がんの手術後の変形

再建外科

当 科においては、がん手術後のみならず外傷(やけどや交通事故など)後や先天異常などにより生じた組織欠損、機能障害、変形などに対して外科的治療を行って います。その多くは、他の部位から組織を移動することにより修復するものであり、このような外科を再建外科とよんでいます。
当 科で取り扱う組織は、皮膚、脂肪、筋肉、腱、神経、骨、軟骨、腸管など多岐に亘り、必要に応じて障害された部位に移動します。移動の方法はいくつかありま すが、当科では顕微鏡下で血管吻合を行うことで、血流を保ちながら組織を移動するマイクロサージャリーの技術があり、必要な組織を必要な分だけ移動するこ とが可能です。
再建外科の手術は、失われた機能を再獲得するためばかりでなく、醜状変形に対して整容的改善を目的としたものもあります。東京女子医科大学形成外科で行っている主な再建外科の内容は以下の通りであります。

頭頚部再建
頭頚部がん(舌がん、咽頭がん、上顎洞がんなど)切除後に生じた欠損部分の修復。
乳房再建
女性にとっての美しさの象徴でもある乳房は、喪失により非常に大きな精神的苦痛を伴うものです。当教室においても、乳癌切除後の乳房再建は大きなテーマのひとつであり、患者様の要望に応じていくつかの手術方法を選択し治療を行っております。
手術方法は大きく分けて、
  1. 人工物を利用するもの
  2. 自家組織移植(他の部位から組織を移動する方法)により乳房を作るもの
  3. その二つを組み合わせたもの
の3通りに分かれます。

乳 癌切除の際に失われるものとしては、乳腺、脂肪組織、胸の筋肉などの軟らかい組織(軟部組織)と乳房皮膚(乳首や乳輪なども含みます)です。人工物とはマ ンマプロテーゼとよばれるもので、胸の膨らみを再現するために、皮膚の下(実際は大胸筋という胸の筋肉の下に入れることが多い。)に挿入するものです。こ れは軟部組織の代わりにはなりますが、乳房皮膚が切除され皮膚に余裕がない場合は、形の良い乳房の形態は再現できません。そこで、エキスパンダーというシ リコンの袋を皮下に入れ、それを少しずつ膨らますことで皮膚の伸展を図った後に、プロテーゼを入れるのが一般的です。この方法の大きな利点は、からだの他 の部位に全く傷をつけずに乳房再建ができるという点です。しかし、人工物であるために、破損・露出などの人工物特有の合併症があります。

自 家組織移植による乳房再建は、軟部組織再建と皮膚再建を同時になし得る点が大きな利点です。また、自家組織により得られる乳房の質感は、マンマプロテーゼ による質感よりも優れています。一方で、自家組織移植においては、必ず組織を採ってきた場所での犠牲を伴うため、患者様個人個人の生活様式や将来を見据え て術式の選択を行います。現在、当教室で乳房再建に用いられている自家組織移植は、腹直筋皮弁、広背筋皮弁、大臀筋皮弁の3通りです。

広 背筋皮弁は背中の皮膚及び皮下組織を広背筋という筋肉をつけて移植する方法で、腋の下の血管を つけたまま胸に移動する手術法です。しかし広背筋皮弁は採取できる脂肪の量が限られているので、 組織欠損の少ない患者様やインプラントと組み合わせる再建法の一環として用いられます。

大臀筋皮弁は、比較的多くの脂肪組織の採取が可能ですが、一方で採取しうる皮膚の面積は制限されます。 また皮膚の性状が、胸部の皮膚と異なる点が欠点です。また、必ず顕微鏡下で血管吻合を行う遊離皮弁として移動する必要があります。

腹 直筋皮弁は、十分な皮膚・皮下組織を胸部に供給できる点が大きな特長です。腹部の皮膚は、背部、臀部の皮膚に比べ胸部皮膚と馴染みやすく、乳房皮膚として の違和感もあまりありません。また、脂肪がつきやすい中年以降の症例に対しては、お腹のシェープアップも同時にできる点でさらに有用性が高いと考えられま す。唯一の欠点は、お腹の筋肉を犠牲にするため、ヘルニアなどの腹壁合併症を起こす可能性があることです。当教室では、それらの欠点を克服するために、移 動に伴って採取する腹直筋の量を極端に減らし移植する方法で良好な乳房の形態を、少ない犠牲で移動することに成功しております。

熱傷後瘢痕拘縮に対する再建
頭頚部がん(舌がん、咽頭がん、上顎洞がんなど)切除後に生じた欠損部分の修復。
四肢再建
手・足の再建においては、整容的な面以上に、機能的な面を重視した再建手術が行われます。そのために、皮膚以外にも骨や筋肉や腱(すじ)な どの移植も行われます。
難治性潰瘍・褥瘡に対する皮膚再建
種々の原因でなかなか治らないきずに対しても、再建外科により皮膚を移動することで治すことができます。
顔面神経麻痺
顔 面神経は顔面の筋肉を支配する神経であり、これが麻痺することにより、目を閉じたり、口を閉じたりすることが困難になるばかりでなく、顔の表情が失われる ことになり整容的にも大きな障害となります。これに対しても、再建外科を行うことにより回復することができます。主に行われている手術は、背中の筋肉の一 部を神経、血管をつけて顔面に移植し、麻痺をしていない側の神経に繋げることにより、顔の表情を再現することができます。

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