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センター便り 2018年2月

2018.2sentahdayori寒い冬です。朝、玄関を開けると、キンと冷え切った冷気が頬を刺します。スキー場の朝みたい、そんな寒さです。最近ではヒートテックなども開発されたので、日常生活では、それほど寒さを苦にすることはなくなりましたが、今から考えると、昔は本当に大変だったと思います。

「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。」徒然草の一節ですが、だからと言って十二単のように着物を重ね着していた時代は、それはそれは大変だったろうと思います。寒風を頬に感じながら、現代の技術に感謝!と思った次第です。

今回は、ヒトの違いについて書いてみたいと思います。

ヒトはすべて同じような体形で同じような顔つきで同じような行動をしますが、皆が一人一人異なっています。私たちの体を形作る細胞の中には、設計図である遺伝子が2万個以上も詰まっています。例えば私の体の場合、どの細胞にも、同じ遺伝子のセットが詰まっています。半分は父親から、半分は母親からいただいた遺伝子です。ただし、それはAさんの体の遺伝子とは少し違います。Bさんの体の遺伝子とも少し違います。そうして、人それぞれが、少しずつ外見も、行動も違ってくるのです。このような違いがあることを、生物学的には多様性(polymorphism)と言いますが、最近ではダイバーシティという言葉もよく耳にするようになりました。みんな違っているのだから、その違いをみんなで認めて、許容できる社会を作っていこうという考えです。

この傾向は医学用語にも見られます。最近、日本人類遺伝学会は、大幅な用語の改定を提案しました。他の人とは異なる遺伝子のタイプを持っている場合、以前は異常であると認識して、「変異」という言葉を使っていました。しかし、最近では、それは異常ではなく、「多様性」の一部なんだと考えるようになりました。例えば、特定の色を認識できない場合、以前は「色盲」と言っていましたが、これからは色覚多様性と呼ぶようです。また遺伝形式も、以前は優性遺伝とか劣性遺伝とか言っていましたが、これらの用語は差別につながる誤解のもとであるとして、顕性遺伝、潜性遺伝と呼ぶことになるそうです。

要するに、遺伝子が少しずつ違うから、少しずつ違う個人がいる、だからこの世の中は面白い、のではないかと思います。同じ顔で、同じ声で話し、同じ行動をする人ばかりであったら、どんなにつまらない世の中になるでしょうか。決して空想ではなく、クローン技術が変な形で使われるようになると、そんな可能性だってあるのです。

ヒトがひとりずつ皆、違うことで大変なこともいっぱいあります。しかし、それは皆が全く同じであることよりはずっとずっと楽しいことなんだ、それが多様性やダイバーシティが大切といわれるゆえんなのだと思います。私たちは、人ひとりずつが違うことのありがたさに感謝しながら、ひとりひとりに別々の対応をせねばならない大変さを乗り超えねばならない、そう思います。

インフルエンザが猛威を振るっています。基本はマスクと手洗い、人込みを避けること。くれぐれもご注意ください。

2018年2月1日

東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 所長 山中 寿