小児診療の明日 『治らない』から『治る』へ

永田 智 Satoru Nagata

「もの言わぬお子さんの頭のてっぺんからつま先まで見て、異常を見つけ、病気を診断し、治療する、もしくは治療できるところに振り分けること」が、小児科医の大切な役割です。加えて、大学病院は、先進医療の旗手として常に最先端の小児医療を展開していくという期待に応え、社会に至誠を尽くす小児科医を育成する責務を担っています。私たち大学病院の小児科が、このような社会のニーズにお応えしていくためには、専門の境界を超えて広く患者さんの訴えを理解し綿密な診察のもと鑑別診断ができる一般小児科医(ジェネラリストと呼びます)と深く専門領域を知り常に最新の知識を得て確定診断・治療を行うことができる専門医(スペシャリスト)の両者を育成し備えていくことが大切と考えます。

本学の小児科は1931年以来、実に84年の歴史があります。1967年7月からは故・福山幸夫先生が2代目主任教授となられ、小児神経学を中心とした研究、診療、教育に26年余りに亘って情熱を傾けられ、小児神経学のレベルを世界的水準にまで引き上げられました。 その後を受け、大澤真木子・現名誉教授が1994年4月より主任教授に就任され、これまでの流れを一層発展させる一方、大学の理念「至誠と愛」に基づき、「先進的、全人的かつ安全な医療の追求を通じ、世の人の健康に貢献するひとを育成する」というビジョンの下、包括的医療をめざした医療人育成に心血を注がれました。小国弘量教授が世にその名を知らしめた「てんかん」診療の分野においては、全国からその教えを乞わんと大勢の研修生を迎えるにいたっています。

当方が教室に赴任した2013年から、病棟の診療グループに専門性を確立するため、神経総合、てんかん、ミオパチー、免疫・アレルギー・消化器、代謝・内分泌・糖尿病 の各診療班を明確に立ち上げ、効率的かつより広域な診療分野に対応できるようにと考えました。2015年度から、新たに「血液・腫瘍班」が新生し、当院脳神経外科・小児部門と連携して大いに活躍中です。

本学には、当科、循環器小児科、腎臓小児科、母子センター、小児外科、脳外科小児部門が統合して「小児総合医療センター(平成22年に当時の大澤主任教授のご尽力により発足)」が組織され、眼科、泌尿器科、整形外科、形成外科、耳鼻科、膠原病リウマチ痛風センター、糖尿病センターなど各診療科と綿密な連携をとり、適切な専門分野へスムーズにご紹介させていただきます。患者さんに最もよい医療を提供することを心がけていますので、どうぞお子さんの健康に関して(こころの健康も含めて)お困りのときは、ご紹介ください。

また、本院小児総合医療センターと東医療センター、八千代医療センター各小児診療部門と連携すると、全病床数270床以上の病床数を数え、関東近隣の国公立こども病院と比べても遜色のない規模を誇る小児センターが存在します。2014年度から開始された後期研修医用の新研修プログラムは、このセンターをローテートする画期的なものです。

当教室のこれからのコンセプトは、「『治らない』から『治る』へ」です。例えば、遺伝子に異常のある病気は、かつては診断されたらあとは「見守り」しかありませんでした。今後、教室として、こうした「治らないとされていた難病」に、「細胞治療」などの新しい治療を取り入れていく方針です。その他、「川崎病」の原因、世間を騒がせている「食物アレルギー」の寛解の鍵についても、ごく近い将来、私たちの手によって画期的な発表をする予定です。昨今、難病の治療戦略の一つとして腸内細菌叢の調節が注目されていますが、当教室では、従来のものとは比較にならない高精度の分子生物学的手法による腸内細菌叢の分析を行っており、この技術をもとに、「早産の予防」「肥満・生活習慣病の予防」「炎症性腸疾患の再発予防」「がんの予防」などきわめて新しい分野への挑戦を続けています。

小児医療に興味のある先生方、当科・当センターでは、幅広い小児診療に触れジェネラリストとして活躍することもできるし、スペシャリストとして一つの領域を掘り下げて留学などを経験しながら国際競争力のある診療や研究活動を展開していくこともできます。どうぞ一度見学にいらしてください。








Illustrated by Kouchiei