東京女子医科大学病院 膠原病リウマチ痛風センター
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2010年に欧州リウマチ学会 (European League against Rheumatic Diseases, EULAR) を中心に「目標達成に向けた治療」(Treat to Target, T2T) という寛解を目標とする治療勧奨(リコメンデーション)がまとめられ、 2011年には米国リウマチ学会 (American College of Rheumatology, ACR) と欧州リウマチ学会共同で目標とすべき寛解基準が定められました。すなわち、T2Tの方法に従って、臨床的な寛解を目指し、かつ、寛解の状態を維持することが、現在の関節リウマチの治療には、求められているのです。

ACR/EULAR寛解基準1)

日常臨床における基準

以下のいずれかに該当する場合、寛解とみなす

1. 以下の3項目を同時に満たす

圧痛関節数1つ以下、腫脹関節数1つ以下、患者全般評価 1/10以下

2. CDAI 2.8以下

CDAI = 圧痛関節数+ 腫脹関節数 + 患者による全般評価 + 医師による全般評価

臨床試験における基準

以下のいずれかに該当する場合、寛解とみなす

1. 以下の4項目を同時に満たす

圧痛関節数1つ以下、腫脹関節数1つ以下、CRP 1以下、患者全般評価 1/10以下

2. SDAI 3.3以下

SDAI = 圧痛関節数+ 腫脹関節数 + 患者による全般評価 + 医師による全般評価 + CRP

 

Treat to Target (T2T) リコメンデーション2)3)

基本的な考え方

A. 関節リウマチの治療は、患者とリウマチ医の合意に基づいて行われるべきである

B. 関節リウマチの主要な治療ゴールは、症状のコントロール、関節破壊などの構造的変化の抑制、身体機能の正常化、社会活動への参加を参加を通じて、患者の長期的QOLを最大限まで改善することである

C. 炎症を取り除くことが、治療ゴールを達成するためにもっとも重要である

D. 疾患活動性の評価とそれに基づく治療の適正化による「目標達成に向けた治療 (Treat to Target) 」は、関節リウマチのアウトカム改善に最も効果的である

ステートメント

1. 関節リウマチ治療の目標は、まず臨床的寛解を達成することである

2. 臨床的寛解とは、疾患活動性による臨床症状・徴候が消失した状態と定義する

3. 寛解を明確な治療目標とすべきであるが、現時点では、進行した患者や長期罹病患者は、低疾患活動性が当面の目標となりうる

4. 治療目標が達成されるまで、薬物療法は少なくとも3ヶ月ごとに見直すべきである

5. 疾患活動性の評価は、中〜高疾患活動性の患者では毎月、低疾患活動性または寛解が維持されている患者では3〜6ヶ月ごとに、定期的に実施し記録しなければならない

6. 日常診療における治療方針の決定には、関節所見を含む総合的疾患活動性指標を用いて評価する必要がある

7. 治療方針の決定には、総合的疾患活動性の評価に加えて関節破壊などの構造的変化及び身体機能障害もあわせて考慮すべきである。

8. 設定した治療目標は、疾病の全経過を通じて維持すべきである

9. 疾患活動性指標の選択や治療目標値の設定には、合併症、患者要因、薬剤関連リスクなどを考慮する

10. 患者は、リウマチ医の指導のもとに、「目標達成に向けた治療 (Treat to Target) 」について適切に説明を受けるべきである

1) Felson TD, et al. American College of Rheumatology/European League Against Rheumatism Provisional Definition of Remission in Rheumatoid Arthritis for Clinical Trials. Ann Rheum Dis 70: 404-13.
2) Smolen JS, et al. Treating rheumatoid arthritis to target : recommendations of an international task force. Ann Rheum Dis 69:631-7.
3) 竹内勤. 治療戦略の進歩 Treat to Target. 治療学 44(10) 別刷:21-5.

文責 田中榮一
2023年10月11日更新