矯正装置をつけた治療を行います。全ての歯が永久歯となった段階で、正常咬合が完成すれば治療は完了です。
◆骨移植
歯科矯正と平行して必要に応じ、適切な時期に欠損した歯槽(上顎の骨)に骨の移植を行います。小学生の間に行うことが多く、腸骨(腰骨)より移植します。
2007年7月より、骨の生着率向上のため、骨移植に患者さんご自身の血液から多血小板血漿を作成して用いています(東京女子医大倫理委員会承認)。自分の血液で創を治癒促進させる多血小板血漿と骨を接着させるトロンビンを取り出し、移植することが可能です。
◆唇裂手術後の鼻、上口唇修正
成長に応じ、修正を行うことは唇裂・口蓋裂では特別なことではありません。われわれは可能な限り患者さんの希望に応じていきたいと考えています。
口唇・口蓋裂の治療では機能的・審美的に優れた結果を求められます。治療自体が長期にわたりますのでわからないこと、不安な点は何でもおききください。
手足の形成異常
指の数が多い多指症、指の癒合した合指症のほか、指の長さが短い短指、指の数が少なく、指間が深くなった裂手、指や手足のある部分で絞扼された絞扼輪症候群などがあります。手術によって機能的、整容的な改善を図っていきます。
耳介形成不全
埋没耳や小耳症、折れ耳など形態により分類されています。軽度の変形では生後すぐからの装具により矯正可能なこともありますが、基本的には手術療法が主体です。小耳症では肋軟骨の移植を含めた段階的な手術を行うのが一般的です。
◆埋没耳
埋 没耳とは、耳介の上半分が側頭部の皮下に埋もれた状態のことをいいます。指でつまんで引っ張り上げると耳介は出てきますが、指を離すと元に戻ってしまいま す。耳介上半分(とくに耳輪部)の軟骨が折りたたまれた変形があることが多く、まれに軟骨の形成不全を伴うことがあります。聴力への影響はありませんが、 将来マスクのゴムや眼鏡がかけられないため、学校での活動や学業に支障を来すことが考えられます。
発生頻度は1000出生に2,3人程度発症する先天性耳介異常の中では多い疾患です。原因としては耳介後面にある筋肉の異常によるとする説がありますが、詳細はわかっていません。
治 療法としては矯正治療と手術療法があります。1歳前後のお子さんでまだ軟骨が軟らかい状態であれば、矯正治療が可能です。熱可塑性プラスチックを使って、 耳介の上半分を引っ張り出した状態で固定します。数ヶ月で元に戻らなくなります。ただし、軟骨の形成不全や癒着が強い方は十分矯正できません。
軟骨が硬くなってきた3,4歳前後のお子さんで、矯正治療で効果がない場合は手術をお薦めします。軟骨の癒着をはがしたり、皮膚を移動したりして、軟骨が埋もれないように固定します。
先天性眼瞼下垂
生 まれつき左右いずれか、もしくは両方の眼瞼が下垂し、瞳に覆い被さったようになった状態になっています。眼をあける筋肉のひとつが機能していないことが原 因ですが、下垂の程度が人によって違いますので、手術法も幾とおりかあります。その他に小児期に行う眼瞼の手術としては先天性の眼瞼内反症などがありま す。
その他の先天性顔面の形成不全
生まれつき、左右どちらかの骨格に低形成がある、「Hemifacial Microsomia」のほか、先天性顔面神経麻痺などがあります。
Hemifacial Microsomiaでは矯正歯科医との連携により、シュミレーションモデルを用いた骨延長も応用しています。