人工足関節置換手術

 

患者さんの声

HMさん 65歳(手術時)、女性、関節リウマチ

2008年12月頃から左の足関節に痛みを感じるようになりました。時には象の足のように腫れあがるようになったので近くの病院で診てもらいましたが、一向に治る気配がありません。それどころかだんだんと悪化していき、歩くたびに足関節からゴリゴリという音が自分の耳にも聞こえるようにもなってきました。本当に歩くのが辛く、隣のお宅まで伺うことさえ苦痛な日々でした。別の病院にかかってもサポーターを巻いただけで治療は終わり、「基本的に足関節の手術は固定術しかありません。固定すると動かなくなりますよ」と言われ、死ぬまでこの足の痛みと付き合っていかなくてはならないのかと絶望する日々でした。すがる思いで整骨院に行ったところ、整形外科の先生をご紹介して下さり、その先生を通して東京女子医大の先生に巡りあうことができました。2014年1月、最初に足関節の痛みを感じてから5年の月日を経てようやく人工足関節置換術を受けることが出来ました。今は手術をしてから1年が経ちますが足関節の痛みを感じることはなくなり、出かけることが苦痛ではなくなりました。本当に感謝の日々を過ごしております。(2015.1.27)

足関節(足首)の変形

足首が腫れてきたり、歩くと足首が痛い、しゃがみづらい、正座しづらいという症状があるときは足首の変形が疑われますのでX線検査を行います。靭帯バランスや変形の度合いを診察し、適応を決めて手術を行っており、人工関節の設置が難しい場合には足関節固定術をおすすめする場合もあります。

人工足関節置換手術では足首の動きを再現することができます。人工関節を設置するための骨の質が充分で、靭帯バランスが良い場合に行っていますが、膝や股関節に比べて、人工関節が適応の方はそれほど多くありません。国内では人工関節全体で年間10万件以上行われているのに対し、人工足関節置換術の年間手術件数は全国で200例を超える程度に過ぎません。そのため充分なデータが蓄積されておらず、何年くらい持つのか、合併症の頻度はどの程度かなどについてはっきりしたことが言えない状況です。当センターでは年間10件程度の人工足関節置換術を行っていますが、これまでのところ初回手術において術後早期での術後感染症による人工関節抜去例を1例経験しています(2018.8.25現在)。

2018年8月から国内で3機種目となる新しい人工足関節が使用可能になりました。新しい人工足関節の発売は実に15年ぶりとなります。外側進入型人工足関節という新しいコンセプトの製品で、前方切開をしなくなることで前脛骨筋腱と長母趾伸筋腱による創部に対するストレスから開放され、創傷治癒遅延リスクの低減が期待できます。また側方から骨を切開することが出来るため骨の切除量を最小限にすることが可能となります。この機種のもう一つの特徴にトラベキュラーメタルという人工股関節や人工膝関節で豊富な臨床実績を誇る金属を使用していることがあげられます。この金属は摩擦係数が高く骨への初期固定が良好であるとともに、気孔率の高い支柱構造によって骨が進入しやすく強固な長期固定も期待できます。すでに数年前から海外で使用開始されているものなので、これまでの国内のみで使用されている人工足関節に比べ、何年持つのかや合併症の頻度などのデータの蓄積が進みやすいというメリットもあります。当院は国内で2つしかない初期導入拠点の1つとなっており、すでに使用を開始しています。足関節でお悩みの患者さんは当センター整形外科担当医にご相談ください。

手術のながれ

通常全身麻酔で行い、術前にはレントゲン、CT、血液検査、心電図などの必要な検査を行います。手術のキズは足首の外側に15から20cm程度に加え、ピンを刺入する小さなものがいくつかできます。一旦腓骨を切って翻転した後に、足関節の外側から関節表面の損傷した骨を削り取り人工足関節を挿入し、腓骨を戻して金属製のプレートで固定します。手術は2-3時間程度かかります。入院期間は通常4週間です。定期的にX線を確認しながら徐々に荷重をかけてリハビリしていきます。

TM Ankle リハビリプログラム

手術当日~3日目
ギプスシーネ固定、患肢挙上、免荷(足趾の運動は許可)
手術翌日より疼痛自制内で両側の四頭筋訓練、両下腿のアイソメトリック運動開始

4日目より
両手が使用可能であれば、ギプスシーネ装着で松葉杖歩行訓練開始(免荷)

10日目より
リハビリ監視下でギプスシーネを外して全荷重によるスクワット運動開始(1日1回)

14日目より
1日5回、20分間のギプスシーネを外しての全荷重によるスクワット開始(リハビリ監視下以外では患者自身によるギプスシーネの脱着を許可)
スクワット時以外はギプスシーネを装着し、免荷継続

21日目より
支柱付き装具を装着し部分荷重開始(松葉杖歩行)
夜間ギプスシーネ装着
徐々に荷重負荷増大し、6週目から全荷重開始(底背屈以外の運動は3ヶ月間禁止)

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文責 猪狩勝則
2018年8月28日改筆